★ 畜産物の需給等情報交換会議概要


昨年とは様変わりの乳製品需給


 平成4年度の生乳生産は、北海道は4〜7月累計で前年同期比107.2%と、相変
わらず好調な伸びを示しており、都府県でも同101.8%と前年をやや上回る水準で
推移しています。一方、用途別処理量をみますと、飲用牛乳等向け処理量は100.2
%とほぼ前年水準となっているため、乳製品向け処理量が110.8%とかなりの伸び
を示しています。この結果、主要乳製品であるバター及び脱脂粉乳の生産量はそれ
ぞれ127.2%、118.0%と昨年を大きく上回り、乳製品の需給は一年前とは様変わり
の状況になっています。

 こうした状況の下、実際に牛乳・乳製品の製造、販売に当たっておられる方々か
ら、最近の牛乳・乳製品の需給をどうとらえ、どのように対応していくのか等につ
いてご意見を伺いましたので、その概要を報告します。

開催月日:平成4年8月20日(木)
出席者 :以下のとおり(敬称略)
  
大島 國宏 北海道乳業販売梶@営業第一部部長

大森 俊夫 雪印乳業梶@   業務製品営業部原料乳製品企画グループ課長

川守田 誠 全国酪農業協同組合連合会 乳業部乳食品課長

堺  卓三 明治乳業梶@   業務商品販売部マーケティンググループ課長

藤本 睦雄 全国農業協同組合連合会 酪農部乳製品課長

桃井 斌  森永乳業梶@   業務用食品部販売担当課長

渡辺 孝明 よつ葉乳業梶@  東京支店乳製品課課長


生乳生産は増加基調

 生乳生産量については、年度当初、対前年比で北海道105%、都府県100.5%、全
国で102.4%程度と見込んでいましたが、予想以上に伸びており、上方修正の必要
があるとみています。

 8月上旬までの状況をみますと、北海道は相変わらず帯広の110%を筆頭として、
北見、釧路、中標津等の主産地は軒並み107%を超えています。牛肉の輸入自由化
の影響で乳廃牛等の価格が低下しているため、肉用としての出荷を手控え、生活を
守るために個体販売収入の落ち込み分を乳量でカバーしようという動きがみられま
す。このため、牛舎に入りきれない牛も外に繋いで搾ってるので、頭数も乳量も増
えています。

 九州でも7月は109%を超え、夏休みで学校給食がお休みということもあり、飲
用としてさばききれず、加工工場を捜し歩いているという状況です。

 また、都府県全体では、景気の後退で他への就業機会が減少していることから廃
業にブレーキがかかっていること、一昨年の猛暑による牛体の影響から完全に回復
したこと等もあって一頭当たりの乳量も増えているので、前年をわずかながら上回
っている状況です。

 今後については、北海道はマイナス要因がみられず、都府県でも現在のような状
況が続くと思われますので、昨年後半から前年比プラスに転じたこと、昨年度がう
るう年ということを勘案しても、年度全体では北海道は106%に届く勢いがみられ、
全国では102.5〜103%程度、状況によっては103%を超えるケースもありうるので
はないかとみています。


飲用消費は停滞気味

 飲用牛乳等向け処理量は、4年度に入ってもほぼ前年並みで推移しています。

 天候に左右されたこと、景気後退の影響、その他の要因が重なっている状況の中
で、前年比100%を保っているのは非常に健闘していると思います。

 天候が回復したといっても、牛乳はビールのように気温が高くなればなるほど消
費が増えるというものではありません。消費者は、ある程度の暑さになると清涼飲
料水を選ぶのではないでしょうか。

 このような現状であっても何とかしなければいけないので、各社とも加工乳に力
を入れています。普通牛乳の落ち込みを加工乳でカバーして、飲用牛乳全体ではか
ろうじて前年並みを保っている状況です。加工乳は、消費者ニーズに合わせた低脂
肪のものが多くなっています。また、缶牛乳が好評なので、各社とも製品化を検討
しています。

 その他では、ヨーグルトが再び伸びていますし、はっ酵乳全体でも好調なのです
が、著しい伸びは期待できないと思われます。


天候と景気に左右された乳製品需給

 生クリームの生産は、4月からマイナスに転じました。これも景気後退の影響な
のですが、ホテル、レストランで使われるパックものが5%から10%、メーカーに
よっては2割ほど落ち込んでいます。一方、製菓、製パン向けは前年並みなので、
トータルでやや減少というところです。この生クリームの低迷は今後も続くと思い
ます。

