◆専門調査員レポート

微生物利用による畜産環境保全 

- 牛とトマトと花の村、岐阜県丹生川村 -

岐阜大学農学部 助教授  小栗 克之 


は じ め に
  畜産環境に関する全国的動向をみると、 畜産による環境汚染の苦情発生件数は、 昭
和48年の約1万2千件をピークにその後減少し、 平成5年には約3千件になっている。 
この20年間に約4分の1に減少しているのである。 しかし、 この間の畜産農家戸数の
減少は約7分の1となっているから、 畜産農家1戸当たりの苦情発生件数は逆に増加
している。 したがって、 現存する畜産農家にとって、 この畜産環境問題は、 かってよ
りもより重くのしかかっているといえよう。 
 
 知久さん経営にかかわる苦情の発生内容をみると、 全国では図1に示したように悪
臭がもっとも多く約62%、 ついで水質汚濁が約41%であることから、 畜産経営にかか
わる苦情は悪臭と水質汚濁といっても過言ではない。 特に都市近郊では畜舎と住居の
距離が近くなるため、 家畜糞尿の悪臭や害虫発生の苦情が多い。 周辺の住民から抗議
の電話が直接農家にかかってきたり、 役場等を介して苦情が寄せられる。 そのため、 
畜産を止める農家さえ出てくる。 
 
 このように、 悪臭を中心とする畜産公害対策、 畜産環境保全問題は、 今や畜産農家
の死活問題でもある。 最近、 その問題を特定の微生物群 (酵母菌、 光合成細菌、 乳酸
菌等10属80種以上の微生物、 その原液1t当たり10億生存しているといわれるもの。 
以下、 「微生物」 という。) の利用によって克服している畜産農家が現れはじめている。 
また、 その微生物を含む堆肥を利用して野菜の土地生産性を高めている農家もみられ
る。 本稿で取り上げる岐阜県丹生川村の肥育牛農家 (B・Cファーム、 藤原孝史氏) や
トマト農家 (森 泰広氏) がその端的な事例である。 丹生川村は畜産環境保全だけで
なく、 生活環境の美化にも積極的に取り組んでいる。 昭和54年から 「花いっぱい村づ
くり運動」 を実施しているが、 平成3年の 「第1回全国花のまちコンクール・市町村
の部」 で最優秀賞 (農林水産大臣賞)、 平成5年には内閣総理大臣賞を受賞している。 
 
 ここでは、 丹生川村の畜産環境保全の取り組みとその効果について、 生産現場から
の報告を行う。 丹生川村の農業は、 図2に示したように野菜 (主にトマト) と肉用牛
 (肥育牛) が中心になっている。 昭和50年以降それらの伸びは著しく、 今では米の販
売額を大幅に上回っている。 特に、 夏秋トマトの出荷額の伸びは著しく、 当地域の農
協 (JA丹生川) のその出荷額は近年日本一の座を確保するに至っている。 
 
 なお、 この微生物の科学的効果の実証を疑問視する見解が日本土壌肥料学会の会員
等、 一部の研究者から提起されているが、 筆者は技術的素養を欠くため、 それらの見
解の是非についての判断をすることはできない。 この微生物は肉用牛農家だけではな
く、 養豚農家や養鶏農家の糞尿処理にも使用され、 さらには今日、 一般市民の生ゴミ
処理 (堆肥化)、 汚染の浄化、 悪臭の除去、 農作物の有機栽培等にも利用されつつあ
る。  
  家畜糞尿の悪臭除去のため、 微生物を畜産農家が用いる場合、 その方法は大別する
と家畜の体内に微生物を飼料や飲料水に混ぜるやり方と、 畜舎内 (尿溜等の貯留槽を
含む。)  に散布する方法がある。 飼料や敷料に入れる場合は、 直接添加するのではな
く、 後述のようにボカシと称する発酵合成型有機資材をつくって用いる。 飲料水や尿
溜等に添加する場合は微生物を水で希釈する。 畜舎内に散布するには、 同様に微生物
を水で希釈して動力噴霧器等で噴霧する。 それらの方法は畜種や飼養形態、 飼養規模、 
周囲の畜産公害に対する圧力の強弱等によって選択される。 諸方法の選択や組合せに
よって悪臭除去の効果や経済性が異なるからである。 当地域では微生物を入れたボカ
シをつくり、 飼料に混ぜ、 家畜の体内を通す方法が一般的に用いられている。 なお、 
微生物は種々の嫌気性菌により構成されるため家畜の体内においても、 その効力を発
揮するとされている。 
 
