★ 事業団だより

「乳業者研修会の概要」

                      乳  業  部        
  
  畜産振興事業団は、 毎年、 行政・流通等の専門家を講師として招き、 事業団
への出資者を対象として、 乳業経営者研修会を実施してきております。

  今年で23回目となりますが、 今回は、 「国際化対応」 というテーマを軸に、 
東京都港区で10月13、 14日に開催しました。 

 その内容は、 「酪農乳業をめぐる情勢と将来展望」 について農林水産省畜産
局永岡牛乳乳製品課長に行政の立場から、 「国際情勢と国内経済の見通し」 に
ついて毎日新聞社の森田論説副委員長に経済の専門家の立場から講演していた
だきました。 
 
  さらに、 「海外の乳業情勢」 について三菱商事 叶H料原料部の二井課長に、
 「国際化に向けての量販店等の販売戦略」 について、 叶シ友食品部の増田マネ
ージャーに流通の立場からそれぞれ講演していただきました。 各講演の中から
ポイントとなる点を紹介いたします。 
酪農乳業をめぐる情勢と将来展望 
  (永岡牛乳乳製品課課長)
 −供給管理型政策から市場重視の政策へ−
 UR交渉の妥結により、 WTO (世界貿易機構) 協定に基づく枠組みの中で共
通の国際的土俵ができたといえる。 
 
  共通の土俵とは、 1つ目が関税化 (関税相当量の徴収) であり、 2つ目が関
税の一律削減 (フォーミュラカット)、 3つ目がカレントアクセス輸入の受入
れで、 4つ目がAMS (内外価格差、 助成対象直接支払い及び削減対象補助金を
加えて計算される保護・支持の総合的計量手段) による国内支持の削減である。 
 
  当面の6年間は、 関税相当量の水準も高く、 カレントアクセス輸入数量もそ
れほど多くはなく、 当面は大丈夫だという意見もあるが、 6年後以降を想定し
て今から改革のスタートを切る必要がある。 
 
  まず、 国内の酪農・乳業の振興のために、 供給管理型政策から、 市場重視の
政策にシフトし、 酪農・乳業の合理化を進めて行くことが必要である。 この場
合、 将来の展望、 予見を入れた政策展開が必要である。 乳製品と飲用乳を分け
て考え、 乳製品の世界で起こる国際的な競争と飲用乳で起こる国内的競争に対
してどのような方策を講じて行くべきかが具体的課題だ。 
 
 生産については、 価格維持のための数量抑制策から、 もう少し柔軟にして、 
価格が低下しても生産を拡大する方向に活路を見い出す必要がある。 
 
その具体的方策については、
 
@ 不足払い制度の見直し
  AMSによる分類によると不足払い制度は、 削減対象となることから、 今後、 
  価格政策と削減対象外の所得政策に分離することなどを含め検討していく
    必要がある。 

A 飲用乳の流通・価格形成
  乳製品の輸入増加により、 国内において飲用乳の競争が激化すると思うが、 
  それでも国際的影響が相対的に少ないの飲用乳市場をもっと拡大していく
    必要がある。 そのためには、 流通の広域化、 価格形成方法の見直しや生産
    枠を流動化する等の計画生産の方法の見直し等を検討する必要がある。 

B 乳業の合理化
  広域流通の対応等業界として経営の合理化を進めていく必要がある。 

C カレントアクセス輸入
  これからは国内需給事情にかかわりなく輸入することになるが、 国内生産
    が減ることの無いよう計画的に対応する。 
  最後に、 関税化受入れは厳しいが、 この6年間に日本の酪農乳業の体質を
    強化し、 5年後の交渉の場では、 日本が他国に追随するのではなく、 他国
    に提案する等の条件闘争に入れるほどの競争力をつけてほしい。

