◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

一産取り肥育経営の優良事例

(鹿児島県 福倉 清美)

  鹿児島県揖宿郡頴娃町で黒毛和牛の一産取り肥育経営に取り組むUさん(70
才台)は、昭和58年に35頭の雌子牛を導入し一産取り肥育を試みたが、 子牛の
下痢に悩まされ、 一時は中止した。 しかし、 肥育素牛価格が高騰した平成元
年から人工哺育を取り入れた一産取り肥育経営を本格的に再開した。 
 
  現在は、 肥育牛160頭、 一産取り用雌牛60頭、 常時220頭の規模で20才の後
継者とともに、 経営に取組んでいる。 

(1) 一産取り用雌牛の授精
  生後12〜13月齢で授精し、 14月齢になっても受胎しない場合は肥育へ仕向
   ける。  (授精回数は1〜2回) 

(2)  導入から分娩までの雌牛管理
  乳量確保と分娩後の事故防止などのため、 導入時 (9月齢)にビタミンADE
  剤を50グラム、 授精前に100グラム、 分娩前に100グラムを給与する。 飼料
  給与は、 繁殖牛としては過肥ぎみ、 肥育牛としては少し痩せているぐらい
  の状態を目安としている。 

(3) 子牛の人工哺育と育成
 母牛の初乳を搾って人工哺乳するが、 不足する場合は酪農家から譲受けて
  凍結保存した乳牛の初乳を解凍して給与する。 分娩後1週間程度は代用乳
  (乳牛の初乳) を、 その後、 離乳までは人工乳と乾草を給与する。 
 飼育管理は生まれたその日から離乳 (60〜70日齢) まで自家製のカーフハ
  ッチで行い、 離乳後から160日齢までスーパーハッチ (数頭が収容可能な
  もの)で管理する。 

(4) 分娩後の雌牛の肥育と成績
 濃厚飼料の給与量は分娩後40〜50日頃が最大となり、 1日当たり9キログ
  ラム程度である。 出荷時期は分娩後7〜8月後で、 生後30〜32月齢である。 
 これまでに一産取り後の雌牛を155頭出荷し、 平均枝肉重量は410キログラ
  ム、 枝肉単価1, 500円程度で販売している。 

(5) 事故の状況
 これまでに214頭の子牛を分娩し、 うち6頭が事故 (事故率3パーセント) 
  で死亡している。 その内訳は、 流産1頭、 死産1頭、 下痢2頭、 窒息死2
  頭であり、 平成5年度以降、 事故は発生していない。 
 
  一産取り肥育は飼養期間が長く、 投下資本の回収に長期間を要するととも
に、 労働面でも子牛の哺育などきめ細かな管理が要求されるが、 大幅なコス
トの引下げが期待できる肉用牛生産方式である。 
  
 

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