 ここでは、 当地域において、 微生物が添加された牛糞堆肥の生産と流通 (図3) に
ついて説明する。 大きな流れとしては、 農協の堆肥センター内に設置している攪拌機
を利用して、 従業員が微生物入りボカシをつくり、 肉牛農家に供給する。 但し、 一部
の農家 (藤原氏) は自家用ボカシをセンター内でつくっている。 そのボカシを肉牛農
家は飼料に混ぜて牛に給与する。 ボカシ入りの飼料を食べた牛の糞には、 微生物が繁
殖する。 その生糞の大部分を堆肥センターに持っていき、 完熟堆肥を作る。 完熟堆肥
は野菜農家に供給される。 肉牛農家の生糞の一部分は野菜農家へ直接供給される。 
 
 数量的なことを中心に補足説明する。 農協の堆肥センターでは臨時雇用者1名 (午
後のみ半日勤務) が堆肥づくりのほかにボカシづくりも行う。 堆肥センターでは年間
約16t のボカシをつくっているが、 そのうち半分は藤原氏利用している。 
 
 微生物入りのボカシを使う肉牛農家は20戸である。 そのうち、 肥育牛組合に所属し
ている農家が15戸 (肥育専業は11戸、 他の4戸は肥育牛と繁殖牛を飼養している。)、 
和牛改良組合に所属している繁殖牛農家が5戸である。 ボカシ利用の繁殖牛農家数は
村内の1割に満たないが、 その農家の繁殖牛頭数は村内の約6割を占めており、 規模
の大きい経営が多い。 
 
 肉牛農家の生糞の大部分 (約6, 400t) は畜舎から出された後、 堆肥センターに持ち
込まれる。 一部 (約1, 900t) の生糞は肉牛農家から野菜農家へ直接販売され、 4t車
1台で4, 000円 (運搬料込み)、 1トン当たり1, 000円である。 堆肥センターに持ち込
まれた生糞も完熟堆肥 (3〜4カ月後) にして、 同額で野菜農家に販売される。堆肥セ
ンターの収容能力は5, 500tであるが、 年間3〜4回転するため、 1年間の収容能力は
約15, 000t 〜20, 000t ある。 その意味では、 現在の6, 400t を上回る量が持ち込ま
れても十分余裕はあるといえる。 
 
 生産された堆肥や肉牛農家から直接持ち込まれたものは、 村内の野菜農家 (約300戸、 
普通畑186ha) が中心となって利用している。 村内の肉牛農家から供給される堆肥量で
は不足気味であるという。
微生物を利用している乳オス
肥育牛農家 (B・Cファーム)
微生物利用の経緯
 B・Cファーム (Beef‐Cattle Farm) の経営主である、 藤原氏 (38才) が微生物
の利用を開始したのは平成5年からであり、 当地域でのきっかけをつくった。 その年
の9月から藤原氏が所属する丹生川村の肥育牛組合 (15戸) が、 微生物を利用するよ
うになったのである。 

微生物利用の効果
 平成6年9月29日に私達 ( 筆者と畜産振興事業団企画情報部の藤島博康氏 ) が、 
B・Cファームを訪れた時、 さっそく案内されたところが写真1の肥育牛舎前である。 
牛舎の糞尿は8〜10日に1度の間隔で畜舎外にローダーで出し、 ダンプに積んで堆肥
センターに運ぶ。 写真1の牛舎は糞尿が堆積しはじめてから8日目であり、 畜舎外へ
搬出する直前の、 糞がもっとも堆積した状態である。 しかし、 糞尿の臭いはほとんど
しない。 微生物を利用する前は糞尿の臭いが強いため、 1週間に1度は畜舎外へ糞尿
を出していたという。 今でも微生物を利用しない生後3カ月の子牛 (人工乳利用) の
糞尿は悪臭が強く、 ハエの発生率も高い。 生後3カ月以降の牛には微生物を入れたボ
カシの飼料や敷料を使うため、 牛の糞尿の悪臭やハエの発生が激減するという。 その
効果を目の当たりにみて、 当村の肥育牛組合もこの微生物利用に踏み切ったわけであ
る。 
 
  藤原氏によると、 微生物利用の効果として、 畜舎内の悪臭やハエが激減したという
ことのほかに、 牛の趾間腐乱 (牛の蹄に木屑等の夾雑物がささって化膿するもの) の
発生が約10分の1に減少したことと、 前胃弛緩症 (牛の前胃の膨脹) が減少したこと
をあげている。 すなわち微生物を家畜の体内に入れることは家畜の健康にもよいこと
を経験的に指摘している。 
 
