◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

  一石四鳥の林畜複合経営

                                                          (宮崎県 黒木 信)

 


 民謡 「ひえつき節」 で知られている宮崎県椎葉 (しいば) 村は、 子牛生産農
家が多いが、 子牛価格の低下、 後継者不足、 高齢化などで農家戸数は減少して
きている。 
 
  そこで同村では昭和62年度から 「里村利用促進対策事業」 を導入し、 現在26
戸が約50qの椎茸生産用原木になるクヌギ林に137頭の繁殖牛を放牧している。 
 
 効果としては、 @牛にかかる手間が大幅に削減できること (世話をする時間
は一日30分、 毎朝、 洗面器一杯分の飼料を与えるだけ。 夏場は林に下草が生え
ているので塩と水が切れていないか見回る程度) A子牛生産のコストが通常の
半分程度で済むこと (林内に生えている下草は牛の飼料となるので、 下草刈り
などクヌギ造林の手間も省け、 さらに牛の排泄物でクヌギの生育も良好) B繁
殖率が高いこと (子牛生産では一年一産するのが理想であるが、 この林内放牧
ではほとんどの牛が、 それを達成している。 ) C環境保全に有効であること 
(林内放牧では土地を木の根が覆うため土壌流失が少なく、 糞尿はクヌギの栄
養分となるなど、 下水汚染の防止にもなる。 ) である。 
 
 このように、 広い山林へ繁殖牛を放すことにより、 給与飼料の低減と省力化
を図りながら、 椎茸生産用の原木となるクヌギを生産するという林畜複合経営
を堆し進めるこの事業は、 今の畜産に活路を開く低コスト畜産経営の一つの方
向として関係者の期待が高まっている。  
  
 

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