最近の畜産物の需給動向

  
 国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の
参考資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季
節調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔  牛  肉  〕
生産量はわずかに増加
 9月の牛肉生産量(部分肉ベース)は、3万4千271トンと前年同月よりわず
かに増加した(0.9%、図1)。その内訳をみると、去勢和牛とめす和牛は、そ
れぞれ7千323トン(10.2%)、5千840トン(11.7%)とかなり増加したが、乳
用肥育おす牛と乳用めす牛は、それぞれ1万1千29トン(▲5.5%)、9千267トン
(▲3.6%)とやや減少した。
フローズン輸入量は大幅に減少
 9月の輸入量(部分肉ベース)は、4万5千381トンと減少した(▲3.1%、
図2)。その内訳は、チルドが2万6千885トンとかなり増加した(8.3%、図
3)、フローズンは1万8千237トンと大幅に減少した(▲16.1%)。また、チ
ルドの国別をみると、米国産チルドの増加が著しく8千591トンと前年同月を大
幅に上回った(31.7%)10月の輸入量を事業団は、約5万3千トン(チルド約3
万トン、フローズン約2万3千トン)、また、11月を約5万1千トン(チルド約
2万9千トン、フローズン約2万2千トン)と10月よりも減少すると見込んでいる。 
期末在庫量は引き続き8万トン台
 9月の推定期末在庫量(部分肉ベース)は、8万4千604トンとかなり減少し
た(▲9.5%、図4)。その内訳をみると、国産品在庫は1万1千53トンとわ
ずかに増加した(1.6%)が、輸入量はフローズン輸入の大幅な減少により7
万3千551トンとかなり減少した(▲11.0%)。
 9月の推定出回り量は、輸入量が前年同月を下回ったが、在庫品の取り崩し
により8万3千455トンとかなり増加した(6.7%、図5)。
省令価格(10月速報値)は引き続き千円台
 9月の省令価格(東京市場)は、1,062円/kgと前年をわずかに下回った(▲
0.6%、図6)10月の(同速報値、瑕疵のある枝肉を除く)は、1,079円/kgと前
年より上昇した。10月の去勢和牛の枝肉価格は(東京市場、速報値)は、A5は
2,544円(0.2%)、A4で1,848円(▲0.4%)、A3で1,495円(0.4%)と前年
と同水準となっている。10月上期の輸入牛肉の仲間相場は、前月に比べ全体的
に値を下げた。
 〔  肉 用 子 牛  〕
 
黒毛和種の取引価格は堅調
 9月の黒毛和種の子牛取引頭数は3万2千715頭(▲1.2%)、同取引価
格(雌雄平均)は33万3千円/頭(2.5%、図7)と前年よりもやや値を上げて
いる。これは、肥育経営の収益性がやや改善され、肥育農家の生産意欲が刺
激されているためとみられる。10月の同価格(速報値、11月16日現在)は、
32万8千円/頭と前年より値を下げている。  
 
乳用種は低迷
 9月の乳用種の子牛取引価格(雌雄平均)は、4万9千円/頭となった(図
8)。10月の同価格(速報値、11月16日現在)は、5万5千円/頭と前
年より値を上げている。
 9月の乳用種のヌレ子価格は4万3千円/頭(▲23.6%)、10月の同価格
(速報値、11月10日現在)は、4万7千円/頭と前月よりやや値を上げて
いる。 
 今月のトピックス
生産者補給交付金は引き続き全品種で発動
 農林水産省畜産局は、10月20日に今年度第2四半期(7月1日〜9月30
日)の指定肉用子牛の平均売買価格を告示したが、第1四半期に引き続き全品種
で保証基準価格を下回ったため、生産者補給交付金の交付が行われることとな
った。
 品種毎の内訳をみると、肉専用種の平均売買価格は3区分とも第1四半期より
上昇しているが、乳用種の同価格は引き続き低下している。 
 
