最近の畜産物の需給動向

  
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の参考  
資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季節調整  
は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔  牛  肉  〕
生産量はかなり増加
 8月の牛肉生産量は、去勢和牛が7千456トン(部分肉ベース、以下同じ)と
かなり増加(9.1%)、めす和牛が6千197トンと大幅に増加(16.5%)し、乳用肥
育おす牛は1万868トンとやや増加(3.6%)、乳用めす牛が9千278トンとわずか
に増加した(2.0%)ことから、全体で3万4千712トンと前年同月よりかなり増加し
た(6.5%、図1)。依然として続く和牛牛価格の低迷等により、去勢和牛よりめ
す和牛の増加率が高くなっている。 
 
かなり増加した輸入
 8月の輸入量はチルド、フローズンともかなり増加し、全体では4万9千516トン
(13.1%、図2)、うちチルドは2万8千410トン(16.3%)、フローズンは2万960
トン(8.9%)となった(図3)。国別の内訳をみると、米国産が2万1千500トン
(15.0%)、豪州産は2万6千100トン(11.2%)となっている。
 事業団は9月の輸入量を、4万7千トン前後(チルド2万8千トン、フローズン1万
9千トン)と見込み、また、10月については、9月よりも増加し、5万1千トン前後
(チルド2万9千トン、フローズン2万2千トン)と見込んでいる。 
 
期末在庫は減少し8万トンに
 8月末の推定期末在庫量は、国産品在庫は1万1千730トンとかなり増加した(11.
7%)が、輸入品が7万6千682トンと減少した(▲4.6%)ことにより、全体では8万
8千412トン(▲2.7%、図4)と4ヵ月ぶりに8万トン台に落ちた。
 8月の推定出回り量は、輸入量の増加により輸入品が5万5千182トン(26.3%)と
大幅に増加、また、国産品についても3万4千632トン(3.6%)となったことから、
全体では8万9千814トン(16.5%、図5)と大幅に増加した。
 
省令価格(9月速報値)は引き続き千円台
 8月の省令価格(東京市場、以下同じ)は、1,028円/kgと前年をわずかに下回っ
た(▲0.8%、図6)ものの、5ヶ月ぶりに千円台となった。また、9月の省令価格
(速報値、瑕疵のある枝肉を除く)も、1,079円/kgと引き続き千円台となった。
 9月の東京市場(速報値)では、去勢和牛のA5は2,612円(▲1.4%)、A4は
1,944円(▲0.9%)となった。
 また、8月から9月上期にかけての輸入牛肉価格(国内仲間相場)は、焼き肉需
要等により北米産ロイン(チルド、フローズン)は引き続き前回並みの価格となっ
た。豪州産のチルドは、港湾ストによる船積遅延の影響等により9月上記では値を
上げている。
 〔  肉 用 子 牛  〕
 
黒毛和種の取引価格がやや上向く
 8月の黒毛和種の子牛取引頭数は2万608頭(5.4%)、取引価格は雌雄平均で29
万9千円/頭(▲8.7%)となった(図7)。9月の取引価格(速報値、10月11日現
在。以下同じ)は、肥育経営の収益性が改善に向かっていることから、肥育農家の
生産意欲が刺激され33万3千円/頭と前月に比べて値を上げた。 
 
乳用種は低迷
 8月の乳用種の子牛取引頭数は、4千119頭(39.1%)と前年同月を大幅に上回っ
た。取引価格については、雌雄平均で5万3千円/頭(▲39.6%)と大幅に値を下げ
た(図8)。9月の取引価格(速報値)は4万9千円/頭となっている。
 乳用種のヌレ子の取引価格は8月が4万2千900円/頭(▲23.9%)、9月の速報値
では4万3千300円/頭となっている。
 今月のトピックス
6年度の肉牛出荷(予測)は1.2%
 平成6年度の肉牛出荷予測頭数は142万頭(対前年比▲1.2%)と、9月22日に
開催された全国肉畜(肉牛・肉豚)生産出荷協議会で農林水産省畜産局より報告さ
れた。畜種別にみると、肉専用種については9月までは増加基調で推移するが、11
月より減少に転じ年度計では2.2%増の60万2千474頭、乳用種については年間を通
じて前年比で減となり、年度計では▲3.5%の81万7千391頭と予測している。 
 
〔  豚 肉  〕
 
前年をかなり下回った生産量
 6年8月の国内生産は、母豚の飼養頭数の減少に加え、猛暑による出荷の遅れ等
から、と畜頭数が146万8千967頭(▲4.0%)、生産量が7万3千918トン(▲6.5%)
と前年同月をかなり下回った(図1)。
9月のと畜頭数(速報値)は、147万1千400頭と、7月、8月に引き続き前年同月を
かなり下回っている(▲8.2%)。農林水産省畜産局では、10月についても、160
万6千頭と前年同月を下回るものと見込んでいる(▲4%)。
 