  なお、 参考までに悪臭に対する微生物利用前後の臭気検査結果 (岐阜県可児市のS
養豚農家を対象にした民間の検査センターによるもの) を表に示す。 この表でも微生
物利用によって臭気の減少傾向が明らかにみられる。 但し、 この農家の場合、 微生物
を尿溜や分娩舎の溜め槽に入れた結果であり、 悪臭の軽減には一定の効果がみられた
が、 悪臭の除去には至っていないという。 
 
  余談になるが、 丹生川村のある機関の建物の男子用トイレのパイプが詰まったため、 
業者に清浄を依頼したところ、 費用が15万円かかるといわれた。 そこで、 試しに浄化
作用があるといわれる微生物の原液2gを詰まっている男子用トイレのパイプに流し
たところ、 きれいに浄化されたという。 この原液は1g2, 500円であったから、 わず
か5, 000円の費用で済んだと関係者は喜んでいた。 
B・Cファームの経営概要
  B・Cファームの経営概要を紹介すると、 乳用肥育牛の総頭数は平成6年9月現在830
頭、 うち成牛は650頭、 育成牛120頭、 子牛 (2カ月令以下) 60頭である。 原則的に乳
用雄子牛 (スモール) を購入し、 人工哺乳から肥育まで一貫生産する。 ただし、 今年
に限って北海道の酪農家が淘汰したホルスタイン雌250頭を安く導入した。 労働力は3.5
人、 経営主とその妻 (家事のため、 農業労働力としては0. 5人)、 従業員2名 (常雇)
である。 従業員は2名とも男子で40才と24才の働き盛りである。 
 企業経営の樹立をめざして平成4年10月に農業生産法人になった。 自分の息子が後
継者にならなくても法人の構成メンバーが経営を継続すればよいからだという。
微生物の使用方法とボカシの費用
  微生物の使用方法は藤原氏によると、 開始時期に次の3つの作業を行う。 第1に、 微
生物使用前の畜舎内の排泄物をすべて出して清掃する。 第2に、 微生物の原液1リットルと
糖蜜1リットルを水100リットルに希釈し、 その液を畜舎内全体 (400uが目安)に噴霧する。 第
3に、 牛床に微生物を添加した敷料を10uに3〜4s撒く。 または微生物を固定したセ
ラミック塊を10uに1s撒く。 これは微生物を牛床に早く定着させるためである。 敷料
は、 カンナ屑と米糠を1対1の割合で混合したものに、 微生物と糖蜜を1対1で混ぜ100
倍に希釈し添加したものを用いる。 
 その後、 恒常的に行うことは、 微生物によるボカシを飼料に混入し1日1頭当たり成
牛で20g、 育成牛で10gを与えることである。 ボカシの作り方は次のとおりである。 

@米糠100s、 一般ふすま100s、 ゼオライト40sに微生物の原液200tと糖蜜400u、 
 水20〜25リットルを全体によく攪拌する。 
A玉状になったものは完全につぶす。 水分は約30%ほどがよい。 
B出来たものをビニール袋に入れ、 空気を抜き、 口をしっかり閉める。
Cこの状態で15〜20℃に保ち、 これを与える。 
 
