(宮崎県 岩崎充祐)
バブル崩壊後の不況により、牛肉価格や子牛価格の低迷に加えガット・ウルグ アイ・ラウンド農業合意により牛肉関税が現行の50%からさらに引き下げられる 等肉用牛農家にとっては非常に厳しい情勢にある。 このような状況の中、有機農業を展開している綾町では、今年度、子牛の共同 育成施設及び肥育施設(キャトルステーション)を整備し、肉用牛の生き残り作 戦として肥育部門と繁殖部門とが一体化した生産体制を推進している。これは、 町内の肉用牛農家の生産子牛(生後3か月齢)をキャトルステーションで子牛セ リ市出荷時期まで委託するもので(一部は肥育仕上げまで行う)、規格の揃った 肥育素牛を生産するとともに、育成から肥育へスムースに移行させ、化粧肉等の 無駄を無くして肥育期間の短縮化を図ろうというものである。この方式により、 繁殖農家は今まで子牛の育成に向けていた労力と施設を活用して規模を拡大する とともに、子牛の早期離乳による受胎率の向上を図るもので、まさに、低コスト 化の一石三鳥を狙ったものである。 また、この事業の円滑な推進のため、綾町、JA、契約農家の三者でキャトル ステーションに預託された子牛の価格保証と事故補償を行うため、基金を造成す ることとしている。この基金制度は、国の肉用子牛生産者補給金制度と連動し、 独自の保証基準価格を350千円に設定し、セリ市平均価格が350千円を下回った場 合に36千800円((350千円−304千円)× 0.8)を上限として、その差額の80%を 補てんする。さらに、ステーション内で事故が発生した場合は導入月齢に応じて 最高350千円まで補償するというものである。 今、まさに肉用牛農家にとっては正念場の時期にある。今回、綾町あげて実施 するキャトルステーション方式が成功し、肉用牛の低コスト化が一層図れること を期待するものである。