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肉牛価格、当面は急激な下落を回避と予測 (豪州)


短期的には、肉牛価格の急激な下落は回避

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、8月、豪州牛肉産業における2010年までの需給予測(今年2月
公表の改訂版)を公表した。これによると、豪州の肉牛価格は、国内の干ばつおよび日本など北アジアにお
ける米国産牛肉の輸入再開といった変動要因はあるものの、短期的に見ると、急激な下落は回避され、当初
の見込みよりも緩やかに推移すると予測している。

 豪州の肉牛価格は、近年高値で推移し、2005年8〜9月にはフィードロット業者などの強い需要を背景と
して記録的な高値となっている。2006年第1四半期は、日本における米国産牛肉の輸入が再度中止されてか
ら値を上げ、前年をわずかに上回り、第2四半期以降は、北アジアにおける米国産牛肉の輸入再開が8月以
降にずれ込んだことなどから、国内の干ばつにもかかわらず、引き続き高水準で推移している。肉牛価格は、
今年終盤から下落すると見込まれているが、米国の牛肉価格が引き続き堅調であること、国内の牛肉需要が
強いこと、豪ドル安などから、短期的には当初懸念されていた急激な価格の下落は回避されるとみている。

 なお、米国産牛肉の輸入再開に伴う豪州産肉牛価格への本格的な影響は、2007年に始まり、中期的には大
きいとしている。


2010年までの肉牛飼養頭数、牛肉生産量は増加

 一方、豪州における牛肉生産は、今後も拡大するとみている。

 豪州の肉牛飼養頭数は、1988年以降徐々に拡大し、2002〜03年の大規模な干ばつで一時頭数が減少した
ものの、その後また増加基調に転じ、2005年6月時点では2,780万頭となっている。この傾向は今後も続き、
2006年は2,860万頭(前年比2.9%増)、2007年は2,940万頭(同2.8%増)、2010年には2005年比で9.8%増
の3,050万頭に達するとみている。ただし、今後、牛肉の国際価格の下落が見込まれていることから、豪州
の上限飼養頭数は3,000万頭程度であるとみている。また、肉牛飼養頭数の増加に伴い、牛肉生産量は、
2005年の209万トンから2010年には15.8%増の242万1千トンに達するとみている。


2006年、07年の対日牛肉輸出量は小幅な減少

 また、豪州産牛肉の9割以上を占める4つの主要マーケット(日本、韓国、米国、国内)の状況は次の
とおりとしている。

 日本向け輸出は、2005年に過去最高の40万5千トンを記録したが、2006年は39万5千トン(前年比2%
減)、2007年度は38万トン(同4%減)と小幅な減少にとどまるとしている。これは、米国産牛肉に対す
る日本の消費者や業者の意識が否定的であること、月齢などの輸入条件による品質・量の調達の制約があ
ること、米国が日本のニーズが強い品目について輸出余力に限界があることなどから、米国産牛肉が日本
市場に浸透するまでには、今後、ある程度の期間を要するとみているためである。このため、日本におけ
る豪州産牛肉は、当面の間、米国におけるBSE発生前以上のシェアを確保できるとみている。

 韓国向け輸出は、今年9月から米国産牛肉の輸入が再開すると仮定して、2006年の輸出量は前年比3%
減の10万3千トンと小幅な減少となるものの、2007年は同27%減の7万5千トンと大幅に減少し、米国産
牛肉との競合が激化するとみている。

 米国向け輸出は、米国における干ばつの影響で雌牛のとう汰進んだことから2006年下半期以降品薄とな
るため、輸出量が回復し、2006年は同3%増の33万トン、2007年には同14%増の37万5千トンと大幅に増
加するとみている。

 また、国内向けは、引き続き国内需要が増加し、豪州産牛肉の国内仕向けは、2005年の71万9千トンか
ら2010年には17.1%増の84万2千トンに増加するとみている。



【シドニー駐在員 井田 俊二 平成18年8月24日発】



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