調査報告

外食産業における鶏肉類の使用実態

〜 外食産業鶏肉使用実態調査より 〜

      社団法人 日本食鳥協会  


  この報告は、 社団法人日本食鳥協会が財団法人外食産業総合調査研究センターに委託
して実施した 「外食産業鶏肉使用実態調査」 の結果を取りまとめたものです。  
第1章 調査の概要
1 調査の目的

  これまでの調査で、 外食市場での食肉需要量は、 全食肉流通量の3割近くに達すること
が明らかになったが、 外食市場の食肉需要者として重要なポジションを占めるホテル・旅
館業については、 その需要特性が十分に把握されていないのが現状である。 
   
  そこで、 この調査では、 ホテル・旅館業の食肉需要の特性や仕入れの状況を把握する一
方、 外食市場での食肉販売促進を図ることを目的としている。 

2 調査の方法
(1) アンケート調査
 政令都市の日本料理店、 西洋料理店等の外食産業11業種から無作為に抽出した飲食店等
5千カ所に調査票を送付して行った。 有効回答は795票で、 回収率は15. 9%であった。 

  
(2) 調査期間
 平成5年11月から平成5年12月の間に実施した。 
第2章 鶏肉メニューの位置づけ
 1 鶏肉使用メニュー比率

 メニューは、 日本料理、 中華料理、 西洋料理等に代表される調理、 味付けの種類と、 煮
物、 焼き物、 揚げ物、 炒め物、 蒸し物といった調理手法と食材の組み合わせにより構成さ
れる。 
 
  このメニューの中で、 鶏肉を使用したメニュー、 さらには他の食肉を使用したメニュー
がどのような地位を占めているかを示したのが表1である。 
 
  全体的には、 肉類を使用していないメニューが全メニュー48.2種類中で53.0%と半数以
上を占めており、 残りが食肉を使用したメニューとなっている。 
 
  鶏肉を使用したメニューについては、 業種全体平均では17.0%で8.2種類となっており、 
業種別には、 「その他の飲食店」 の23.0%を除くと、 「ファーストフード」が22.0%と全体
に占める比率が高く、 次いで 「弁当・惣菜メーカー」 が20.0%、 「酒場・ビヤホール」 17.
0%となっており、 これらの業種が鶏肉メニューの占めるウエイトが相対的に高い代表的
な業種となっている。 

 2  「特殊鶏」、 「地鶏」 の理解状況

  最近、 各地の産地あるいは生産者の中に、 従来からブロイラーとの品質差別化を図るた
めに長期飼養を行うことで肉質の改善を図り、 産地銘柄化を進める動きが活発化しており、 
(社)中央畜産会の調べによれば、 平成4年現在で60銘柄が確認されている。 
 
  この調査でも、 使用鶏肉の種類を正確に把握するために、 国産若鶏 (ブロイラー専用種
を短期飼養したもの)、 特殊鶏 (ブロイラー専用種を国産若鶏と異なる飼料で飼養したり、
特殊な飼養を行ったもの)、さらに地鶏 (在来のコーチン、比内鶏、軍鶏等を100日以上飼養し
たもの)の定義を、調査対象者が十分に理解しているかどうかを把握する調査を行った。 

 表2は、 上述の3つの違いを理解しているかどうかを示したものであるが、 「国産若鶏」 
については、 総回答者数765のうち60.6%の回答者が 「知っている」 と回答しているが、 「
特殊鶏」 になると24.3%と全体の四分の一程度の理解状況に留まっている。 また、 「地鶏」 
については全体の50.4%が 「知っている」 と回答しており、 「特殊鶏」 よりは理解度が高い
実態となっている。   
第3章 鶏肉の仕入実態
  
1 外食産業における鶏肉の仕入規模
  
  表3は、 業種別にみた鶏肉の店舗当たり、 年間仕入量を示したものである。 「国産若鶏」 
の業種全体平均での店舗当たり年間仕入規模は687.4kgであり、 業種別には「ファーストフ
ード」 が2,312.9kgと最も多く、 次いで 「ファミリーレストラン」 が1,797.6kg、 「弁当・
惣菜」 が1,865.4kgとなっており、 逆に少ない業種としては、 「割烹・料亭」 が213.3kg、 「
西洋料理店」 が245.8kg、 「日本料理店」 が254.8kg、 「そば・うどん店」 が251.6kgとなって
いる。 このように業種別に仕入規模をみていくと、 鶏肉メニュー数の少ない業種でやはり
仕入規模も小さい実態となっている。 
  