 バターも生クリームと同様に景気に左右されるところがあるのですが、新商品も
見当たらず、消費構造に大きな変化はないので、需要量は前年並みと見込んでいま
す。ただ、家庭用バターは昨年よりも増えていますが、これは、昨年乳製品向け処
理量の不足から販売制限をしたのに比べ、今年は積極的に販売したことによるもの
でしょう。需要の大幅な増加が見込めない中で、6月のように生産量が前年比3割
も増えるような状況が続けば余るという事態にもなると思われます。

 脱脂粉乳は、昨年は缶コーヒー、カルピスウォーター等の缶飲料の売れ行きがも
のすごく伸びたために不足し、各社ともその手当てに頭を痛めたものですが、今年
度に入って、5月以降缶飲料の売れ行きが思ったほどではなく、缶飲料メーカーが
生産調整を行って、昨年度の経験から抱えていた脱脂粉乳の在庫をさばいてしまう
という方向に走ったため、脱脂粉乳の注文のキャンセルもでるという状況になりま
した。缶飲料の消費は天候に左右されるので、結果的に脱脂粉乳の需要も天候の影
響を受けるということです。

 昨年9月のこの需給情報交換会議の席上では、生乳自体の不足から乳製品向けの
処理量が少なく、脱脂粉乳等の原料乳製品がかなり不足気味であるという意見が大
勢を占めたのに比べ、今年の夏は本当に様変わりという感じです。ただ、7月後半
で缶飲料メーカーの在庫がさばけたという話もありますし、天候の回復した8月以
降は状況も変わってくるのではないかと期待しています。

 全粉乳、れん乳も同様に缶飲料メーカーの生産調整で流れが悪くなっています。

 これらと関連することですが、輸入調製品が市場にかなり出回っており、バター、
脱脂粉乳等を中心として調製品に置換わっていると思われます。今までは単に代替
品として入っていたのに、最近は油脂メーカーが受けて製品化しています。昨年乳
製品が不足した時に輸入され、使用方法等が研究されて、今もそのまま続けて使わ
れているのでしょう。現場の技術者は、一度使うとなかなか変えたがらないという
こともあります。調製品自体は全量は使えないのですが、それでもコスト的には十
分見合うということで、根強い感じで使われています。

 アイスクリームについても、4〜7月は2〜3割ダウンしたところもあって、梅
雨明け以降回復しているものの、すでに商戦は7割方終了しているので下方修正の
必要があります。


バター、脱脂粉乳の需要は前年並み

 バター、脱脂粉乳の需要量については、昨年はバターが86千トン、脱脂粉乳は212
千トンと好調でした。今年の見込みについては、脱脂粉乳は需要の形態の変化が激
しすぎて見込むのは難しいのですが前年並み、バターも前年並みかわずかに下回る
ものと見込んでいます。昨年が伸びすぎたことを考えると、そんなに悪い数字では
ないと思います。


飲用牛乳の伸びに期待

 乳製品の最近の状況については、昨年、一昨年とのギャップが大きいのですが、
ユーザーにとっては、ものがたくさんあるのは悪いことではなく、それらを使用し
た新しい製品の開発も促進されるということもあります。

 ただし、生乳生産の伸びがこのまま続き、飲用消費が前年を割るような事態にな
れば、乳製品の需給にも影響を及ぼしかねないので、今後の飲用牛乳消費の動向を
注視しなければいけませんし、伸びてもらいたいと期待しています。

                                  以 上 

追記; この座談会の開催後、8月31日に7月分の牛乳乳製品統計が公表されまし
   た。それによると、生乳生産量は全国で105.9%、北海道は108.9%、都府県
   は103.8%と伸びています。席上でもお話がありましたが、平成2年の猛暑
   によって昨年大きく落ち込んだ九州が109.3%と回復に向かっているのが目
   立ちます。

    用途別処理量は、飲用牛乳等向けが99.9%と9ヵ月ぶりに前年比マイナス
   となり、乳製品向けは118.2%とさらに伸びています。梅雨明け後の8月の
   数値がどうなるか注目されます。


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