▲ インタビュー

記録的な猛暑の飲用牛乳とアイスクリームへの影響 

      企画情報部    


  今年の夏は、 全国的に記録破りの暑さとなった。 また、 降水量もかなり少なく、 特に
西日本では水不足が続いている。 この猛暑の影響で搾乳牛へのダメージも心配されてい
る一方で、 飲用牛乳やアイスクリームの消費はかなり伸びており、 一時的ではあるが、 
生乳の需給がひっ迫しているといわれている。 今回は流通の面から、 雪印乳業株式会社
の市乳営業部の渡辺誠課長とアイスクリーム営業部の金沢幸喜課長に、 最近の飲用牛乳
とアイスクリームの消費動向についてのお話を8月26日に伺った。 
1 今夏の猛暑における飲用牛乳等の消費動向
 (雪印乳業株式会社 市乳営業部 課長 渡辺 誠氏に聞く) 
◆ 今年の4月以降の飲用牛乳の出荷・販売の状況、 特に猛暑となった夏場の動き、 さら
    に9月以降の予想をお聞かせ下さい。 

  牛乳の販売状況は、 4、 5月は例年のとおりでしたが、 6月の中旬ころから西日本を中
  心に、 活発になってきました。 特に、 中部、 近畿、 九州から動き始め、 これらの地域で
  は、 6月中旬から7月の間に一時的に牛乳が不足する事態もあったと聞いています。 6
  月から荷動きが良くなった理由は、 カラ梅雨で既にかなり気温が高かったためと考えて
  います。 
 
  学校が夏休みに入っても、 記録的な猛暑の影響で、 牛乳は2桁の伸びを示しており、 8
  月に入ってもそれは続いています。 
 9月から学校給食が始まりますが、 原料乳の十分な手当ができない状況になれば、 出荷
  調整の可能性も出てくると思います。 これは、 9月の伸びが7、 8月の2桁の伸びを下
  回っても、 5〜10%の伸びであればその可能性はあると考えられます。 

◆ 7、 8月は、 35度を超える日が続きましたが、 暑すぎて牛乳よりもさっぱりした飲料
    がよく売れたということはありませんか。 

  猛暑の影響で、 牛乳は確かに伸びましたが、 清涼飲料はそれ以上に伸びています。 牛乳
  が10%台の伸びなのに対して、 清涼飲料は50%くらい伸びていると思います。 
 
  また、 低価格化の効果もあり100%果汁もかなり伸びています。 差こそあれ、 今年の夏
  は全ての飲料が伸びています。 

◆ 消費者の健康志向を反映して、 ローファットミルクの消費が伸びていると言われて
    いますが、 今年も同様の傾向が続いているのですか。 

  ローファットミルクは、 以前から消費が伸びており、 今年もその傾向は続いています。 
  今年は、 10%台くらいで伸びています。 

◆ 乳飲料、 はっ酵乳の出荷はいかがでしょうか。 特に、 力を入れている商品がありまし
    たら教えてください。 

  この暑さでは飲料だけが伸びると思っていましたが、 はっ酵乳は健康志向にも支えられ
  て、 20%もの伸びが続いています。 
 また、 乳飲料も健康を考えた商品 (カルシウム等を強化したもの) を各社から出してい
  ますが、 雪印で出した新商品は、 ネーミングも好評でかなり伸びています。 

◆ 猛暑により生乳生産量が減少した反面、 牛乳の消費が大幅に伸びたということから原
    料乳の手当にご苦労はありませんでしたか。 

  今年度も計画生産は実施されており、 そこに猛暑で乳牛もまいって、 府県の生乳の生産
  はかなり落ち込んでいます。 地域によっては2割も落ち込んでいるところがあると聞い
  ています。 
  都府県での原料乳の不足を北海道の生乳が補ってくれましたし、 それに夏休みで学校給
  食がなかったことから、 7、 8月は何とか対応できた感じです。 9月には、 一部の県で
  出荷調整をせざるを得ないと言う話も聞こえています。 
 
  加工乳による対応も考えられますが、 はっ酵乳やアイスクリームもかなり伸びており、 
  それらには脱脂粉乳も使われていることから、 牛乳の不足を加工乳でカバーすることも
  なかなかできないでいます。 

◆ 飲用牛乳は、 冷夏、 猛暑など気温に大きく左右される消費傾向にありますが、 この季
    節性を克服するマーケティングは可能でしょうか。
    
  それは、 全体の需要を伸ばすと言うことだと思いますが、 ひとつのメーカーでできるこ
  とではなく、 国や団体が牛乳の栄養等についてもっとPRすることだと思います。 

◆ 最近の牛乳のスーパーでの販売状況はどうですか。 

  猛暑の影響で牛乳の需給がひっ迫したこともあり、 7、 8月のスーパー等での特売の回
  数は減っていると思います。 
 
  また、 消費者の購買傾向として、 価格指向が相変わらず強いと実感しております。 
 
2 最近のアイスクリームの消費動向
 
(雪印乳業株式会社 アイスクリーム営業部 課長 金沢 幸喜氏に聞く) 
◆ 今年の猛暑は、 アイスクリーム類の消費にどのような影響がありましたか。 最近、 特 
    に伸びた商品がありましたら、 その商品の特性を教えてください。  