 藤原氏の場合、 このボカシを半月に1回22袋 (15s/袋) 作って使っている。 1年
間に約528袋 (7, 920s) 使う計算になる。 1袋の費用 (材料費のみ) は約520円。 年
間の総ボカシ費用は約27万5千円である。 肥育牛 (成牛) 1頭当たりに換算すると、 
約390円にすぎない。 ボカシ生産の労働時間は、 半月に1回22袋 (15s/袋) 作るのに
1人で約1時間、 1年間に約24時間である。 なお、 畜産農家が利用している微生物の
原液は1リットル当たり2, 500円である。 ただし、 一般の生活環境用として市販されてい
る微生物の原液は2リットル入りで7, 800円である。 利用目的に応じて若干内容が異なる
ため、 単価も異なってくるものと推察される。  
ボカシと牛糞堆肥を作る堆肥センター
堆肥センターの概要
  緑に囲まれた丘陵地帯に農協 (JA丹生川) の堆肥センターがある。 写真2に示した
堆肥センターがそれである。 写真の朝倉進氏は農協の畜産担当者であり、 今回私達
を案内して下さるとともに堆肥センターの設立・運営等についての話をして頂いた。 
 現在の堆肥センターは平成5年4月に総工費2億円をかけて完成したものである。 
補助事業 (平成4年度の広域畜産環境整備緊急対策事業) によるものであり、 事業
費は国が1億円を負担し、 残りの1億円を村 (6千万円) と農協 (4千万円) が負
担している。 敷地面積は5, 561u、 うち建物 (堆肥舎等) は1, 841u堆肥の収容能
力は5, 500tである。 以前は土づくり組合 (肥育牛農家と野菜農家によって構成) に
よる堆肥センター (敷地面積約600u) が当地にあった。 しかし、 当地域の肥育牛の
飼養頭数が急増したため、 旧来の堆肥センターでは狭くなり、 今回の増設になった
わけである。 
 堆肥センターの運営は、 臨時雇用者1名によっている。 その中島博秀氏 (26才) 
は当地の和牛肥育農家の後継者であり、 午前中は自家の肥育牛100頭の世話をしてい
るという。 優秀な農家で高品質の肥育牛を生産し、 毎日新聞の最優秀賞も受賞して
いる。 当農家も畜産環境対策として微生物を利用している。 中島氏の堆肥センター
での仕事は、 ボカシづくりと堆肥づくりである。 
ボカシづくり
 堆肥センターで微生物を利用したボカシづくりを始めたのは、 平成5年5月から
である。 偶然にも新しい堆肥センターの設立とともに始めたともいえる。 微生物を
導入したきっかけは、 その年の春、 朝倉氏が農業新聞でその存在を知り、 平成5年
5月に高知県の微生物利用農家を農協の畜産課長と前述の藤原氏の3人で視察した。 
その結果、 肥育牛農家の藤原氏が微生物を導入することとなり、 農協も援助するこ
ととなった。 農協営の堆肥センター内にある農機具庫の一角にボカシをつくるため
の攪拌機 (写真3、 4) を設置し、 藤原氏と農協の朝倉氏が協力してボカシづくり
を始めたのである。 攪拌機は菌床用の中古のものを15万円で購入している。 新品で
あれば、 45万円するのではないかと藤原氏はいう。 
 平成5年9月から藤原氏の所属する肥育牛組合 (15戸) と規模の大きい繁殖牛農
家 (5戸) が微生物の入ったボカシを利用することとなった。 しばらく、 ボカシづ
くりは藤原氏と朝倉氏が担当していたが、 今年5月からは朝倉氏の代わりに中島氏
がボカシづくりに加わった。 
 ボカシの材料および作り方、 費用は前述の藤原氏の場合と同じである。 労働時間
についていえば、 藤原氏は半月に1回1時間であるが、 中島氏は半月に1回約2時
間であるという。 藤原氏は自己の経営の所要量をつくり、 中島氏は他の肥育牛農家 
(14戸‥総頭数約1, 200頭) や繁殖牛農家 (5戸‥総頭数約300頭) 等の所要量をつ
くる。 原価 (材料費) は1袋 (15kg) 520円であるが、 労働費を加えて一般には600
円で販売する。 肉用牛農家には農協からの補助もあり若干安く、 原価に近い価格で
供給するという。 
微生物を利用した堆肥づくりとそのメリット
  微生物の入ったボカシを飼料に加えている肉用牛農家は、 畜舎から出した糞尿 (敷
料として利用したバーク (木の屑) を含む。) を農協の堆肥センターに持ち込む。 持
ち込まれた牛糞は3〜4カ月で完熟堆肥になる。 微生物を利用する前の牛糞は完熟す
るまでに5〜6カ月を要しており、 かなりの期間短縮になっている。 
 なお、 完熟までに以前は2〜3回堆肥の切り返しを行っていたが、 微生物を利用し
た牛糞になってからは1度も切り返しを行う必要がなく省力的になった。 普通の牛糞
は好気性発酵によって完熟堆肥になるため、 切り返し (かきまぜる) を時々行って酸