大幅に伸びた8月の輸入
 8月の輸入量は、チルド、フローズンとも前年同月を大幅に上回り、合計で4万4
千916トンとなった(19.2% 図2)。特にチルドは1万2千858トンと過去最高を記
録している。国別に見ると、台湾からの輸入が1万9千286トン(41.9%)と急増し
ているのが特に目立ち、国内枝肉の価格高に対応してチルド、フローズンともにス
ポットでの輸入がかなりあったものと思われる。
前年と同水準の推定出回り量
 8月の推定出回り量は、国内生産量の減少を受けて国産品が7万4千783トンと前
年同月をかなり下回った分(▲6.2%)を輸入品が埋める形となり、合計では12万
1千135トンと前年同月とほぼ同じであった。(0.6% 図3)。
推定期末在庫量は、国産品が前年同月とほぼ同じであったものの、輸入量の増加を
受けて輸入品がやや上回ったため、合計では9万967トンとなった(3.8%)。

強含みで推移した卸売価格
 8月の枝肉卸売価格(東京市場、省令)は、輸入量が多かったものの、生産量が
かなり減少したため、573円/kg(34.2%)と2年ぶりの高値となった。
 9月に入っても上旬はと畜頭数が回復せず、卸売価格(東京市場、速報値)は
600円台をつける日もあった。その後、涼しくなるにつれ、1日当たりのと畜頭数
が7万頭台に回復すると、価格は10円刻みの低下を示し、月末には安定基準価格
(400円)近くまで下落した。
 10月の卸売り価格(東京・大阪市場、省令)について畜産局では、豚肉出荷頭
数が9月を上回ること、また、季節的な需給動向等からみて、9月を下回る水準で
推移するものと見込んでいる(9月30日公表)。
 今月のトピックス
年度後半の肉豚出荷は2〜5%の見込み
 農林水産省畜産局が9月27日公表した今年度後半の肉豚生産出荷予測によると、
10月以降の肉豚出荷は各月とも2〜5%減少すると見込まれている。
  その大きな要因としては、2月1日現在で母豚頭数が3.3%も減少していること
が挙げられる。
 また、今夏の猛暑により受胎率の低下、産子数の減少が各地から報告されてお
り、今後の生産への影響が懸念される。  
  

〔  鶏  肉  〕 

 

10万トンを下回った生産量
  8月の生産量(農林水産省食肉鶏卵課推計)は9万9千732トンと引き続き前年
同月を下回り(▲4.1)、92年9月以来久々に10万トンを割り込んだ。
 また、今後の生産指標となる8月のブロイラー用ひな出荷羽数は、5千848万3
千羽と前年同月をやや下回った(▲4.8%)。ひな出荷羽数を季節調整済み値で
見ると平成5年から漸減傾向を示している(図1)。
 農林水産省統計情報部は、9月、10月、11月のブロイラーひな出荷の見通しを
それぞれ前年同月に比べて100%、95%、103%と見込んでいる。
 
大幅に増加した輸入
  8月の輸入量は、4万4千212トンと前年同月を大幅に上回り(19.3%)、過去
最高の水準となった(図2)。
 これは、最近の鶏肉在庫量が、低水準であったこと等が原因と見られている。
 
前年を大幅に下回った推定期末在庫量
 8月の推定出回り量は、14万2千523トンと前年同月を上回った(3.2%)。こ
のような需給状況から、推定期末在庫量は8万2千338トンと前年同月を大幅にし
た回った(▲24.6%、図3)。 


8月の卸売り価格は今日強含みで推移
  8月のもも肉、むね肉の卸売り価格(東京)はそれぞれ、511円/kg(1.4%)、
334円/kg(8.1%)と前年同月を上回った。
 9月以降のもも肉、むね肉の卸売り価格(農林水産省「畜産物市況速報」)は
、堅調に推移し、30日には、それぞれ566円/kg、362円/kgと値を付けている。
 
 今月のトピックス
全国ブロイラー生産出荷調整会議の開催について
 9月21日に畜産局食肉鶏卵課は、全国ブロイラー生産出荷調整協議会を開催し
た。この際、関係団体から需給動向について次のような意見がだされた。

生産について、

@生産調整の努力により、需給は改善されてきたものの、価格はそれほど改善さ
れていない、A生産量は、九州等は減少傾向にあり、岩手を中心とした東北地
方は市場立地の優位から、増加傾向にある。

