最近の畜産物の需給動向

  
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の参考  
資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季節調整  
は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。  

                                   乳業部、食肉生産流通部、企画情報部

 〔  牛  肉  〕
生産量わずかに減少
 7月の牛肉生産量は、 3万4千825トン (部分肉ベース、 以下同じ) と前年同月
よりわずかに減少した (▲2. 1%、 図1)。 
  生産量の内訳をみると、 和牛については去勢和牛が8千119トン (4. 2%)とや
や増加し、 めす和牛が6千621トン (10. 9%) とかなり増加しており、 依然とし
て続く和子牛価格の低迷等から去勢和牛よりめす和牛の増加率が高い。 
 一方、 乳用牛については、 乳用肥育おす牛は1千385トン、 乳用めす牛が8千897
トン (それぞれ▲8. 2%、 ▲6. 7%) とかなり減少した。 
輸入量はかなり減少
 7月の輸入量については、 冷蔵品は2万1千946トン(▲11.3%)、冷凍品は2万
4千432トン (▲8.7%)となり、 合計では4万6千593トン (▲10.0%、図2、3)
と3月から5月の大量の輸入の影響もあり2カ月続けて減少した。 
  事業団の調査による8月の輸入見込数量は、 冷蔵品2万8千トン、 冷凍品2万
トン、 合計4万8千トン前後と見込まれ、 また、 9月については、 豪州の港湾ス
トライキの影響により8月よりも減少し、 4万4千トン前後(冷蔵品2万4千トン
、 冷凍品2万トン) になるものと見込まれている。 
 
期末在庫は引き続き9万トン台
 7月末の推定期末在庫は、 9万4千2トン (2.6%、図4)と3カ月連続して9
万トン台となった。 内訳は、 輸入品が8万2千348トン(2.5%)、国産品が1万1
千654トン (3.0%) である。 
 7月の推定出回り量は、 輸入量増加のため輸入品が4万9千850トン(9.0%)と
引き続きかなり増加していることから、 8万5千123トン( 6.0%、 図5)となっ
た。
省令価格は千円台に (8月速報値)
 7月の省令価格 (東京市場、 以下同じ) は、 995円/sと前年をかなり下回
ったが (▲6. 4%、 図6)、 8月の省令価格 (速報値、 瑕疵のある枝肉を除く)
は、 1,023円/sとなった。 
 8月の東京市場では、 景気の上昇傾向もあり、 去勢和牛は 「A−5」 で2千
688円 (3. 8%)、 「A−4」 で2千9円 (5. 0%) となった。 
 また、 7月から8月上期にかけての輸入牛肉価格 (国内仲間相場) は、 北米
産のロインについては、 好天による焼き肉需要等により冷蔵品、 冷凍品ともに
価格は前回同期より上昇した。 豪州産の冷蔵品は、 かた、 ももとも下げており、 
同冷凍品ももについては値を上げている。 
 
 〔  肉 用 子 牛  〕
 
黒毛和種の取引価格は依然として低迷
 7月の黒毛和種の子牛取引価格は、 3万7千144頭 (1.4%) と依然多いこと
と、 肥育農家の収益性が引き続き悪いこと等により、 取引価格は雌雄平均で28
万2千円/頭 (▲10. 3%) とかなり値を下げた (図7)。 8月の価格 (農林水
産省統計情報部、 子牛取引情報、 9月6日現在) では29万9千円/頭とわずか
に値を上げた。 
乳用種も大幅に下落
 7月の乳用種の子牛取引頭数は、 3万919頭 (36.4%) と前年を大幅に上回
ったが、 取引価格については、 輸入量増加に伴う枝肉価格の低下等により雌雄
平均で5万6千円/頭 (▲37. 9%) と大幅に値を下げた(図8)。 8月の価格
(農林水産省統計情報部、 子牛取引情報、 9月6日現在)は5万5千円/頭とな
っている。 
 乳用種のヌレ子の価格は7月が4万8千円/頭 (▲20. 5%)、8月の速報値
(9月10日現在) では4万3千円/頭となっている。 
 今月のトピックス
農業構造動態調査 (基本構造) 結果概要より
 農林水産省は8月24日に平成6年農業構造動態調査 ( 基本構造) 結果概要を
公表した。 それによると、 6年1月1日現在の総農家数は364万4千戸で前年に
比べて4万6千戸 (▲1. 2%) 減少した。 このうち、 単一経営農家 (農産物総
販売金額のうち主位部門の割合が80%以上を占める農家) は200万6千戸で、 前
年に比べて5万7千戸 (▲2. 8%) 減少した。 
 農業労働力保有状態をみると、 農業専従者なしの割合は肉用牛が36. 0%、 養
鶏4. 4%、 養豚3. 2%、 酪農2. 9%となっており、 肉用牛農家は他の作目また
は他産業へも従事している割合が高い。 次に、 農業専従者が女子だけの割合は、 
肉用牛が14. 6%、 養鶏10. 4%、 養豚7. 1%、 酪農3. 9%と肉用牛農家の割合
が高く、 反対に男子農業専従者がいる割合は、 肉用牛が49. 3%、 養鶏85. 2%、 
養豚89. 7%、 酪農93. 1%と肉用牛農家の割合が最も低くなっている。 
 