素を送り込み発酵を促進させる必要があるが、 微生物を利用した牛糞堆肥は嫌気性発
酵をするため、 酸素を送り込む必要はなく、 切り返しを行う必要はない。 したがって、 
堆肥づくりの労働生産性も著しく向上したといえる。 
 さらに、 一定の牛糞量 (敷料を含む) からつくられる完熟堆肥の体積が、 微生物を
利用する前に比べて約2割減少したとのこと。 それは敷料のバーグが微生物によって
分解され、 堆積密度が高くなるからではないかとのことであった。 
 このように、 微生物の利用によって堆肥づくりがよりスピーディに、 よりコンパク
トになったため、 堆肥舎にスペースの余裕ができ、 より省力的に堆肥生産ができると
いうメリットがみられる。 
 出来上がった牛糞堆肥は村内の野菜農家にトン当たり1, 000円で販売される。 利用
野菜農家は約300戸で、 トマト、 ホウレンソウ、 ダイコンづくりに微生物を利用した牛
糞堆肥を使用している。
微生物利用堆肥を用いたトマトづくり
  村内で微生物が添加された牛糞堆肥を用いて優れた効果をあげている野菜農家の1人に、 
森 泰広氏 (写真5) がいる。 森氏は有機栽培のトマト農家として広く知られている。 
15〜16年前からハウスのトマト栽培に自然農法を取り入れ、 ハウス60aのうち15aは化学
肥料や農薬をいっさい使わず。 草を刈って堆肥をつくり、 その堆肥によってトマトをつ
くってきた。 そのとき、 草堆肥利用のハウストマトの収量 (単収) は化学肥料利用のハ
ウストマトに比べて半分以下であったという。 ただし、 連作障害には強く、 化学肥料利
用のハウスは4〜5年でダメになるが、 自然農法のハウスは14年間連作を続けることが
できたという。 6年前、 微生物の存在を知り、 草の堆肥づくりに利用 (散布) したが、 
トマトの収量や病気に対して効果はほとんどみられなかったとのこと。 
 森氏によると、 草堆肥づくりは土手草刈りに始まって集草・堆積、 切り返し等多労の
ため (1人で述べ30日かかる)、 それに代えて牛糞堆肥を3年前から利用するようになり、 
さらに去年から藤原氏の微生物入り生糞を利用するようになった。 この生糞を使うよう
になって効果は著しく、 収量 (単収) は利用前に比べて約3割増え、 病気も軽減した。 
利用前はトマトにウドンコ病、 青枯れ病、 根こぶ病等病気が多く、 一度発生すると広が
って止まらなかったが、 この生糞堆肥の利用後は病気の発生が減少しただけでなく、 一
度発生しても広がらず、 止ってしまうとのことであった。 ホウレンソウの立ち枯れ病も
減ったとのこと。 森氏はハウスでメロンも若干 (4a) つくっているが、 微生物を添加し
た生糞を用いる前は一玉の大きさが平均1. 5kgであったが、 利用後は3. 5kgと倍増し、 
糖度も利用前の14度から利用後は16〜17度と大幅に上昇した。 ハウスでトマトへの牛糞
施用量も微生物添加前は10a当たり4t であったが、 添加後は2t に減らした。 
 自然農法のハウストマトへの微生物を添加した生糞の利用法は、 定植2週間前に生糞
を藤原氏から購入し、 10a当たり2t 施用する。 その際には、 既に微生物を含む飼料を与
えた家畜から得られた生糞にさらに微生物原液を添加して施肥する。 経費は、 トマトの
病気防除のための直接散布用を含めても、 昨年で30万円、 今年は20万円程度であり、 既
に施肥した分の効力を考えれば、 微生物の使用量が減少し、 今後経費はさらに少なくな
るだろう。 また、 同程度の土壌改良、 病気防除効果を得るために化学肥料や農薬を用い
ると仮定した場合のそれらの経費に比べて、 現状の微生物や牛糞堆肥に要する経費の方
が安上がりになるとのことであった。 
お わ り に
 筆者も自宅に生活用のコンポスト (生ゴミ入れ) があり、 開閉時の強烈な悪臭に悩ま
されていた折り、 昨年の6月頃、 岐阜市役所の生活環境課から入手した微生物入りのボ
カシを使用したところ、 その直後からウソのように悪臭が消えた。 その極端な効果には
驚かされた。 それ以上に、 都市近郊の畜産農家は悪臭を中心とする畜産公害問題に悩ま
され、 廃業を迫られているところさえある。 微生物利用の急速な普及は、 そのような現
実を背景にしているといえよう。 ただ、 微生物を利用してもそれほど顕著な悪臭除去の
効果がみられないという現場からの話もあるため、 どのような条件のもとで効果がある
のか、 あるいは利用条件と利用方法の相互関係など今後解明すべき課題も多いと思われ
る。 
 現地調査に際して、 丹生川村役場の古滝氏や獣医師の小瀬氏、 JA丹生川の朝倉氏に大
変お世話になったことを、 最後に記して深謝する。 
 

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