最近の畜産物の需給動向
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。 原データは、 巻末の
参考資料を御参照願います。 なお ( ) 内数値は、 対前年増減率です。また、 季
節調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。
牛肉及び豚肉の数量は、部分肉ベースです。
乳業部、食肉生産流通部、企画情報部
〔 牛 肉 〕
2月の生産量 前年よりやや増加
2月の牛肉生産量は、 3万2千534トンと前年同月よりやや増加した (3.4%、
図1)。 その内訳をみると、 去勢和牛は6千962トン (7.0%)、 めす和牛は5千
472トン (6.4%) とかなり増加、 乳用肥育おす牛は1万758トン (4.1%)とや
や増加したが、 乳用めす牛が8千216トン (▲3.8%) と減少した。
2月の輸入量及び3〜5月の輸入見込み数量 2月は前年を大幅に上回る
2月の輸入量は、 4万66トンと前年をかなり上回った (9.3%、 図2、 3)。
内訳をみると、 チルドは2万2千747トン (▲2.9%)、 フローズンは1万7千
193トン (31.0%) であり、 フローズンの中ではハンバーグ等の加工用牛肉が
含まれる 「その他」 や焼き材等に使われる 「ばら」 が伸びている。
品目別輸入動向調査によると、 3月の輸入数量は約3万9千トン(チルド約2
万8千トン(うち、 豪州産1万8千トン、 米国産1万トン)、 フローズン約1万
1千トン (うち豪州産4千トン、 米国産7千トン)、 4月は約5万6千トン(チ
ルド約2万9千トン(うち豪州産1万9千トン、 米国産1万トン)、 フローズン
約2万7千トン (うち豪州産8千トン、 米国産1万9千トン)と、また、 5月は
、 冷蔵品、 冷凍品とも4月より減少するものと見込まれる。
2月の推定出回り量 前年よりかなり増加
2月の推定出回り量は、 国産品、 輸入品とも増加したことにより7万6千890
トンなった (7.5%、 図4)。
2月の推定期末在庫量は8万391トンとなった (2.3%、 図5)。
省令価格 2月は前年をかなり下回る
2月の省令価格 (東京市場) は、 998円/kgと前年をかなり下回った(▲9.4
%、 図6)。 去勢和牛の枝肉価格 (東京市場) についてみると、 各規格とも前
年を下回ったが、 A3、 A2については、 上場頭数の増加 (A3が14.3%、
A2が26.6%) により、 またA5、 A4については、 需要の低迷に加え阪神
・淡路大震災の影響による催物等の自粛によるものと思われる。
3月の省令価格 (東京市場速報値、 瑕疵のある枝肉を除く。) は、 1,012円/
kgなり前年をわずかに下回るものの再び千円台となった。 去勢和牛の枝肉価格
(東京市場、 速報値) は、 A5が2,565円/kg、 A4が1,891円/kg、 A3が
1,470円/kg、 A2が1,060円/kgとなった。
3月上期の輸入牛肉仲間相場 豪州産チルドはロイン系を除き値を下げる
3月上期の輸入牛肉の仲間相場は、 2月下期に比べ北米産のチルドはわずか
に値を上げ、 フローズンはチャックリブを除きわずかながら値を下げた。
2月上期で全品目で値を上げた豪州産チルドはロイン系を除き値を下げ、 フ
ローズンは2月上期とほぼ同程度となった。
〔 肉 用 子 牛 〕
黒毛和種の取引価格 2月は前年を大幅に上わる
2月の黒毛和種の子牛取引頭数は2万7千363頭 (▲1.5%)、 取引価格 (雌
雄平均) は35万8千円/頭 (11.2%、 図7) となった。 6年9月以降取引価
格は前年を上回って推移しているが、 これは主に、 枝肉価格は低下傾向にある
ものの、 価格がかなり低落してきた時に導入された素牛の出荷時期を迎えてい
ることから肥育経営の収益性が改善されつつあり、 同経営の導入意欲が強いた
めとみられる。
3月の取引価格 (速報値、 4月10日現在) は、 35万3千円/頭となった。
乳用種取引価格 ヌレ子価格 (2月) は引き続き前年を上回って推移
2月の乳用種の子牛取引価格 (雌雄平均) は、 5万9千円/頭 (▲27.2%)
と引き続き前年を下回っている (図8)。 3月の同価格 (速報値、 4月10日現
在) は、 5万6千円/頭となった。
2月の乳用種のヌレ子の価格は5万7千円/頭 (13.6%) と6年12月以降
前年を上回って推移した。 3月の同価格 (速報値、 4月10日現在) は、 6万
2千円/頭となった。
6年肥育牛 (去勢若齢肥育) の生産について
農林水産省統計情報部は、 3月16日に平成6年の肥育牛 (去勢若齢肥育)の
生産費を公表したが概要は以下のとおり。
去勢若齢肥育牛1頭当たり生産費 (副産物価額差引) は804,146円 (▲2.2
%)と前年をわずかに下回った。 これは主に、 もと畜費が導入時期 (主に平成
4年1月〜12月) に安かったこと(478,987円、 ▲4.1%)、 飼料費が円高によ
