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アヒルの閉鎖施設での飼養を進める(タイ)


アヒル肉などは中国系国民を中心に消費

 タイにおけるアヒルの飼養は、中央平原を中心に行われており、地域的にはブロイラーの主要生産地と
一部重なっている。同国において鳥インフルエンザ(AI)の発生が確認される以前の2003年のアヒルの
飼養羽数は2,300万羽となっていたが、発生後の2005年には1,700万羽まで大幅に減少したとされている。

 アヒルに関しては、肉が北京ダックやスープに、卵がピータンなどに加工され、主に中国系の国民を中
心に消費されている。また、生産の一部は輸出に仕向けられており、2003年には5,200トンの冷凍アヒル
肉が輸出され、そのうち2,200トンが日本向けであった。


AIウイルスの宿主となりやすいアヒル

 タイのアヒル生産者協会(DBATE)によれば、タイで飼養されているアヒルのうち、企業的に飼養
されている7割を除いては、水辺などで放し飼いされる場合が多いとされている。国際連合食糧農業機関
(FAO)や国際獣疫事務局(OIE)の報告によると、アヒルはAIに感染しても症状が出にくいため、
AIウイルスの宿主になりやすいと警戒されている。タイの農業協同組合省畜産開発局(DLD)は、防
疫上の観点から、アヒルを放し飼いする生産者と協議し、最終的には外部との接触を避ける舎飼いまたは
閉鎖施設での飼養を指導している。


DLDは段階的に規制を強化

 DLDは、放し飼いによるアヒルの飼養形態がAIウイルスの宿主である野鳥との接触の機会を増やし
ていることや、移動の規制によってAIウイルスの拡散を防止することを目的に、アヒルを放し飼いする
生産者と対策の協議を進めてきた。その時系列的対応は次のとおりである。

(1)2005年6月下旬

  アヒルの放し飼いを行っている者は、飼養または育すう中のアヒルをDLD県事務所へ登録し、DL
 Dの担当者は目視によりアヒルの健康状態の確認を行う。登録後は他県へのアヒルの移動は認められな
 い。登録は2005年7月15日までに行うが、中央平原および東部地方の3県を一つのグループとして、そ
 の中での移動は認める。ただし、移動前には県のDLD担当者の目視検査とウイルスのサンプリングを
 行い、結果が陽性の場合、殺処分され補償金が支払われる。

  家きんの繁殖および販売を行う者は、県のDLDにアヒルの取り扱い羽数を報告しなければならない。

  アヒルを飼養する施設は原則として次の要件を満たし、県のDLDの検査証明を受けなければならな
 い。@柵による飼養施設の外部からの隔離、A外部からの鳥の侵入防止のための網の設置、B飼養施設
 の出入り口への消毒槽の設置。

  なお、2005年7月15日時点で登録されたアヒルの放し飼い業者数は3,498者で、3,926カ所の群れを管
 理しており、アヒルの飼養羽数は1,173万羽であった。

(2)2005年12月中旬

  アヒル生産者の組織化、未だに舎飼いを始めていない者の数、ふ化中の卵の数、舎飼いのための土地
 の確認を年末までに行うこととする一方、舎飼いできない者の猶予期間を3月末までとし、それ以降も
 放し飼いをする者は起訴されることもあるとした。

(3)2006年2月初旬

  舎飼いを行うための建設費用として金融機関で30万バーツ(90万円:1バーツ=3円)の低利(2%)
 のローンを組めるようにした。担保保有者は1千万バーツ(3千万円)までの融資が受けられることを
 可能とした。


アヒル生産者はコスト上昇を懸念

   以上の措置に関して、DBATEは、閉鎖施設でのアヒルの飼養は徐々に増加すると見込む一方、飼
 養施設の建設のほかに野外のえさに代わる飼料の給与が必要となるため、アヒルの肉や卵の生産コスト
 が上昇し、最終的には販売価格に転嫁せざるを得ないとしている。


【シンガポール駐在員 斎藤 孝宏 平成18年4月13日発】



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