  まず、 アイスクリーム業界全体では、 4〜6月が105%、 7月が160%、 8月が130%の
  伸びでした。 雪印は、 4〜6月が110%、 7月が160%、 8月が150%で、 業界全体を上
  回ったと思っています。 このアイスクリームの消費の伸びは、 乳脂肪の消費にかなり効
  果があると思います。   
  今年の猛暑により、 かち割りタイプなど氷ものが各社とも昨年の3倍くらいは伸びてい
  ると思いますが、 氷そのものが素材として脚光を浴びてきています。 製造が追いつかな
  い状態ですが、 氷ものの製造の終わりをいつにするか悩んでいるころです。 
 アイスクリームもかなり伸びていますが、 その伸びの要因として、 第一に暑さ、 そして
  需要創造としての新製品の開発も見逃せません。 また、 一方でアイスクリームの売場の
  形態が変わりつつあるということがあります。 コンビニエンスストアの大手であるセブ
  ンイレブンは、 新型のショーケースを導入して、 それを店内の一番いい場所に置いてい
  る。 このようにアイスクリームの商品としての位置づけを強化しており、 今年は、 売場
  創造の元年と考えているようです。 セブンイレブンは、 これで売上げを2倍見込んでい
  るようです。 
 このアイスクリームの売場戦略は、 他のコンビニエンスストアにも波及していくと思い
  ます。  


◆ アイスクリームは、 輸入自由化されて5年目になりますが、 国内のアイスクリーム生
    産にどのような影響がでていますか。  
   
    
  海外からみて日本のマーケットがどのようにみられているかということがありますが、 
  日本のアイスクリーム市場は、 規模では世界で米国に次いで2番目であり、 海外からは
  かなり魅力的に思われているようです。 現在輸入されているものは、  470ミリリットル
  と2リットルのものが主流であり、 輸入先は、 ニュージーランド、 オーストラリア、 シ
  ンガポール、 米国で、 カナダからも少し入っています。 このカテゴリーは、 大手スーパ
  ーのPB等で脚光を浴びていますが、 全アイスクリーム消費の15%を占めるに過ぎませ
  んし、 また、 アイスクリームは商品サイクルが短いこと(3〜4カ月)や菓子・デザート
  タイプのものが主流で、 現時点で海外の生産がそれに対応するのは難しく、 また、 海外
  は、 乳価、 エネルギー、土地等のコストは安価ですが、 冷凍品ということで船賃が高いた
  め、 当分は 470ミリリットルや2リットルのものしか入ってこないので、 すぐに国内生
  産に大きな影響を与えるとは思いません。 しかしながら、 ニュージーランドやオースト
  ラリアの輸出奨励金はCIF価格に影響しますし、 日本の乳業メーカーの海外への技術
  提供により、 将来的には海外の技術向上は国産品に影響を与えると思います。 ですから、
  アイスクリームの風味を左右する原料乳の乳質での勝負と、 生産面では菓子・デザート
  的なもので加工度の高い魅力的な商品作りがますます重要になってきます。
  また、 最近、 フローズンヨーグルトの消費がかなり伸びていますが、 品質管理の問題等 
  から輸入しづらい商品だと思います。  

◆ 最近の脂肪離れの傾向は、 アイスクリームの消費に影響を与えていますか。 
 
  日本の消費者は、 アイスクリームをデザートとして考えていることから、 おいしいもの 
  であれば、 脂肪分の多いプレミアムアイスクリームをよく購入しており、 その販売量も
  伸びています。 毎日飲む牛乳とは違い、 脂肪離れはアイスクリームに影響していないと
  考えています。 現に、 当社が今年から販売している北海道製造限定の商品は、 しっとり
  とした味に仕上がり、 20代の女性や中高年層によく売れていて、 売上げもかなり伸びて
  います。 米国では、 アイスクリームに普通タイプとダイエットタイプがあります。 以前
  にカロリーハーフのものを売ったのですが、 失敗した経験があります。 やっぱり毎日食
  べるか、 デザートとして食べるかの違いがあると思います。 最近のアイスクリームの消
  費傾向として、 輸入ものの安いプライベートブランドとナショナルブランドで単価に100
  円程度の差があると、 消費者はPBに向かうようです。  

◆ 猛暑では、 アイスクリームよりも氷ものがよく売れているとのことですが、 気温とそ 
  の消費にどのような関係がありますか。  

  25℃を超えるとアイスクリーム、 30℃を超えると氷ものと水ものがよく売れるといわれ
  ています。 今年は、 まさにそのとおりとなりました。  
 
◆ 販売チャネルとして、 コンビニエンスストアの力がますます強くなっていると思いま 
    すが、 具体的にはどのような方策をとっていますか。  
    
  アイスクリームの販売戦略にコンビニエンスストアが重要になってきている理由は、 溶 
  けるという商品特性から、 家庭の冷蔵庫代わりのコンビニエンスストアが生活の場の近
  くにたくさんあるという立地条件のためと思っています。   
 今までは、 商品ごとの生産の調整が大変なため、 ひとつの商品ですべての販売チャネル 
  をカバーしようとしていましたが、 最近は大手コンビニエンスストアとの商品共同開発
  も進み、 専用商品が導入されております。  

◆ 暖房の効果や食後のデザートの定着で冬場の消費も伸びてきたといわれていますが、  
    最近のアイスクリームの消費に季節的な特徴はありますか。 
    
 スーパープレミアムアイスクリームには季節性はほとんどみられません。 この商品を購
  入する消費者は、 デザートのひとつと考えており、 パンナコッタやケーキなどと同じよ
  うなものと位置づけています。 また、 最近冬場商品としてクッキーアイスなどの商品も
  あり、 アイスクリーム売場は、 通年型売場として、 活性化されております。 
 (聞き手 企画情報部 村尾誠、 南正覚康人) 

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