〔  豚 肉  〕
 
前年をかなり下回った生産量
 9月の国内生産は、母豚の飼養頭数の減少に加え、猛暑による発育の遅れな
どから、と畜頭数が150万2千379頭(▲6.2%)、生産量が7万6千227
トン(▲8.9%)と前年同月をかなり下回った(図1)。
 10月のと畜頭数(速報値)は、157万3千100頭と前年同月をやや下回ってい
る(▲5.9%)。
 農林水産省畜産局では、11月についても、163万4千頭と前年同月をかなり
下回るものと見込んでいる(▲6%)。
過去最高のチルド輸入量
 9月の輸入量は、チルド、フローズンとも前年同月を大きく上回り、合計で
4万2千723トンとなった(16.7%図2)。9月上旬までの国内の枝肉高値に対
応したチルドのスポット輸入がかなりあったものと思われ、1万4千237トン
と過去最高となった。特に台湾からは9千59トンと激増した
(50.3%)。
前年をわずかに下回った推定出回り量
 9月の推定出回り量は、国内生産量の減少を受けて国産品が7万8千952トン
と前年同月をかなり下回った分(▲6.6%)を輸入品が埋める形となり、合計で
は12万4千491トンと前年同月をわずかに下回るにとどまった(▲1.1%図3)。
 推定期末在庫量は、国産品が前年同月をかなり下回ったものの、輸入量の増加
を受けて輸入量がかなり上回ったため、合計では8万5千417トンとなった(4.1
%)。
弱含みで推移した卸売価格
 9月の枝肉卸売価格(東京市場、省令)は、上旬はと畜頭数が低水準であった
ことなどから600円台をつける日もあったが、と畜頭数の回復にチルド輸入増が
重なり、400円近くまで急落し、月平均では511円/kg(20.1%)となった。
 10月に入ると生産量が前年を下回りながらも、チルド輸入が9月に引続き
高水準であったと見られることなどから、卸売価格(東京市場)は一時安定基
準価格を大きく割りこみ、月末には調整保管が実施された。月平均(速報値)
は384円(▲5.7%)であった。
 11月の卸売価格(東京・大阪市場)について畜産局では、肉豚出荷頭数が
10月をやや上回る水準で推移するものの、調整保管を実施していること等か
らみて、10月を上回る水準で推移するものと見込んでいる。
 今月のトピックス
子取り用雌豚は5.2%の減少
 8月1日現在の子取り用雌豚の飼養頭数は、99万6千750頭と100万頭
を切り、前年に比べて5.2%減少していることが、養豚経営安定推進中央会議
の調査で分かった。
 このことから、出荷頭数は今後とも前年を下回って推移することが見込まれ
る。また、飼養戸数は14.7%減の19,147戸となっている。   
  

〔  鶏  肉  〕 

 

引き続き10万トンを下回る生産量
 9月の生産量(農林水産省食肉鶏卵課推計)は、先月に引き続き10万ト
ンを割り込み、前年同月もかなり下回った(9万9千10トン、▲7.2%)。
 生産量を季節調整済み値で見ると平成4年春から漸減傾向を示している(
図1)。
 また、今後の生産指標となる9月のブロイラー用ひな出荷羽数は、5万5
千346羽と前年同月をやや下回った(▲3.3%)。
 農林水産省統計情報部によると、10月、11月、12月のブロイラーひ
な出荷の見通しは、それぞれ前年に比べて 94%、103%、97%と見込んでい
る。
引き続き最高の水準となった輸入量
 9月の輸入量は、4万5千65トンと前年同月を大幅に上回り(16.4%)、
先月に引き続き過去最高の水準となった(図2)。
 これは、関係者によると、加工・業務用向けを中心とした需要が伸びてい
ることから、輸入が増加したと見込まれている。
前年を大幅に下回った推定期末在庫量
 9月の推定出回り量は、14万1千74トンと前年同月をやや下回った(▲2.6
%)。このような需給状況から、推定期末在庫量は8月末より増加し、8万5
千339トンとなったが、在庫水準が高かった前年同月に比べるとを大幅に下
回った(▲22.3%、図3)。 


9月の卸売り価格は今日強含みで推移
 9月のもも肉、むね肉の卸売り価格(東京)はそれぞれ、519円/kg(3.4
%)、328円/kg(9.3%)とそれぞれ前年同月を上回った(図4)。
 最近の価格動向をみると、9月下旬からは行楽需要等により、一時的に需
要が増加し、10月上旬まで卸売り価格は上伸し、もも575円/kg、むね365
円/kgとなった。しかしながら、それ以降は需要も一段落し、10末にはそ
れぞれ、531円/kg、330円/kgまで値を下げた(農林省「畜産物市況速報」)。
 
 今月のトピックス
増えつつある中国からの輸入量 
 8月、9月と輸入量が最高記録となったが、特に、中国からの輸入が増加
の傾向にあり、ブロイラーの輸入量ではここ3ヵ月連続して30%以上を占
めている。
 中国は、国策として畜産の育成に力を入れており、処理場等の整備も行っ
ていること。
 また、日本が市場として近くに位置しており、輸送コスト面や輸送時間面
で、他の対日輸出国よりも有利であることから、長期的には中国からの輸入
(特に冷蔵品)は増加していくものと思われる。