〔  豚 肉  〕
 
10%も前年を下回った生産量
 6年7月の国内生産は、 母豚の飼養頭数の減少に加え、 猛暑による出荷の遅れ
などから、 と畜頭数が139万7千771頭 (▲9.1%)、 生産量 (部分肉ベース) が
7万1千817トン (▲10. 2%) と前年同月をかなりの程度下回った (図1)。 
 8月のと畜頭数 (速報値) は、 7月に引続き147万1千900頭と前年同月をや
や下回っている (▲3. 8%)。 農林水産省畜産局では、 9月についても、 155万
2千頭と前年同月を下回ると見込んでいる (▲3%)。 
前年をかなり上回る輸入量
 7月の輸入量は、 4万1千970トンと前年同月をかなり上回った(8.6%、図2)。
内訳を見てみると冷蔵品が1万908トンと前年同月をやや下回った (▲5. 2%) 
ものの、 冷凍品は台湾からの輸入が増えたため、 3万1千62トンと前年同月を
かなり大きく上回った (14. 5%)。
前年をやや下回る推定出回り量
 7月の推定出回り量 (部分肉ベース)は、 輸入品が4万3千723トンと前年同月
をやや上回ったものの (5.6%)、 国産品がかなり減少したため、 合計では11万
6千300トンと前年をやや下回った (▲4.9%、 図3)。 推定期末在庫は、 国産品、 
輸入品とも前年同月と大きな変化はなく、 9万3千275トンとなった (1.9%)。 
強含みで推移した卸売価格
 2月以降前年を下回る水準で推移してきた枝肉卸売価格 (東京市場、 省令)は、 
6月に前年並みに戻した後も、 と畜頭数の減少に加え、 猛暑による個体重量の
減少などから供給が減少し、 7月は520円/sとなった (0. 8%)。 
 8月に入っても猛暑は衰えず、 需給基調に大きな変化が見られなかったこと
から、 東京市場の卸売価格 (速報値) は2年ぶりに573円と高い水準となった 
(11%、 図4)。 
 9月の卸売価格 (東京・大阪市場、 省令) について畜産局では、 肉豚出荷頭
数が8月を上回ると見込まれ、 また、 季節的需給動向等からみて、 8月を下回
る水準で推移するものと見込んでいる (8月31日公表)。
 今月のトピックス
供給減の中、 するすると値を上げた卸売価格

 猛暑に見舞われた今年の夏は、 豚価にも大きな影響を与え、 7月、8月と久
しぶりに500円を超える相場展開となった。 その要因は供給量の減少に言いつ
くされ、 特に7月の生産量は対前年比で10. 2%も減少し、 価格に大きな影響
を与えた。 
 国内生産量減少の要因としては、 母豚の飼養頭数が減少していること、 猛暑
により生育が遅れ個体重量が小さくなっていることなどが挙げられる。 さらに、
国内相場に影響を与えるチルドの輸入量が1万1千トン前後と落ちついた動き
であったことも大きな要因である。   
  

〔  鶏  肉  〕 

 

前年をかなり下回った生産量
  7月の生産量 (農林水産省食肉鶏卵課推計)は、 猛暑の影響から10万6千5
トンと前年同月をかなり下回った (▲7. 6%)。 生産量を季節調整済み値でみ
ると、 4年の春以降緩やかな減少傾向を示している (図1)。 
 また、 今後の生産指標となる7月のブロイラー用ひな出荷羽数は、 5千526
万羽と前年同月をかなり下回った (▲9. 2%)。 
 農林水産省統計情報部によると、 8月、 9月、 10月のブロイラーひな出荷
羽数は、 それぞれ前年と比べて、 94%、 99%、 94%といずれも下回ると見ら
れており、 年末の需要期にかけての生産の動向が気になるところ。 
依然として前年を上回る輸入量
  7月の輸入量は、 3万6千906トンと先月より減少したものの、 依然前年同
月をかなり上回って (7. 9%) 推移している (図2)。 
大幅に減少した推定期末在庫量
 7月の推定出回り量は、 前年同月に比べて、 輸入品は好調である (25. 2%
) ものの、 国産品がかなり減少 (▲7. 3%) したことから、 全体では14万3
千378トンとわずかに減少 (▲0. 4%) した。 推定期末在庫量は、 このような
需給を反映し、 8万726トンと前年同月と比べて大幅に減少した(▲23. 8%)。 
季節調整済み値でみると5年秋以降減少傾向を示している(図3)。 
7月の卸売価格は出荷量の減で強含み
  7月のもも肉、 むね肉の卸売り価格 (東京) はそれぞれ、 490円/s (6.1
%)、 323円/s (20. 0%) となった。 
 8月以降のもも肉、 むね肉の卸売り価格(農林水産省 「畜産物市況速報」)は、
530円/s、 357円/sとそれぞれ値を上げている。 これは、 猛暑の影響でブ
ロイラーがへい死したり、 飼料摂取量の減少による発育不良から出荷量が減少
したためとみられている。 
 今月のトピックス
配合飼料価格の引き下げ