   「輸入ブロイラー」 になると、 業種全体の平均仕入規模は869.0kgと他の鶏肉に比べ多く、 
業種別には 「ファミリーレストラン」 が2,078.3kgと最も多く、 次いで「ファーストフード」
と 「弁当・惣菜メーカー」 が1,700kg台の仕入規模を示している。 逆に、 仕入規模が小さい
業種としては 「日本料理店」 が165.2kg、 「そば・うどん店」 211.8kg、 「西洋料理店」219.5kg
となっている。 


2 仕入形態別の動向
 
(1)  生鮮・冷凍別の仕入動向
  
   図1は、 鶏肉の種類別に、 生鮮・冷凍別の仕入店舗比率を示したものであるが、 これに
 よると、 生鮮の割合は 「国産若鶏」 (53.4%)、 「特殊鶏」 (47.7%)、 「地鶏」(66.7%)とい
 ったように、 国内で生産された鶏肉については 「生鮮物」 を仕入れている店舗が多く、 逆
 に 「輸入ブロイラー」 になると 「生鮮物」 はわずかに4.8%しかなく、 81.3%とほとんどが
  「冷凍物」 を仕入れている実態となっている。 
 
   このように、 食肉の中で品質劣化が早い鶏肉の場合には、 温度管理技術が進展した現在
 であっても輸入ブロイラーは、 「冷凍」 での扱いがほとんどであり、 高品質=生鮮といった
 一般的な認識がある中で、 国産鶏肉は輸入ブロイラーに対して優位な立場にあることにな
 る。 
 
   次に、 業種別に生鮮・冷凍別の仕入状況をみていくことにする。
     
  初めに 「国産若鶏」 の仕入形態を表4でみると、 生鮮の割合は 「日本料理店」 (61.9%)、
 「西洋料理店」 (63.6%)、 「中華料理店」 (61. 7%)、 「割烹・料亭」 (71. 4%)、 「酒場・ビ
 ヤホール」 (59.3%) といった5業種では 「生鮮」 での仕入店舗比率が過半数を占めており
 、 特に 「割烹・料亭」 で比率が高い実態となっている。 それに対して「冷凍」 での仕入店舗
 比率が高い業種としては、 「その他飲食店」 (43.2%)、 「弁当・惣菜メーカー」 (36. 9%)、 
 「そば・うどん店」 (37.8%) といった3業種である。 
  
   「輸入ブロイラー」 については、 冷凍で仕入れている場合が多く、 特に 「西洋料理店」(95
 .7%)、 「酒場・ビヤホール」 (81.3%)、 「ファミリーレストラン」 (84.6%)、「その他飲食店
 」 (88.0%)、 「弁当・惣菜メーカー」 (90.2%) の5業種では80%以上のほとんどの店舗が
 冷凍での仕入れと回答している。 

 (2) 部位別の仕入動向

   鶏肉の仕入れが認められる店舗が、 どの様な部位を主に仕入れているかについてまめた
 のが図2である。 鶏肉は大きくは、 モモ肉、 ムネ肉、 ササミ、 手羽元、 手羽先、 肝、 砂肝、
 心臓等の内蔵類に分類できる。 このうちモモ肉、 ムネ肉といった正肉の需要特性としては、 
 従来から、 味が淡泊で白身のムネ肉よりは、 皮下脂肪が比較的多く、 赤みで味が濃厚なモ
 モ肉の方が、 用途が広いことにより需要が強いといわれてきたが、 モモ肉の仕入割合は 「
 国産若鶏」 (75. 1%)、 「特殊鶏」 (56. 8%)、 「地鶏」 (68. 6%)、 「輸入ブロイラー」 (77.
 5%) と、 やはり 「モモ肉」 を仕入れている店舗比率が 「ムネ肉」 を仕入れている店舗比率
 より高い結果を示しいる。 
 
   部位別仕入状況を業種別にみると表5のとおりである。 
   「国産若鶏」 についてみると、 「モモ肉」 についてはすべての業種で60%以上の比率を示
 しているが、 特に 「日本料理店」 (85.7%)、 「酒場・ビヤホール」 (81.5%) では80%以上
 の店舗が 「モモ肉」 を仕入れていると回答している。 
 
   「ムネ肉」 については、 「ファーストフード」 (52.6%)、 「ファミリーレストラン」(69.2
 %)の2業種では 「モモ肉」 を仕入れている店舗比率を上回るまでには至っていないもの
 の、 それでも半数以上の店舗で仕入れている。 
 
