社団法人 全国食肉学校 学校長 加藤二郎
強い短期間での専門教育の要望 本校は、昭和49年開校以来、食肉技能・技術者等人材の養成教育を通じて食肉 産業界の発展、ひいては国民食生活の向上に貢献することを使命として、会員や食 肉産業界の要請に応える教育事業を進めてきました。 特に最近は牛肉の輸入自由化を契機とする食肉産業各界における経営合理化の進 展、雇用情勢の逼迫等を背景として、企業における従業員教育の在り方が見直され、 本校の教育事業に対する要望も変わってきました。本校は、「短期間に専門的教育 を実施すべきである」という、食肉産業界の新たな強い要望に応え、平成2年度か ら、従来の修学期間1年の教育課程(現行総合養成科)のほかに、3.5か月の食 肉店舗科と食肉加工科を新設し、本校の特質を活かした専門的な実践教育を進め、 一定の評価を得ています。 求められる職場のイメージ改革 しかしながら、食肉産業の人手不足は予想以上に厳しいものがあり、新設した2 科の入学生は、前年度、本年度とも定員を割り込んでおり、種々学生募集の対策を 講じ、外国人の入学も受け入れているものの、定員の確保は思うにまかせないのが 現状です。この現象は他の食肉技術者養成学校においても同様のようです。 本校は、平成2年度から本年度にかけて、「食肉産業界における雇用及び人材養 成問題調査検討事業」(畜産新興事業団の指定助成対象事業の一部)を業界の協力 を得て実施していますが、この事業で昨年1月に行ったアンケート調査によると、 食肉産業界における労働力(人手)の充足状況は、次のとおりでした。 人手不足で困っている :33.8% なんとか充足している :45.3% 十分に充足している :11.4% 無回答 :11.3% また、食肉専門小売業における後継者の確保状況については、 既に後継している :23.6% 後継者が決まっている :13.8% 後継者が決まっていない:31.5% 後継者がいない :5.4% 自分の代で廃業 :20.7% 無回答 :4.9% などとなっています。 また、これら調査結果を全体としてみると、最近の食肉情勢の急激な変化や人手 不足に対する対応力が、企業や業種によって大きく異なっていること、ならびに我 が国全体として人手の絶対数が不足しているなかで、いわゆる3K産業や職場のイ メージによる敬遠など若い人達の職業観が当業界の雇用に大きく影響していること や食肉学校へ派遣して教育する人的・時間的余裕が減少していることを示唆するも のでした。 写真.(社)全国食肉学校 一方では、@中核となる人材や後継者の育成が食肉産業、食肉関連企業等の今後 の発展にとて一層重要になっている。A伸びている企業や団体ほど人材教育投資を 優先している。B学校への派遣教育は、総合的にみて最も計画的効率的に実施でき る従業員の養成方法である。Cこれらの点を業界に広くPRすべきである等の力強 い見解も多くの関係者から聞かれます。 ニーズに合った教育の推進 食肉教育機関においては、このような最近の情勢ならびに「食肉技能・技術者等 人材の養成教育を通じて食肉産業の発展に貢献する」とう使命をふまえて、食肉産 業各界から支援と参画を得られる教育事業の発展をめざして、短期・長期の観点か ら教育の制度や内容の改善改革をすすめ、業界と時代のニーズに合致した教育を推 進することの重要生産が痛感されます。 業界の人手不足に対応する当面対策として、本校では次のことを実施しています。 〈公開講座の実施〉 最近の食肉情勢にマッチした教科の充実をはかるほか、人手 不足により、企業等が従業員の長期派遣教育が困難になっていることに鑑み、必要 な教科のみ受講できるよう、主要な講座を公開講座として一般に開放する方式を来 年度から実施するとにしています。 本年度、試行的に開放した総合養成科の「輸入牛肉」および食肉加工科の「食肉 加工」は、一般からの募集定員をオーバーし、好評でした。 〈入学者選考方法の改善〉 業界の食肉教育需要を喚起するとともに、広く一般か ら食肉業界を志望する若人の入学を促進するため、来年度入学生の募集については、 広く一般にPRを強化しているほか、出願を促進するため、入学願書を受付け次第、 書類審査と面接による選考を速やかに実施して、合否を通知する随時選考方式を実 施しています。 写真.実習風景 長期的な対応策については、さらに食肉関係各団体の理解と協力を得て、我が国 の食肉産業と食文化の発展に一層寄与するという視点にたって改善・改革をはかり、 教育事業の充実発展を期したいと考えています。 (社)全国食肉学校の問い合わせ先は、以下のとおり。 住 所 〒379−21 群馬県佐波郡玉村町樋越1794 電話番号 (0270)65−2571