最近の畜産物の需給動向

  
 国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の
参考資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季
節調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔  牛  肉  〕
生産量はわずかに増加
 10月の牛肉生産量(部分肉ベース)は、3万6千489トンと前年同月よりわず
かに増加した(2.2%、図1)。その内訳をみると、去勢和牛は、8千44トン(4.0
%)とやや増加し、めす和牛も6千233トン(11.2%)とかなり増加したが、乳用
肥育おす牛と乳用めす牛は、それぞれ1万1千533トン(▲1.3%)、9千686トン(▲
1.5%)とわずかに減少した。
チルド輸入量は大幅に増加
 10月の輸入量(部分肉ベース)は、需要期へ向けた対応もあり、5万5千870トン
とかなり増加した(13.9%、図2)。その内訳は、チルドが3万55トンとかなり増
加(26.1%、図3)し、フローズンは2万5千574トンとわずかに増加した(2.0%
)。特に米国産チルドの増加が著しく9千261トンと前年同月を大幅に上回った(54.6
%)11月の輸入量について事業団は、約5万9千トン(チルド約3万2千トン、フロ
ーズン約2万7千トン)、また、12月を約5万5千トン(チルド約3万2千トン、フ
ローズン約2万3千トン)と見込んでいる。 
期末在庫量は引き続き8万トン台で推移
 10月の推定期末在庫量(部分肉ベース)は、国産品(37,030トン、5.1%)、輸
入品(52,443トン、7.8%)ともに増加し、合計では8万9千473トンとかなり増加
した。(6.7%、図5)。
 また、推定期末在庫量(部分肉ベース)は、8万7千485トンとかなり減少(▲7.3
%、図4)したが、その内訳をみると、国産品は1万507トン(▲7.6%)、輸入
量は7万6千978トン(▲7.3%)となっている。
省令価格(11月速報値)は1,059円
 10月の省令価格(東京市場)は、1,064円/kgと前年をやや下回った(▲2.1%、
図6)11月の(同速報値、瑕疵のある枝肉を除く)は、1,059円/kgとなった。
 11月の去勢和牛の枝肉価格は(東京市場、速報値)は、A5が2,599円(▲1.2%
)、A4が1,935円(▲0.5%)、A3が1,513円(0.6%)と前年と同水準となってい
る。
 11月上期の輸入牛肉の仲間相場は、前月に比べ全体的に値を下げているが、テン
ダーロインは値を上げている。
 また、豪州産牛肉の農薬残留問題が11月中旬に発生したことから、11月下期
以降の仲間相場に影響がでると思われる。

 〔  肉 用 子 牛  〕
黒毛和種の取引価格は35万円台(11月速報値)/b>
 10月の黒毛和種の子牛取引頭数は2万5千92頭(2.9%)、取引価格(雌雄平
均は32万7千円/頭(1.6%、図7)となった。
 11月の取引価格(速報値、12月12日現在)は、35万3千円/頭と前年より値を
下げているが、これは、枝肉価格がやや持ち直していること等から、肥育農家の収
益性が改善されつつあり、子牛の導入意欲が強いことによる。  
 
乳用種取引価格は若干の低下
 10月の乳用種の子牛取引価格(雌雄平均)は、5万5千円/頭となった(図8)
。11月の同価格(速報値、12月12日現在)は、5万4千円/頭となった。
 10月の乳用種のヌレ子価格は4万7千円/頭(▲14.9%)、11月の同価格(
速報値、12月12日現在)は、4万9千円/頭と前月よりやや値を上げている。 

 今月のトピックス
畜産環境保全技術研究組合の設立
 畜産経営に起因する環境問題は、飼養規模の拡大、混在化の急速な進展、地域住
民の環境保全意識の向上、水質汚職防止法等による法的諸規制の強化等により顕在
化・深刻化している。
 このため、家畜ふん尿の新たな処理技術の開発促進を図るために、「畜産環境保
全技術研究組合」が民間企業8社の参加により設立された。
 同組合の研究開発課題は、メタン発酵を中心とするエネルギー再生型処理システ
ム開発、家畜ふん尿の高度浄化と加熱蒸発処理システムの開発他であり、参加企業
の技術力を活用した処理施設等の開発が期待される。
 
