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米国、バイオ燃料の生産技術に関する調査研究を推進


USDA・DOE、1,750万ドルの財政支援を実施

 ジョハンズ米農務長官およびボドマン同エネルギー省長官は10月11日、セントルイスで開催した再生可能
燃料推進会議において、米国の海外への石油依存度を縮小するため、トウモロコシをはじめ、大豆ミール、
スイッチグラス、セルロースなどからのバイオ燃料の生産などに関する調査・開発計画に対し、総額1,750
万ドル(21億円:1ドル=120円)の資金を提供することを公表した。

 同資金は、商業市場におけるバイオ燃料の価格競争力を高めることを目的とした製造技術の開発に充てら
れ、今後、今回公表された17の事業実施体により、バイオマスの調査・開発および実証試験が行われること
となる。

 具体的には、1,750万ドルのうち、米国農務省(USDA)の2006会計年度予算からは、バイオ燃料の供
給原料の生産および製品の多様化に関する調査研究に対し1,280万ドル(15億円)が、また、同エネルギー
省(DOE)の2006〜2008会計年度予算からは、バイオエネルギー源としてのセルロースの開発に対し470
万ドル(6億円)が充当される。


米大統領の先端エネルギーイニシアティブ推進の一環

 再生可能燃料推進会議は同月10〜12日に、USDAおよびDOEの共催により、ブッシュ米大統領が本年
初めの一般教書演説で掲げた、先端エネルギーイニシアティブ(Advanced Energy Initiative、AEI)の
推進を目的として開催された。AEIは、米国における自動車燃料、また、一般世帯・商業施設への電力供
給手法の転換により、環境汚染を削減し、安価で、かつ代替・再生可能なエネルギー源の商業化を加速する
ことを柱としている。

 米国における燃料用エタノールの消費量は、近年、原油価格の高騰および環境問題に対する関心の高まり
などを背景に急激に増加しており、2006年上期の燃料用エタノールの生産量は、前年同期を2割強上回るな
どその拡大傾向はさらに加速している。また、その原料の9割強にトウモロコシが利用されている。


燃料用エタノール向けを中心に拡大が見込まれるトウモロコシ需要

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が同月16日に公表した飼料穀物の需給予測によると、2005/06
年度(9〜8月)のトウモロコシ需要は、前年度比5.7%増の113億ブッシェルと、同年度の生産量111億ブッ
シェルを上回った。このように、燃料用エタノールの生産拡大などを背景とするトウモロコシ需要の増加な
どにより、トウモロコシ価格は、2006年初頭以降、ほとんどの月で前年を上回るなど強含みで推移しており、
マコーリー全国トウモロコシ生産者協会(NCGA)会長は、上昇基調で推移するトウモロコシ価格により、
2006/07年度では、作付面積の増加が見込まれるとしている。

 なお、DOEエネルギー情報局(DOE/EIA)によると、本年7月に史上最高値を記録した原油価格は、
9月平均では7月平均と比較して14.3%安と、8月以降は下落基調で推移している。このように、トウモロ
コシ価格および原油価格が燃料用エタノール生産にとって不利な値動きを示しているにもかかわらず、US
DAのエコノミストは、米国のエタノール生産業者は依然として収益を上げており、エタノール生産に影響
を及ぼす水準ではないと分析している。


【ワシントン駐在員 唐澤 哲也 平成18年10月18日発】



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