(1) 生乳生産 2ヶ月連続してわずかながら前年水準を下回る ・ 生乳生産は、11月を生産の底としその後冬から初夏にかけて増加するという例 年のパターンどおり、2年12月から3年5月まで増加傾向にある(図34)。 ・ しかし、これを前年度比でみると2年度は、ほぼ前年水準で推移し、3年度に入 り、わずかながら前年水準を下回って推移している(3年5月前年同月比99.7%) (図35)。 ・ 一方、季節調整済み値でみると、2年9月以降生産は増加し、3年初めには2年春 の生産水準まで回復したが、その後はほぼ横ばいで推移している(図36)。 ・ 生乳生産を北海道、都府県別にみると、その動向に大きな違いがみられる。 前年度比でみると、北海道は、2年10月以降順調に上昇し、3年5月も前年同月 比3.0%増と高い伸びを示したのに対し、都府県は、2年10月以降、前年水準を下 回り、3年5月も前年同月比2.3%減となっている(図35)。 ・ さらに、季節調整済み値でみると、北海道の生産は3年3月まで順調に増加し、 その後高い水準で横ばい傾向となっているのに対し、都府県の生産は2年5月以降 減少もしくは横ばい傾向で推移している(図37、38)。 ・ なお、6月の生産は、一部地域に回復がみられるものの、全体としては前年水 準並みと見込まれる。 ・ 一方、乳用めす牛のと畜頭数は、2年6月まで前年同月水準を下回ったが、10月 以降前年同月比で高い伸びを示し、3年5月は、8.0%増となった(巻末統計資料)。 また、格付結果から、と畜された乳用めす牛の内訳をみると、63年度には約45 %を占めていた未経産牛の割合は、最近では30%程度となり(3年5月27.9%)、 逆に、経産牛の割合は、55%から70%程度と大きく上昇して、搾乳牛の更新が進 んでいることがうかがわれる(3年5月72.1%)(巻末統計資料)。 (2) 飲用牛乳等の需給 生乳生産伸び悩む一方、飲用需要は好調に推移 ・ 飲用等向け処理量は、2年5月以降前年同月比で高い伸びを示し、3年5月も前年 同月比2.1%の増加となった(図40)。 ・ これを季節調整値でみると、2年5月から8月にかけて順調に増加した後、9月以 降ほぼ横ばいで推移し、その水準は年間約510万トンベースとなっている(図41)。 ・ 一方、飲用等向けの大宗を占める飲用牛乳の生産は、飲用等向け処理量と同じ く、2年5月以降他界伸び率を示し、3年5月も前年同月比2.2%の増加となった (図42)。 ・ 飲用牛乳の生産を牛乳と加工乳に分けてみると、牛乳の伸びが鈍化してきてい るのに対し、加工乳は、非常に高い伸びを維持している(3年5月前年同月比牛乳 101.0%、加工乳109.4%)(図43)。 このため、飲用牛乳に占める加工乳の割合も次のとおり除々に上昇してきてい る。 飲用牛乳に占める加工乳の割合
63年度 | 元年度 | 2年度 | 3年度(4〜5月) |
13.1% | 13.4% | 14.0% | 14.6% |
これを季節調整値でみると、牛乳が2年11月以降横ばいもしくは減少傾向で推 移しているのに対し、加工乳は62年度から一貫して増加傾向にある(図44)。加 工乳の増加は、低・高脂肪牛乳等消費者ニーズの多様化によるものとみられる。 ・ 一方、乳飲料の生産は、2年6月以降高い伸びを続けており、3年5月も前年同月 比8.2%増と高い伸びを示した(図42)。 ・ 醗酵乳の生産は、2年6月まで前年同月比で高い伸びを示したが、7月以降伸び 悩んでおり、3年5月は前年同月比99.1%と前月に続き前年水準を下回った(図42)。 (3) 乳製品の需給、価格動向 好調な飲用需要に伴い生産は減少、事業団はバター・脱脂粉乳を輸入・放出 ・ 乳製品向け生乳処理量は、2年6月以降飲用需要の高い伸びと生乳生産の伸び悩 みに伴い、生乳生産がわずかに回復した3年3月を除き、前年同月を大きく下回っ ており、5月の伸びも前年同月比96.2%となった(図40)。 これを季節調整値でみると、乳製品向け処理量は2年8月を境に回復に転じたが、 3年4月以降は再び減少傾向がみられる(図45)。 ・ 乳製品向け生乳処理量の動向に伴い、バター、脱脂粉乳の生産量は、2年6月以 降前年同月を下回って推移している。なお、減少率(前年同月比)は、2年11月 から縮小の傾向あったが、3年5月には再び大きく前年を下回った(前年同月比バ ター90.2%、脱脂粉乳93.9%)(図46、47)。 ・ バター及び脱脂粉乳の生産を季節調整済み値でみると、バターは、2年8月を境 に回復に転じ、3年春の生産は、最近の生産のピークである元年12月の約90%ま で回復したが、5月には再び大きく減少した(図48)。また、脱脂粉乳は、バタ ーと同じく2年8月を境に回復に転じ、3年春の生産は、最近の生産のピークであ る元年12月の約95%まで回復したが、5月には再び大きく減少した(図49)。 ・ 一方、クリームの生産は、乳製品向け処理量の伸びが大幅に減少しているのに 対し、2年7月以降大幅な伸びを示し、3年5月も前年同月比25.2%増を記録した。 これを季節調整済み値でみると、2年6月以降、一貫して増加している(図50)。 クリームの生産の増大は、本物志向のあらわれと考えられ、また、バターの生 産の回復が脱脂粉乳に比べ遅れているのは、クリームの急速な生産増大によるも のと考えられる。 ・ こうした乳製品の需給動向を反映してバターの卸売価格は、2年10月以降、脱 脂粉乳も9月以降上昇に転じ、3年5月にはバターは1,166円/kg、脱脂粉乳は13, 678円/25kgと上昇した(図45、46)。 ・ このような状況から、畜産振興事業団は、平成2年度のバター、脱脂粉乳の輸 入・放出に引き続き、平成3年度に入って、バター3,495トン、脱脂粉乳17,700ト ンの輸入手当を行うとともにバター3,495トン、脱脂粉乳12,655トンを放出した。 輸入手当(買入れ入札) [平成2年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
2年 9月12日 11月 1日 12月27日 3年 2月 5日 |
2,992 1,008 2,000 1,500 |
− − 4,000 1,000 |
計 | 7,500 | 5,000 |
[平成3年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
3年 4月10日 3年 7月10日 |
2,000 1,495 |
11,991 5,709 |
計 | 3,495 | 17,700 |
放出(売渡し入札) [平成2年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
2年11月 6日 11月21日 12月26日 3年 2月 7日 2月15日 |
2,342 549 1,109 895 1,105 |
− − − 2,163 1,799 |
計 | 6,000 | 3,962 |
[平成3年度] 単位:トン
入札年月日 | バター | 脱脂粉乳 |
3年 4月11日 4月25日 5月23日 6月25日 |
1,456 − − 2,039 |
1,027 2,906 3,183 5,537 |
計 | 3,495 | 12,655 |
注 これら表の数値は四捨五入してあるのでそれぞれの合計の値は必ずしも 計の値と一致しない。
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