   「手羽先・元」 と 「内臓」 については、 焼き鳥を主たるメニューとして提供している 「
 酒場・ビヤホール」 での仕入店舗比率が高く、 前者が46.3%、 後者が25.9%となっている。 
 
   「輸入ブロイラー」 では、 「国産若鶏」 と同様にいずれの業種も60%以上が 「モモ肉」を
 仕入れているが、 特に 「日本料理店」 (81.8%)、 「西洋料理店」 (87.0%)、 「ファミリーレ
 ストラン」 (100.0%)、 「その他飲食店」 (80.0%)、 「弁当・惣菜メーカー」(82.4%) の5
 業種では80%以上の高い比率を示しており、 これらの業種では 「輸入ブロイラー」 = 「モ
 モ肉」 といった実態となっている (表6)。 
 
   また、 「ムネ肉」 については 「ファーストフード」 (61.1%) が 「モモ肉」 と同じ比率で
 仕入れており、 「輸入ブロイラー」 の 「ムネ肉」 を使用する頻度の高い業種であることを
 示している。 

 (3) 加工度合別の仕入動向
 
   鶏肉を仕入れている店舗が、 どのような度合で仕入れているかをみる。 仕入時の加工度
 合を知ることは、 店舗段階での人的・物的な処理能力やニーズを知るだけでなく、 産地段
 階における今後の処理加工体制の整備にも関係し、 重要な要素といえる。 
 
   図3は、 鶏肉の店舗での仕入形態を種類別に整理したものである。 これによると、 「国産
 若鶏」 で60.8%、 「地鶏」 で53.3%、 「輸入ブロイラー」 で58.9%、 「合鴨」 で60.9%と、 
 これら4つの鶏肉では半数以上が 「部分肉」 で、 「モモ肉」 を主体とした必要な部位だけを
 仕入れている実態を反映し、 「部分肉」 での仕入れが多い。 
 
   次に、 業種別に仕入時の加工度合を整理してみると、 「国産若鶏」 の場合 (表7)、 「部分
 肉」 での仕入店舗比率が特に多い業種としては 「日本料理店」 (69.0)、 「西洋料理店」(68.2
 %)、 「そば・うどん店」 (72.2%) の3業種では70%前後の高い比率を示している。 
 
   と畜した後に内臓だけを除いた状態の 「中抜きと体」 での仕入店舗比率が比較的高いのは
 「中華料理店」 (25.5%) であり、 その他の業種では、 仕入れが認められても10%以下となっ
 ている。 
 
   また、 唐揚げ用あるいはチキンカツ用等の 「用途別カット」 形態での仕入れについては、
 「割烹・料亭」 (23.8%)、 「ファミリーレストラン」 (23.1%)、 「弁当・惣菜メーカー」 (21.2
 %) の3業種での比率が高いことが特徴的であり、 「半調理品」、 「完全調理品」 といった形
 態での仕入れについては、 「ファーストフード」 での仕入比率が相対的に高い。 
 
   「輸入ブロイラー」 になると (表8)、 基本的には 「部分肉」 での仕入れが主流であるが、
 「中華料理店」 (33.3%)、 「割烹・料亭」 (42.9%)、 「酒場・ビヤホール」 (43.8%)、 「ファー
 ストフード」 (33.3%) の4業種ではこの形態での仕入店舗比率が50%以下であり、 「中華料
 理店」 ではこの他に 「中抜きと体」 (13.3%)、 「用途別カット」 (20.0%) といった形態での
 仕入れがみられ、 「割烹・料亭」 では 「用途別カット」 (28.6%)、 「酒場・ビヤホール」 では
  「用途別カット」 以外に 「半調理品」、 「完全調理品」 での仕入れといったように多様な形態
 での仕入れがみられ、 「ファーストフード」 でも同様の傾向がみられる。
 第4章 外食産業からみた鶏肉の評価
   この調査では、 国産鶏肉に対する非価格面の問題についても調査した。 4段階評価法を採  
 用したが、 「分からない」 を想定し、 別途回答できる選択肢も設けた。 
   
   分析に当たっては、 4段階評価法にそれぞれ得点を与える方法をとり、 「そう思う」 には
 4ポイント、 「どちらかといえばそう思う」 に3ポイント、 「どちらといえば当てはまらない」   
 に2ポイント、 「そうは思わない」 には1ポイントを与え、 「分からない」 と 「不明」 は集計  
 から除外し、 回答総数でそれぞれのポイントに乗じた総和を除して、 それぞれのポイントを  
 算出した。    
   なお、 各項目は、 「生産技術」、 「カット技術」、 「国産生鮮鶏肉」、 「国産冷凍鶏肉」、 「輸入
 ブロイラー」、 「需要開拓」 の6つの側面ごとに設定した。 
   