〔  豚 肉  〕
 
前年をかなり下回った生産量
 10月の国内生産は、母豚の飼養頭数の減少などから、と畜頭数が157万4千
42頭(▲5.9%)、生産量が8万2千187トン(▲6.8%)と前年同月をかなり
下回った(図1)。
 11月のと畜頭数(速報値)は、167万5千200頭と前年同月をやや下回っており(
▲3.7%)、農林水産省畜産局では、12月についても、166万9千頭と前年同月を
やや下回ってるものと見込んでいる(▲5%)。
引き続き高水準の輸入量
 10月の輸入量は、4万7千63トンと前年同月をかなり大きく上回り(13.9%
)、4年4月に次ぐ高い水準となった(図2)。内訳を見るとフローズンは3万3
千466トンと前年同月をかなり上回り(7.3%)、またチルドは1万3千596
トンと輸入ラッシュが止まらず8月以降3ヵ月連続して前年を大幅に上回っている
(34.0%)。
前年並みの推定出回り量
 10月の推定出回り量は、国内生産量の減少を受けて国産品が8万2千539トン
と前年同月をかなり下回った分(▲6.1%)を輸入品が埋める形となり、合計では
12万9千79トンと前年とほぼ同量となった(0.6%、図3)。
 推定期末在庫量は、国産品が前年同月をかなり下回ったものの、輸入量の増加を
受けて輸入量がかなり上回ったため、合計では8万5千587トンとなった(2.7%)。
弱含みで推移した卸売価格
 10月の枝肉卸売価格(東京市場、省令)は、384円(▲5.7%)であった。生
産量は前年を下回ったものの、チルド輸入が引き続き高水準で推移したことなど
から、一時安定基準価格を大きく割り込んだため、28日から価格安定のための
調査保管が実施された。
 11月の卸売価格は調整保管の実施により、404円(▲0.7%)と前年とほぼ同
じ水準となった。
 12月については、肉豚出荷頭数が11月をわずかに下回ると予想されている
こと(畜産局)、年末年始の休市前の在庫手当てが入ること、調整保管を実施し
ていることなどからみて、11月をやや上回る水準で推移するものと見込まれる。

 今月のトピックス
気になるチルド輸入の動向
 今夏の猛暑による国内生産の減少と枝肉高値に対応し、台湾、アメリカなどか
らのチルド豚肉の輸入は、8月以降3ヵ月連続で前年を大幅に上回って推移し、
9月には過去最高を記録した。
 国内価格が落ちついた10月に入ってもラッシュは止まらなかったが、9月に
比べると輸入量はやや減っており、ひとまずピークを越したようだ。
 しかし、輸入チルドが国内相場に与える影響は大きく、今後の輸入動向が気に
なる。
  

〔  鶏  肉  〕 

 

依然前年を下回った生産量
 10月の生産量は、11万5千353トンと前年より増えているものの、6月
以降前年を下まわって推移している(▲1.0%、図1)。
 また、今後の生産指標となる10月ブロイラー用ひな出荷羽数は、6千187
万羽と年末需要に合わせたせ生産意欲から前年より増加したものの、前年同月を
やや下回った(▲4.3%)。
 農林水産省統計情報部によると、6年11月、12月、7年1月のブロイラー
ひな出荷の見通しは、それぞれ前年に比べて 101%、96%、99%と見込んでいる。
3か月連続して過去最高を更新した輸入量
 10月の輸入量は、4万5千670トンと前年同月を大幅に上回り(13.4%)、
8月から連続して過去最高の輸入量を更新した(図2)。
 これは、業界によると、円高を背景にクリスマス・年末の需要をあて込んだ輸
入が増加したためと見込まれている。

前年を大幅に下回った推定期末在庫量
 10月の推定出回り量は、16万95トンと前年同月をやや上回った(4.8%)。
このような需給状況から、推定期末在庫量は8万6千267トンとなったが、在
庫水準が高かった前年同月に比べると大幅に下回った(▲24.2%、図3)。
 特に、輸入品在庫は、輸入量増加にもかかわらず、加工・業務用向けを中心と
した輸入品の出回り量が大幅に増えていることから、前年に比べ減少した(▲
17.9%)。 
10月の卸売り価格は強含みで推移
 10月のもも肉、むね肉の卸売り価格(東京)は、それぞれ、536円/kg(▲0.6
%)、327円/kg(▲1.8%)と前年並みであった(図4)。
 最近の価格動向をみると、11月中旬からはなべ物需要等により、特にもも肉
の卸売り価格は堅調に推移し、11月末には599円/kgとなった(農林省「畜産物
市況速報」)。今後、クリスマス・年末の最需要期を迎え、年内の価格は上伸す
る見込みである。
 
 今月のトピックス
平成6年度鶏肉需要・価格の見通し 

 11月18日、農林水産省は平成6年度上期の実績をもとに、下期の需要・価
格の見通しを公表した。その要旨は次のとおり。

ア 消費
  輸入牛肉等との競合により、家計消費は低迷する一方で、加工・外食等消費
  を中心に増加し、全体ではわずかに増加する見込み。

イ 供給
 @生産
  収益性の低下、ひなえ付け羽数の動向等からやや減少する見込み。
 A輸入
  国内生産が減少する一方で、消費が増加するため、輸入水準が低下した前年
  同期に比べるとかなりの程度増加する見込み。