 

 〔 牛乳・乳製品〕 

生乳生産はわずかに下回る
 9月の生乳生産量は、8月ほどの落ちこみはなく、67万8千29トンと前年同
月をわずかに下回った(▲2.3%)。また、一日当たりの生乳生産量を季節調
整済み値でみると、5年春以降、減少していたが、最近はゆるやかな減少傾向
を示している(図1)。
 牛群検定(家畜改良事業団)の結果から、都府県の1頭当たりの泌乳量をみ
ると、4〜6月は前年を上回っていたにもかかわらず、猛暑による搾乳牛の体
力の消耗等により7月、8月は前年を下回った。しかし、暑さが一段落した9
月になると前年並みまで回復した。
 
飲用牛乳等向けはやや上回る
 9月の飲用牛乳向け処理量は、46万9千172トンと前年同月をやや上回った
(5.8%)。
 1日当たりの飲用処理量を季節調整済み値でみると、猛暑の影響から、か
なりの上昇傾向をしている(図2)。 
 また、飲用牛乳等の生産量を見ると、先月に引き続き前年同月をかなり上
回った。
 9月の乳製品向け処理量は、生乳生産量の減少、飲用牛乳等向け処理量の
増加から、19万7千657トンと前年同月を大幅に下回った(▲17.9%)。
 
脱脂粉乳の価格は引き続き上昇
 9月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、それぞれ4千32トン( ▲43.8%、
図3)、1万945トン(▲27.2%、図4)と引き続き大幅に前年同月を下回っ
た。9月のそれぞれの大口需要者価格を見ると、バターはの低下傾向で推移
し、脱脂粉乳は猛暑による飲用関係の需要の伸びから上昇傾向で推移してお
り、1万3千353円/25kgと安定指標価格を4.0%上回った。
 
 今月のトピックス
バターの消費拡大
 社団法人中央酪農会議は、指定助成対象事業によりバター過剰在庫解消緊
急対策事業を実施する。全国各地で開催される農水産物フェアやイベントで
の販売促進プロモーション、バターのマイナスイメージを是正、消費を啓発
するテレビCMの放映、料理学校でのバターの正しい知識の普及等でバター
の需要を堀り起こすことを目的とする。これによって、過剰となっているバ
ターの在庫が減ることを期待したい。

 

〔  鶏  卵  〕 

 

依然として前年を下回って推移するひな出荷羽数
 9月の採卵用ひな出荷羽数は、911万8千羽と前年同月をわずかに下回った
(▲2.8%、図1)。農林水産省統計情報部によると、10、11、12月のひな出
荷羽数の見通しは、前年比べてそれぞれ96%、96%、98%、といずれも下回る
と見込んでいる。ひな出荷羽数を季節調整済み値で見ると6年2月からはほぼ
横這いで推移している。
  一方、9月の札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5都市の鶏卵市場における
総入荷重量は、3万1千687トン(▲5.8%)と前年同月をやや下回った。
強含みで推移した9月の卸売り価格
 9月の卸売り価格 (東京平均) は、 猛暑による産卵率の低下等による影響か
ら、8月に引き続き強含みで推移し、201円/kgとなった(図2)。
 しかしながら、10月の卸売り価格(全農東京M規格)は187円/kgまで値を下
げている。関係者によると、気候の安定から産卵率が回復したことによる生産
量の増加が直接の原因と見られている。
 なお、10月も9月に引き続き鶏卵の基金の補てんは見合わされた。
 
 今月のトピックス
卵価正常化緊急対策の公表
 (社)日本養鶏協会(鶏卵需給安定中央委員会)は経営強化のため生産者の
自主的な判断に基づく需給調整に資することを目的として、卵価正常化緊急対
策を次のとおり公表した。(公表は年2回実施)。

@減産以外に価格回復の決め手なし

 現在の需給状況としては、え付け羽数が減少しても強制換羽の増加で成鶏が
 減少しないため、生産は減らない。一方、消費は不況続きで減少している。
 このため、卵価が回復するためには、減産以外に決めてはないとしている。

A消費者が安心できるタマゴの生産を

 万全な衛生管理を行う事を奨励している。

B強制換羽の実施には再考を

 強制換羽の実施割合は、年々増加しているが、強制換羽後のタマゴは、市場
 の品質評価が悪く、場当たり的な実施をすぐ中止するよう呼びかけている。

  

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