   表9は、 予め設定した35項目について、 評価ポイントの高い順に並べ変えたものである。 
   
   これによると、 評価ポイントが大きい項目としては、 「生産情報・商品情報が少ない」 (3.
 41)、「産地、 問屋から新しいレシピ提案がなされない」 (3.31)、 「飼養の特徴が不明確である
 」 (3.06)、 「国産食鶏は販売を促進しようという努力が生産者や問屋側にはみられない」 (3.
 05)、「輸入ブロイラーの方が量や価格が安定している」 (3.04)、 「国産食鶏は産地による個性
 化が遅れている」 (2.94)、 「輸入ブロイラーの方が必要な部位だけを仕入れることが容易で
 ある」(27.1)、 「輸入ブロイラーの方が仕入計画が立て易い」 (2.69)、 「特殊鶏の特徴が不明
 確でお客の評価が得られるメニュー開発が難しい」 (2.68)、 「特殊鶏、 地鶏は用途別カット
 や仕様書発注に応じてくれる業者が少ない」 (2.64)、 「輸入ブロイラーの方が用途別カット
 や仕様書発注への対応が進んでいる」 (2.56)、 「国産鶏肉は産地により品質が不均一である」
 (2.51) と、 この12項目であり、 いずれも平均以上の評価ポイントとなっている。 これをみ
 ると上位項目に 「需要開拓」 に関する全ての項目が入っており、 この面については多くの飲
 食店で問題意識が強いことが分かる。    
   
   次いで、 特徴的な点としては、 上位に占める項目が多いのが 「輸入ブロイラーとの比較」 
 面に関する4つの項目が含まれており、 使い勝手、 安定性の面で高い評価が認められている。 
   
   また、 国産鶏肉については、 特殊鶏の特徴が不明確であるとか、 特殊鶏、 地鶏の用途別カ
 ット等の対応が弱いといった見方も飲食店サイドで強く持っていることが分かる。 
   
   評価ポイントが小さい項目としては、 「国産鶏肉はサイジングの面で使いづらい」 (1.51)、 
 「国産鶏肉はカットの仕方が産地により不統一で使いづらい」 (1.60)、 「国産鶏肉は安全性の
 点から不安がある」、 「国産鶏肉は供給が不安定である」 (1.62)、 「生鮮の国産鶏肉は水っぽく
 品質が悪い」 (1.71)、 「地鶏は若鶏、 特殊鶏と比べ品質の差があまり感じられない」 (1.81)、 
 「地鶏は冷凍が多く、 生鮮が入手できない」 (1.89)、 「国産鶏肉は用途別カットや仕様書発注
 対応ができる業者が少ない」 (1.90)、 「同じ冷凍品であるなら、 輸入ブロイラーの方が品質が
 優れている」 (1.93)、 「国産鶏肉は一般的に肉質という点で課題がある」 (1.97) 等の10項目
 であり、 国産鶏肉の生産技術、 カット技術に関する各項目が多く、 問題意識が少ない傾向と
 なっている。 また、 「地鶏」の品質や生鮮での入手についても問題視する飲食店は少なく、 「
 国産鶏肉は仕様書発注等の対応が弱い」 とか、 「冷凍であれば輸入ブロイラーの方が品質が優
 れている」 といった見方もあまりされていない実態となっている。 
第5章 国産鶏肉の需要拡大の方向  
1 外食向け規格の構築
   現在、 鶏肉取引において使われている規格は、 産地ないしは業界内で決められた規格であるが 
 、 外食産業の台頭の中で見直しが必要な時代を迎えている。 また、 最近では、 スーパーマーケッ 
 トでもこれまでより、 小さな規格の商品を要求するケースが増えてきている。 
  
   これまでの産地の事情を前提とした規格と、 外食産業を前提とした規格では、 同じようにみえ 
 て異なる場合があり、 生産者との間で話がかみ合わない場合がある。 外食向けの規格といった場 
 合には、 従来からのフレッシュ中心の規格から、 フローズン中心の規格へのシフトが必要となっ 
 てこよう。 すなわち、 高品質のフローズン流通を輸入品に対抗していかに構築していくかが、 国 
 産鶏肉、 中でも若鶏流通の課題となってくるが、 冷凍品を冷蔵の状態で流通させるとピースとピ 
 ースが付着してしまうために、 その都度全体を解凍する必要があることから、 ピース単位で冷凍 
 することが必要になる。   
   外食産業が、 鶏肉に対してどのような規格を望むかは、 今後、 各方面からの具体的な検討が必 
 要である。 