需給について、

@長期的にみると中国からのチルドの輸入は今後増加するとみられ、家計消費
向けが強かった国産と競合する可能性が高い。A競合の面では輸入鶏肉のみな
らず、牛肉、豚肉の他の食肉との間でも競合がおこっている。

輸入について、

短期的には、中国も猛暑の影響により生産性が低下していると見られており、
中国産チルドの急激な輸入増加は見込めないもよう。 

 

 〔 牛乳・乳製品〕 

 

生乳生産に猛暑の影響
 8月の生乳生産量は、69万5千881トンと前年同月をやや下回った(▲4.2%)
。北海道、都道府県別にみると、両者とも前年同月を下回り(それぞれ▲2.6
%、▲5.2%)、特に、都府県は猛暑の影響で大きく下回った。また、生乳生
産量を季節調整済み値でみると、引き続き減少傾向で推移している(図1)。
 
飲用牛乳等向けは好調
 8月の飲用牛乳向け処理量は、45万5千907トンと前年同月をかなり大きく
上回った(13.1%)。
 これを季節調整済み値でみると、引き続き上昇傾向で推移している(図2)。 
 また、飲用牛乳等の生産量を見ると、猛暑等の影響により、需要の伸びが
著しく、先月に引き続き前年同月を大幅に上回った(牛乳13.2%、加工乳19
.2%、乳飲料17.3%、はっ酵乳23.3%、乳酸菌飲料86.2%)。特に加工乳の
伸びが牛乳の伸びを上回った(▲26.8%)。
 
バター、 脱粉の生産量は大幅に減
 8月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、それぞれ5千21トン( ▲48.1%、図
3)、1万3千174トン(▲34.1%、図4)と引き続き大幅に前年同月を下回っ
た。8月のバターの価格は、在庫圧力、需要の低迷により引き続き低下傾向で、
脱脂粉乳の価格は、猛暑による飲用関係の需要が伸びたことから上昇傾向で推
移し前年同月を上回った。
 
 今月のトピックス
最近の乳製品の小売動向
  参考資料で掲載している乳製品の小売動向をみると今夏の猛暑の影響と嗜好
の変化がわかる。昨年はバターが例年の夏よりよく売れた。これは、冷夏でパ
ンや料理等に利用されたためだが、今年は例年のように落ち込んでいる。マー
ガリンも今夏に落ち込んでいることから猛暑でパン食が減ったと思われる。プ
レミアムアイスクリームは、デザート嗜好からパーソナルタイプがかなり伸び
ている。ヨーグルトや乳飲料は全体的に伸びているものの、フルーツタイプ等
の甘いものは伸びが止まっている。一方、ヨーグルトでは、猛暑の影響でドリ
ンクタイプがかなり伸びている。消費者の嗜好にあった商品開発の努力がまだ
まだ強く望まれる。

 

〔  鶏  卵  〕 

 

依然として前年を下回って推移するひな出荷羽数
 8月の採卵用ひな出荷羽数は、765万5千羽と前年同月をやや下回った(▲3.3
%)。農林水産省統計情報部は、9月、10月、11月のひな出荷羽数の見通しを前
年比べてそれぞれ91%、90%、91%、といずれも下回ると見込んでいる(図1)。
  一方、8月の札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5都市の鶏卵市場における出
荷量は、3万4千987トン(2.3%)と前年同月をわずかに上回った。
強含みで推移した8月の卸売り価格
 8月の卸売り価格 (東京平均) は、 猛暑の影響で生産量が低迷したこと等に
よりM規格以上を中心に強含みで推移し、156円/kgとなった(図2)。
9月も引き続き堅調で推移したことから、平均市場価格が195円/kgとなり、生産
者への補てん基準価格(163円/kg)を上回ったことから、今年度初めて鶏卵の基
金の補てんが見合わされた。 基金による補てんは、4月から8月まで連続して実
施されてきた。
 
 今月のトピックス
全国鶏卵需給調整協議会の開催
 9月21日に畜産局食肉鶏卵課は、全国鶏卵需給調整協議会を開催し、
6年度の鶏卵生産見通しを約254万トンと発表した(表)。
この際、関係団体から生産動向等について、次のような意見がだされた。
 
  @ 猛暑の影響で卵サイズや産卵率の低下が見られた。
 A 資金繰りの悪化し、強制換羽での対応によりひなの導入が減少している
   ことから、生産量の回復は遅れる見込みである。
 B 適正な需要量に基づいて生産量を決定すべきである。
 C 強制換羽が原因で、卵質の低下や衛生的問題等が発生している。
 
  

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