 全農は9〜12月期の出荷分から、 全国・全畜種平均で1,800円/トンの値下
げを決定した。 この要因は、 配合飼料の主原料であるとうもろこしの相場が米
国の豊作予想により大きく下げていることと、 現在の飼料価格設定時の為替状
況に比べ、 円高で推移していることによる。 
 今後、 他の飼料メーカーもこれに追従する可能性があり、 ブロイラーは他の
畜種と比べて、 生産費のうち購入飼料費の割合が高いことから、 生産者にとっ
てはコスト低減を図る上で、 好材料となろう (図4)。 

 

 〔  牛乳・乳製品  〕 

やや減った生乳生産量
 7月の生乳生産量は、 72万7千93トンと前年同月をやや下回った (▲2.6%)
。 北海道、 都府県別にみると、 両者とも前年同月を下回った (それぞれ▲1.2
%、 ▲3. 6%)。 また、 生乳生産量を季節調整済み値でみると、 5年春以降、 
減少傾向で推移している (図1)。 
飲用牛乳等向け処理量はかなり増加
 7月の飲用牛乳等向け処理量は、 48万2千26トンと前年同月をかなりの程度
上回った (9. 5%)。 これを季節調整済み値でみると、 4年末から減少し始め、
5年秋を底に上昇傾向で推移している (図2)。 
 また、 飲用牛乳等の生産量を見ると、 昨年の冷夏に対し、 空梅雨に続く猛暑
等の影響により、 需要の伸びが著しく、 前年同月を大幅に上回っている(牛乳
10. 7%、 乳飲料16. 7%、 加工乳17. 8%、 はっ酵乳21. 8%、 乳酸菌飲料49.
5%)。 特に乳酸菌飲料は暑さの効果に加え、 健康志向を反映してカルシウム強
化、 DHA入の新製品開発や容器デザインの一新、 奇抜なネーミング等が消費
者に注目されたようだ。 
 7月の乳製品向け処理量は、 生乳生産量が減少しているうえに、 飲用牛乳等
に原料乳がかなり仕向けられたことから、 23万2千726トンと前年同月を大幅
に下回った (▲21. 4%)。 
バター、 脱粉の生産量は大幅に減少
 7月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、 それぞれ5千547トン (▲39. 7%、 
図3)、 1万4千181トン (▲25. 7%、 図4) と大幅に前年同月を下回った。 
価格を見ると、 バターは引き続き低下傾向であるが、 脱脂粉乳は前月より25s
当たり40円値を上げ、 上昇傾向で推移している。 
 7千267トン(▲22.2%、図3)と大幅に、脱脂粉乳は、1万6千699
トン(▲11.2%、図4)とかなり大きく前年同月を下回った。価格を見てみる
と、バターは引き続き低下傾向で、脱脂粉乳は5月より25kg当たり20円値
を上げ、上昇傾向で推移している。
 今月のトピックス
日本列島を覆った猛暑
 昨年の冷夏とはうって変わって、 記録的な猛暑が続いたこの夏。 飲用需要が
大幅に伸びて、 暑さによる泌乳量の低下や乳牛の死亡があり生乳生産量が減少
した。         
 このため北海道から本州への生乳輸送量は、 本州の生産減をカバーするため
に7月が45千トン (86%)、 8月が49千トン (84%) と大幅に増加している。        
 また、 9月は学校給食が始まることから56千トンの輸送を計画している。

 

〔  鶏  卵  〕 

ほぼ前年並みであった、 4〜6月の生産量
 4〜6月の四半期の生産量は、 66万4千986トンとほぼ前年並みであった(前
年同期比1. 7%)。 
 一方、 7月の採卵用ひなえ付け羽数は、 卵価が低迷していたこともあって、 
前年同月をかなり大きく下回った (▲11. 8%)。 農林水産省統計情報部は、 8
、 9、 10月のえ付け羽数を前年に比べてそれぞれ97%、 86%、 95%、 といずれ
も下回ると見込んでいる (図1)。 
強含みで推移した8月の卸売り価格
 7月の卸売り価格 (東京平均) は、 猛暑の影響で需要が低下したこと等によ
り、 前月より5円値を下げ134円/sとなった (図2)。 
 8月の卸売り価格 (全農東京M規格の平均価格、 速報値) は、 M規格以上を
中心に強含みで推移し、 145円/sとなった。 これは、 猛暑の影響により採卵
鶏の飼料摂取量が減少し、 生産が落ち込んだことによる。 
 なお、 8月下旬には、 暑さが峠を越えたこと、 夏休みが終りに近づき学校給
食の準備が始まったこと等から需要が引き締まり、 一転、 急反発して値を上げ
ている。  
 
 今月のトピックス
  (株)全国液卵公社は7月末から、 余剰感のあったM規格以下の買い上げに
よる市場隔離を行ってきた。 その後、 需要が回復してきた一方で、 猛暑により
生産が低調であったことから、 8月下旬から大玉を中心として市場価格は上げ
てきており (図3)、 今後は買い上げを見合わせる見込みである。  

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