ウ 卸売り価格
  国内生産量が減少すると見られていること等から、低水準であった前年に比
  べると「もも肉」、「むね肉」ともわずかに上回る見込み。 

 

 〔 牛乳・乳製品〕 

生乳生産はわずかに下回る
 10月の生乳生産量は、68万1千490トンと前年同月をわずかに下回った(▲
2.6%)。また、一日当たりの生乳生産量の推移を季節調整済み値でみると、5
年春以降、ゆるやかな減少傾向を示している(図1)。 
飲用牛乳等向けはやや上回る
 10月の飲用牛乳等向け処理量は、平年より気温が高かったことから、45万
5千594トンと前年同月をやや上回った(4.3%)。
 最近の1日当たりの飲用処理量の推移を季節調整済み値でみると、5年秋以
降かなり上昇している(図2)。
 10月の乳製品向け処理量は、生乳生産量の減少、飲用牛乳等向け処理量の
増加から、21万5千187トンと前年同月をかなり大きく下回った(▲14.8%)。
 
脱脂粉乳の価格は引き続き上昇
 10月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、それぞれ5千90トン( ▲35.5%、
図3)、1万2千436トン(▲23.5%、図4)と引き続き大幅に前年同月を下回っ
た。10月のそれぞれの大口需要者価格を見ると、4年4月以降、下がり続け
ていたバターは前月と同じ価格になった。脱脂粉乳は生産量の減少と飲用向け
需要の伸びから、需要がひっ迫し、引き続き上昇傾向で推移しており、1万3
千451円/25kgと安定指標価格を4.8%上回った。
 
 今月のトピックス
下期計画生産の見直しと新たな乳成分取引の導入
 樺央酪農会議は、11月10日に今年度当初の生乳出荷目標数量に対して
1%(7万5千トン)を「特別生産枠数量」として設定した。同会議によると
これは@猛暑等の影響で飲用等向け生乳需要見込み数量が大幅に増加し、飲用
牛乳市場等での生乳需給がひっ迫した状況が続いており、同市場等の需要拡大
と市場安定化に対応することが必要であること、A平成7年度の計画生産体制
及び生乳生産基盤の維持・確保が可能となること等を勘案し、今年度に限り緊
急措置としたもの。
 また、12月5日に同会議の乳成分等評価取引推進委員会において、無脂固
形分評価を導入し、新たな乳成分取引を平成7年4月より実施することが決め
られた。これによると、乳脂肪分(取引基準値3.5%)について、現行で0.1%
増すごとに一定額(0.8〜1円)支払っていた加算金を0.4円程度に減額し、無
脂固形分(同8.3%)について0.1%増すごとに0.4円程度配分することになる。

 

〔  鶏  卵  〕 

 

猛暑の影響から前年を下回った生産量
6年7〜9月の四半期の生産量は62万5千950トンと例年にない猛暑の影
響による産卵率の低下等により、前年同期をやや下回った(3.6%、図1)。
 一方、10月のひな出荷羽数は、長期的な卵価低迷の影響から814万7千
羽と前年同月をかなり下回った(▲6.2%)。
 農林水産省統計情報部によると、6年11、12月、7年1月のひな出荷羽
数の見通しは、前年に比べてそれぞれ98%、96%、91%といずれも下回
ると見込んでいる。
強含みで推移した10月の卸売り価格
 10月の卸売り価格 (東京平均) は、 8、9月の猛暑の影響による品不足か
ら、一転して気候の安定とともに需給が穏和し、185円/kgと値を下げた(図2
)。
 さらに、11月の卸売り価格(全農東京M規格)は181円/kgまで値を下げた。
しかしながら、11月下旬からは、寒さも本格化し、なべ物の需要が上向いて
きたことに加え、クリスマスや年末・年始向けの加工需要に引合いが出てきた
こと等から、価格は200円/kg近くまで堅調に推移した。
 
 
 今月のトピックス
平成6年度鶏卵の需給・価格の見通し
 11月18日、農林水産省は平成6年度上期の実績をもとに、下期の需給・
価格の見通しを公表した。その要旨は次のとおり。

ア 消費
  家計消費の低迷するとみられていること等から、わずかに減少の見込み。

イ 供給

@生産量
  最近のひなえ付け羽数の動向から見て、前年同期に比べわずかに減少の
  見込み。(ただし、強制換羽の取組状況に左右される。)

A輸入量
  国内鶏卵生産価格が上昇するとみられていること等から、わずかに増加
  の見込。

ウ 卸売価格
  生産量が前年同期をわずかに下回るとみられることから、わずかに上回
  る見込。(ただし、生産量による自主的な減羽等については注視してい
  く必要あり。)
  

元のページに戻る