2 外食向け流通を含む流通の見直し  

   現在、 国内の鶏肉流通は、 岐路に立たされているといえる。 その背景には、 増大の一途にある 
 輸入品に対応していくために、 安定供給、 品質向上と均一化に加えて、 産地が消費地といかに手 
 を結ぶかという課題がある。 そして、 現在の国内流通では十分な商品情報なり、 レシピ情報が伝 
 わっておらず、 問屋など流通担当者が本来担うべき機能を発揮していない (産地と消費地をマッ 
 チングする力を持っていない) との評価から、 流通の見直しが問われている。 
  
   アメリカの場合、 末端供給まで一貫して行っているので、 消費側のニーズに対応して、 求めら 
 れているものを迅速に検討し、 有効であるとみれば直ちに供給していけるような環境が整ってい 
 る。    
   これに対して、 日本では、 各流通段階を別会社が担当しているため、 生産と消費間の連携は、  
 かなりシステマテックにかつ経済的に継続化が可能な仕組みが必要であり、 これを構築する者も 
 、 その仕組みを有効に機能させるために、 かなり意識的な取り組みが求められよう。 しかし、 実 
 態としては生産者は消費面のことを知らず、 消費に近い小売業者や業務筋は生産のことを知らな 
 いといった状況にある。 このような状況下では、 時代が求める商品流通は望めないとの見方があ 
 り、 これが流通見直しのもう1つの背景となっている。 そこではアメリカのバーチュアルインテ 
 グレーションの仕組みの一部を見習った対応も検討課題となってこよう。 それでは、 どのよう 
 な具体的な流通の見直しが求められているかといえば、 1つは時代の流れを直視して、 これまで 
 のフレッシュだけの流通から、 複合流通の仕組みを模索することである。 これには需要サイドが 
 食材の形態を選択し、 使い分ける時代が到来したことが背景にある。 
  
   複合流通の1つは、 先にみた若鶏を中心としたフローズン流通体系の構築である。 従来、 フレ 
 ッシュの状態で消費地に運び、 売れ残ったものを凍結に回すことが行われてきたが、 消費地凍結 
 では品質の劣化を避けることができない。   
   若鶏の産地凍結の実施に当たっては、 US凍結品並みの販売価格で売ることのリスクを回避す 
 るたに、 品質の向上、 特に 「旨味」 を全面に出した訴求が必要不可欠であり、 それを通じて外食 
 業界で国産冷凍若鶏の支持者を作り上げていく努力が求められる。 
  
   複合流通の2つ目は、 銘柄鶏、 地鶏を中心としたチルド流通の見直しとマーケットの深耕であ 
 る。 そこでは、 大型流通とは異なる小回りのきく規模での流通も可能であり、 前者とは全く異な 
 る流通体系が望まれる。   
   なお、 こうした2本建ての流通体系の構築と並行して進めるべきものは、 年間契約に基づく供 
 給体制の可能性の検討なり、 出荷機能の整備である。 輸入品に負けないためには安定供給ととも 
 に価格の安定性が必要であり、 こうした体制づくりは、 外食分野からの国産品評価と結び付くこ 
 とが期待される。  

3 情報提供力の強化 

   国産若鶏の非価格面において、 最も指摘が多いのが 「生産情報」 なり、 「商品情報」 が少ない
 ことである。 この点は多方面から意見をいただいた。 また、 「飼養の特徴が不明確である」 との
 意見や 「販売促進努力」 の不足なども、 いずれも情報不足といった点では同様のグループに含ま
 れる問題である。   
   また、 来るのは 「価格情報」 ばかりであるとの指摘もみられる。 競争が激しさを増している今
 日、 流通の末端ではどんな小さな情報でもほしいといわれているが、 産地からは何の情報も入ら
 ない。 これでは遠く離れた輸出国の方がよっぽど情報量が多いとの評価も聞かれるほどである。 
  
   国内産地が今後、 自らの商品の個性を意識した売り方をしようとしているのであるならば、 こ
 の面でのさらなる工夫が必要である。   
   また、 PRに当たっては従来の消費者向け中心のPR姿勢から外食、 中食等の業務向けへのP
 Rを重視したものへと重点を多少移していくことが必要である。 そこでは、 問屋との友好的な関
 係を前提とした 「旨味」 中心のPRが有効といえよう。 


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