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欧州委、2014年までの主要農産物の需給見通しを公表


牛肉以外の畜産物生産量は上向き、主要食肉の消費も回復

 欧州委員会はこのほど、2007年から2014年におけるEUの畜産物などの主要農産物の需給に関する見通し
を公表した。これによると、豚肉、家きん肉および乳製品市場は拡大傾向で推移するが、牛肉の生産量につ
いては、引き続き減少傾向で推移すると見通している。また、主要食肉の1人当たりの消費量については、
2006年に発生した鳥インフルエンザの影響による市場の混乱も回復し、2014年は2006年と比較して3.2%増
加とすると見通している。

 なお、この報告書は2007年6月末時点で入手可能な情報を基に見通しを行ったものであり、ドーハ・ラウ
ンド多角的貿易交渉の影響については考慮されていない。従って、この中期見通し期間においてはウルグア
イ・ラウンド農業合意における貿易ルールが継続することを前提としている。



主な畜産物の需給見通し

・牛肉
  現在、800万トン台で推移している牛肉の生産量は、生乳クオータ量が横ばいで推移する中、1頭当た
 りの泌乳量の増加による乳用種の飼養頭数の減少や、CAP改革により導入された生産とは切り離された
 生産者単位とした直接支払い制度(デカップリング)などの影響により2014年には約760万トンまで減少
 すると見通している。一方、消費量については微減にとどまるとしており、消費量が生産量を上回って推
 移することから、輸入量が大幅に増加し、約74万トンに達すると見通している。


・豚肉
  生産、消費ともに、過去10年間と比較するとゆっくりしたペースではあるが、拡大するとしている。E
 U域外の輸出については、低コスト生産国との競合により、2006年の141万トンから2014年には115万トン
 まで減少すると見通している。


・家きん肉  
  家きん肉の需給は、2006年のEUで発生した鳥インフルエンザの影響により、消費、輸出の落ち込みや、
 生産低下をもたらすほどの価格の下落など大きな混乱を招いたが、今回の報告の見通し期間においては、
 このような事態はないことを前提としている。
  家きん肉の生産量は、ほかの食肉と比較して価格が安いことや、健康志向を反映した消費者のし好に合
 っていることから、全体的に増加傾向で推移すると見通されている。また、輸入量については、ブラジル、
 タイ産を中心とした家きん肉における新たな関税枠の設定により短期的に増加し、中期的にも緩やかに伸
 びるとしており、2014年にはEUは家きん肉の純輸入国となると見通している。


・牛乳・乳製品
  2006年に落ち込んだ生乳生産量は、2007年前半も当初の見込みほど回復しておらず、今後の生乳生産、
 乳製品市場の中期見通しにおいて大きく影響するとしており、2007年1月に公表した見通しが下方修正さ
 れている。その結果、2014年の生乳生産量は1億4,800万トンと見通している。
  チーズについては、特に2004年以降に加盟したEU12で生産、消費が大きく拡大することにより、2014
 年の生産量は2006年と比較して10%増加すると見通している。また、乳製品全体の市場は好調としている
 ものの、バターや脱脂粉乳の生産量は、生乳生産量の低下やチーズなどの高付加価値乳製品の生産の増加
 により減少すると見通している。特に脱脂粉乳は、域内需要の停滞と相まった生産の減少により、EU域
 内の価格が引き続き世界水準を上回ることとなり、その結果、輸出量は2006年の8万5千トンから2014年
 の3万7千トンまで大幅に減少すると見通している。



【ブリュッセル駐在員 小林 奈穂美 平成19年8月14日発】


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