オーストラリア人が見た日本の牛肉産業

 

豪州食肉畜産公社   

北アジア部マーケティングコーディネーター      ステファン・ダバー 


 畜産振興事業団では、 オーストラリアの豪州食肉畜産公社 (AMLC) と職員の交換
研修プログラムを実施しています。 今年の3月から8月までの約6か月にわたって、 当
事業団で日本の牛肉産業について研修したAMLCのステファン・ダバー氏に滞在中の
印象についてご投稿いただきました。

 今回、 畜産振興事業団と豪州食肉畜産公社の職員交換研修プログラムに参加すること
ができ、 とても感謝しています。 おかげで、 多くの人に会い、 色々なことを見聞きし、 
日本の牛肉産業の様々な面を勉強することができました。 日本を離れるに当たり、 研修
中に学んだことや感じたことについてまとめてみました。 
1 繁殖技術の発展
 
 日本の生産者が自分達が生産した肉牛からとれた牛肉の品質について強い関心を持って
いることに、 とても驚くとともに、 繁殖技術を高めるために多くの努力が払われているこ
とは、 非常に興味深いことである。 様々な繁殖技術が利用されており、 その一例として、
受精卵移植技術の普及を挙げることができる。 この技術により、 生産者は遺伝的形質の優
れた子牛の生産を増やすことが可能となっている。 
2 生産方法の変化
  
 豪州でも、 これまでマーケットのニーズに応えようと肉牛の改良を進めるため交雑種を
利用してきた。 ここ10年間、 遺伝能力の高い肉牛を導入することによって、 グレインフェ
ッドのみならず、 グラスフェッド用の肥育素牛の能力は著しく向上し、 高品質の枝肉生産
に結びついている。
 
3 消費者ニーズへの対応 

 国によって牛肉に対する消費者の嗜好・要求は違うが、 日本では地方によって、 ときに 
は隣り合う県同士でさえ異なることに驚いた。 肉と言えば牛肉を指すような、 伝統的な牛 
肉消費地域である西日本と、 逆に肉と言えば豚肉を指す東日本との違いは歴然としている。 
この東日本の牛肉に対する 「新しい」 消費者は、 牛肉消費に長い歴史を持つ西日本の人々 
とは自ずと違った嗜好・要求を持っていることであろう。 
 
  このような地域によって異なる牛肉に対する消費者の嗜好・要求は、 生産者に市場獲得
のための良い機会を与えてくれる。 この違いにもっと注目すれば利益を最大にするための
生産に的を絞れることとなるだろう。 驚いたことに生産者は迅速にこの変化に対応してい
るのである。 
 
  私が聞いたところでは、 牛肉の 「新しい」 消費者を創出したのはスーパーマーケットな 
どの量販店の力によるところが大きいようだ。 牛肉は消費者にとって毎日食卓に上る食材 
となってきている。 このことは、 牛肉産業に携わる者にとって挑戦する場が増えてきてい 
ることを意味しているのではないだろうか。

 日本での滞在期間中、 貴重な経験をすることができた。 日本でも、 豪州でも肉牛生産者
は同じような考え方を持っているということを知ったのはとても興味深い発見である。 人
なつっこく、 人が困っていれば知らんぷりできないような豪州の生産者気質は、 日本の農
村でも同じように感じられた。 日本、 そして豪州の牛肉産業は健康によく栄養のバランス
のとれた牛肉を供給し、 消費者のニーズに応えていかなければならない。 日本人の食生活
における牛肉消費量の増加は、 日本と豪州の両国の牛肉産業に多様なマーケットのニーズ
に応じるための好機を与えてくれると信じます。 

 最後に、 多くの方々がお忙しいにもかかわらず、 日本の牛肉産業が持つ多様な面、 牛肉
生産の場で今起こっている変化について教えていただいたことについて改めて御礼申し上
げます。 
 (邦訳‥企画情報部) 

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