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WTO農業交渉における米国提案


米国、香港閣僚会合に向けた農業交渉の進展を目指し、自国案を公表

  米国通商代表部は10月10日、世界貿易機関(WTO)の農業交渉における米国提案の概要を公表した。
関税などの削減については二段階方式とし、米国が最も厳しいとされる国内支持について、自国の黄の政
策を60%削減することなどを提案している。概要は以下のとおり。



削減および撤廃の時期
 
 削減および撤廃の時期については、二段階方式を採用し、第一段階では、5年間で段階的に関税および
貿易わい曲的国内支持を大幅に削減するとともに輸出補助金を撤廃する。第一段階の実施から5年後、さ
らに5年間かけて農業における関税および貿易わい曲的な政策を完全に撤廃する。



市場アクセス

 2004年6月に合意された「段階方式」およびG20の提案を用い、先進国・途上国を問わず5年間で関税の
大幅な削減により市場アクセスの改善を図る。

・前進的関税削減;先進国は自国の関税を55〜90%削減。最低税率は55%の削減とし、段階的に最高税率
 は90%の削減とする。

・上限関税;上限関税を設定し、いかなる関税も75%以下となることを保証する。

・重要品目;「重要品目」としての扱いを受けるのは全タリフライン数の1%に限る。ただし、これらの品
 目について関税割当枠の拡大による完全な代償を保証する。

・特別かつ異なる扱い;途上国に対しては、より少ない関税の削減とより長い関税削減期間を設定。



輸出競争

  輸出補助金の速やかな撤廃のため、2010年に以下の規則を適用。

・輸出補助金;すべての農産物輸出補助金を撤廃。

・輸出信用;払戻し期間を最長で180日とするなど、政府のプログラムを商慣習に合わせる。

・国家貿易;独占的輸出の廃止、輸出補助金などの禁止、透明性に関する義務の拡大。

・輸出税;加工品の輸出を促進する貿易わい曲的輸出税の廃止。

・食料援助;慢性的な食料支援を必要とする国への緊急援助を除き、商業的援助に関する規制を設定。



国内支持

  多額の国内補助金を有する国の大幅な削減により、貿易わい曲的な国内支持の実質的な削減を求める。
米国の今次農業交渉における関心に即するよう、他国の規則を5年以内に以下の要素について定めさせ
る。

・黄の政策;99年〜2001年を基準期間とする総合AMSについて、米国は60%の削減を実施。

・青の政策;農業総生産額に対する上限を枠組み合意の5%から2.5%にする。

・デミニマス;貿易わい曲的国内支持を50%削減。

・調和;EUと日本について、総合AMSを83%、貿易わい曲的国内支持の全体的削減をそれぞれ75%
 および53%に削減。これにより、現在の為替で、EU・米国間の不均衡を現行の4対1から2対1と
 する。

・緑の政策;実質的な基準の変更は行わず、上限は設けない。

・訴訟からの保護;貿易わい曲的支持を約束水準以下で維持している場合の農業政策を保護するための
 「平和条項」の設定。


【ワシントン駐在員 犬飼 史郎 平成17年10月19日発】


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