国際情勢と国内経済の見通し
  (毎日新聞社 森田論説副委員長) 
−世界的に景気は回復基調にある−
  今年9月から世界景気は急速に回復に向かっている。 EUはイタリアを除き
プラス基調である。 米国も好調である。 アジアでは、 中国が高い成長率を誇っ
ており、 フィリピンも成長軌道に乗り始めた。 ベトナムも好調。 83年に米国の
太平洋貿易が大西洋貿易を上回り、 87年にアジアの域内貿易が米国の対アジア
貿易を上回り、 93年に日本の対アジア輸出が対米輸出を上回ったようにアジア
は成長をつづけている。 日本の景気については、 回復基調にあるが、 浮揚力は
まだ弱い。   

海外の乳業情勢
  (三菱商事 食料原料部 二井課長) 
−UR合意後は、 米国西部地域の生乳生産の動きに注目−
  世界の乳製品の生産量に占める貿易量は6. 2%であり、 小麦の20%、 コーヒ
ー豆の68%と比してかなり低い。    
  主要生産国の生乳生産量の推移をみると、 EUが減産傾向で、 東欧、 旧ソ連
は大幅な減産、 北米、 アジア、 大洋州は増産傾向であるが、 その減産分をカバ
ーできていない。    
  米国においては、 伝統的な生産地であるウィスコンシン州、 ミネソタ州では
微減であるのに対して、 カリフォルニア州やニューメキシコ州などの西部地域
は生産を拡大している。 これは、 伝統的酪農州が、 連邦マーケッティングオー
ダー (生乳取引制度) に参加し、 保守的経営なのに対し、 西部の州では、 連邦
マーケッティングオーダーに参加せず、 極めて効率を追求した大規模経営で、 
かつ基本的に需給で乳価が決まるようになっているからである。 今後この地域
でさらに生産が増加した場合、 現在の乳価がAUST.、 N. Z. に次いで安いこと
を考え合わせると、 牛肉と同様に、 いつかは外に出て行くのではないかと推測
される。 カリフォルニア州の生乳生産量の伸びは、 脅威である。
  EUの生乳生産は、 今後減少傾向に向かうものと推測される。 それは、 UR
合意により、 今後、 域内生産の3%から5%のミニマムアクセスの受入れ (生
乳換算300万トンから500万トン)、 域内補助の2割削減、 輸出補助金の21%削
減等のためである。 
 オセアニアは、 生乳生産の拡大余地はないと思われる。 
 アジアでは、 タイ、 マレーシア、 インドネシア等の国々において需要の増が
見込まれる。 特に中国においては、 今後かなりの需要が増大するものと見込ま
れるが、 インフラの整備等の遅れから今後とも生乳供給基地にはなれず、 輸入
市場として位置づけられるものと考える。
 
国際化に向けての量販店の販売戦略 
 (西友 食品部 増田マネージャー)  
−ヒット商品にはそれなりのルールがある− 
  70年代、 80年代、 90年代のその時々の経済・社会情勢とヒット商品を個別
具体的に関連付けて見ていくと特徴がある。  このことを勘案すると、 90年代
のような構造不況下の販売戦略は、 低価格志向、 価格破壊の方向とならざる
を得ない。 どの時代のヒット商品も、 @新しい技術、 A健康維持、 Bやさし
さ、C女性の社会進出、 D国際化、 E安全性を念頭につくられている。 
 
 国際化については、 内外格差の解消が課題である。 2000年までに内外格差
を解消するであろう。 その場合、 低価格PB商品も役割を終え、 NB商品に
なって来るのでは。 また、 菓子の関税率低下によりメーカーが海外にシフト
したり、意識せず輸入商品を購入する等国際的な市場が形成されていくであろ
う。 

 安全性の問題は、 来年7月のPL法の施行に伴い、 より重要となる。 また、  
シルバー世代への対応、 パーソナル商品、 サービス商品も重要となり、 今後
の商品に求められるものは、 低価格で安全で、 かつ環境に優しいことである。  

 (この詳細な報告については、 今月号のP17に掲載しています。 ) 
  

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