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2005/06年度の酪農家経営、3期連続の増収(豪州)


  豪州農業資源経済局(ABARE)は10月11日、酪農生産の動向と密接に関連する2005/06年度(7〜6月)
の酪農家経営状況(暫定値)を発表した。これによると、酪農家の経営状況を現金収入から現金支出を除いた
現金収益で見ると、生産者乳価の上昇などを背景に3期連続の増収としている。また、最終的な農家営業利益
では、現金収益の拡大を受けて2期連続の黒字としている。


生産者乳価の上昇などが要因と分析

 2005/06年度の酪農家経営状況についてABAREでは、酪農経営当たりの現金収入は平均35万3千豪ドル
(3,248万円:1豪ドル=92円)とし、生乳販売収入で見れば前年度に比べ3%増加したとみている。これは、
アジア諸国をはじめとする乳製品需給の高まりを背景に国際市場価格が高水準で推移したことで、生産者乳価
が上昇したことを要因として挙げている。また、生乳生産についても、気象条件に関して減産につながる要因
が少なかったことも好材料となった。

 一方、現金支出については、原油価格の上昇に伴う燃料コストの増加、また、人経費の上昇など支出の拡大
はみられたが、天候が比較的恵まれたことで放牧時間が増え、これが粗飼料購入費の減少につながったことや、
施設などへの設備投資を控えたことなどがプラスとなり、結果として前年度を4%下回るとみている。この結
果、酪農経営当たりの現金収益は、前年度比24%増の10万2千豪ドル(938万円)と3期連続の増収としている。

 ここから、家族労働費や減価償却費などを除いた最終的な農家営業利益では、前年度比36%増の2万8千豪
ドル(258万円)と2期連続の黒字見込みである。


経営はプラスに転じるも、酪農家戸数は減少の一途

 ここ数年の豪州の酪農家の経営状況は、02/03年度が大規模な干ばつにより大幅なマイナスを記録したが、
その後の国際的な乳製品需給の高まりで乳製品相場が上昇基調になっていることで、生産者乳価の引き上げか
ら経営はプラスに転じている。

 しかし一方で、酪農家戸数は減少の一途をたどっており、2005年6月末時点では9千2百戸まで減少してい
る。この背景には、過去の負債を相殺できる利益を得たことでリスクの少ないほかの産業へ転換するなどの動
きや、住宅建設ブームが農地価格の上昇を招いていること、さらに、後継者の問題など、数多くの要因が複合
的に影響している。既存酪農家では離農跡地の買収など規模拡大に努める動きはあるが、全体的な飼養頭数で
みれば、02/03年度以前の水準には、まだ、達していない。


◎ 豪州連邦政府、干ばつ対策で3億5千万豪ドルを追加支出

 豪州連邦政府のハワード首相は10月16日、干ばつによる被害が大きい例外的環境(EC)認定地域に指定さ
れた農家に対して、3億5千万豪ドル(322億円)の追加支援を行うことを発表した。これにより、これらの
地域の農家は2008年3月までの間、引き続き補助を受けられることとなる。豪州の今年の干ばつは、100年に
一度と言われるほど厳しい状況が続いており、被害の大きいニューサウスウェールズ州を中心に全国の農地の
約4割近くがその被害を受けているとされている。特に影響が深刻な穀物や畜産農家では、穀物の大幅な減産
予測や家畜相場の下落など、収益面への被害が拡大しつつある。同首相は、マスコミのインタビューに対し、
今後の状況によっては追加支援の拡充が必要との認識を表明している。また、連邦政府のマクゴーラン農相も
同日、EC認定地域以外の農家についても、地域の窓口を通じ、農家経営をサポートする体制がとられている
ことを示した。豪州連邦政府は、2001年より干ばつ対策としてEC認定地域となった農家5万3千戸に対し、
総額12億豪ドル(1,104億円)を収入補助や利子補給として投じている。




【シドニー駐在員 横田 徹 平成18年10月18日発】


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