り配合飼料等の価格が低下したこと (204,162円、 ▲1.5%) 等による。 特に
約6割を占めるもと畜費の低下により生産費も低下したが、 去勢和牛の枝肉
市況がそれ以上に下がり (肥育牛1頭当たりの粗収益、 812,323円、 ▲5.5%
)、 1頭当たりの所得は65, 415円 (▲28. 1%) と前年を大幅に下回った。
1頭当たり生産量 (単位:円)
|
平成5年
|
平成6年
|
生産費(副産物価額差引) |
822,509 |
804,146 |
うちもと畜産 |
499,211 |
478,987 |
飼料 |
207,222 |
204,162 |
支払利子・地代参入生産費 |
831,673 |
813,137 |
全算入生産費 |
852,951 |
834,261 |
粗収益 |
859,735 |
812,323 |
〔 豚 肉 〕
2月の生産量 引き続き前年同月をやや下回る
2月の国内生産は、 母豚の飼養頭数の減少などから、 と畜頭数が142万9
千822頭 (▲4.4%)、 生産量が7万5千652トン(▲3.6%) と前年同月をや
や下回った (図1)。
3月のと畜頭数 (速報値)は、 158万2千頭と前年同月をやや下回っており
(▲4.5%)、 農林水産省畜産局では4月について、 149万6千頭と前年同月
をやや下回るものと見込んでいる (▲5.0%)。
2月の輸入量 チルドの伸び止まらず
2月の輸入量は、 3万6千699トンと前年同月を大幅に上回った (22.4%、
図2)。 特にチルドは国内生産量の減少等を背景に昨年8月以降7カ月連続
の2桁の伸びで (34.0%)、 中でもアメリカからの輸入の伸びが顕著 (41.0
%)である。
2月の推定出回り量 前年同月並み
2月の推定出回り量は、 国産品が前年同月をやや下回ったものの、 逆に輸
入品がかなり上回ったため、 合計では10万9千277トンと前年同月と同じ水
準であった (0.3%、 図3)。 季節調整済み値を見ると毎月12万トン強と一
定で、 豚肉の出回り量 (消費量) には大きな変化がないことが分かる。
2月の推定期末在庫量は、 国産品が前年同月を大幅に下回ったものの(▲
16.8%)、 輸入品がかなり増加したため、 合計では8万8千160トンと前年
同月をわずかに上回っている (1.3%)。
2月の卸売価格 弱保合で推移
2月の卸売価格 (東京市場・省令)は、 生産量が前年同月を下回ったもの
輸入チルドの出回り量が多かったことなどから、 409円と前年同月をかなり
下回った (▲6.8%、 図4)。
3月の卸売価格は、 と畜頭数が前年同月をやや下回り、 また、 輸入チル
ドの出回り量が少なめであったと見られることなどから、 443円 (速報値)
と前年同月をわずかに下回る水準まで回復した (▲1.3%)。
4月の卸売価格 (東京・大阪市場) について畜産局では、 肉豚出荷頭数
が3月を下回ると見込まれるものの、 季節的な需要動向等から、 ほぼ3月
並の水準で推移するものと見込んでいる (3月31日公表)。
ハム・ソーセージには品質保持期限を表示
3月17日、 (社)日本食肉加工協会と日本ハム・ソーセージ工業協同組
合は、 4月から実施される食品の日付表示改正の趣旨に沿い、 食肉加工品
については品質保持期限を表示することを合同役員会で決定した。
これは期限表示だけで消費者への情報は十分であり、 行き過ぎた日付管
理などを避けようとするものである。
〔 鶏 肉 〕
2月の生産量 前年並みとなる
2月の生産量は、 10万3千666トンと、 前年並みとなった (▲0.5%、 図
1)。
また、 今後の生産指標となる2月のブロイラー用ひな出荷羽数は、 5千
365万羽と前年をわずかに下回った (▲1.8%)。 農林水産省統計情報部に
よると、3月、 4月、 5月のブロイラー用ひな出荷羽数を、 それぞれ前年
の同月と比べて95%、 97%、 100%と見込んでいる。
2月の輸入量 前年を大幅に上回る
2月の輸入量は、 前年2月の輸入量が低い水準にあったこともあり、 3
万737トンと前年同月を大幅に上回った (31.4%、 図2)。
最近の輸入量の推移をみると、 6年4月から11カ月連続して前年を大き
く上回って推移している。
2月の在庫量 輸入品在庫は、 前年同月をかなり上回る
2月の推定期末在庫量は、 8万6千112トン (▲1.0%) となった(図3)。
このうち、 輸入品在庫は6年2月以降在庫水準の高かった前年を下回って
推移してきたが、 最近の輸入量の急増から、 一転し、 7年2月は前年同月
をかなり上回る水準となった (6.7%)。
2月の卸売価格 弱含みで推移
2月のもも肉、 むね肉の卸売り価格 (東京・平均) は、 需要の増加等相
場を強くする材料がなく弱含みで推移し、 それぞれ、 510円/kg(▲7.4%)、
259円/kg (▲13. 1%) となった (図4)。
3月は、 特に中旬以降、 春の行楽シーズン前の需要増加の期待から、 卸
売り価格は強含みで推移し、 月末は、 もも肉が551円/kg、 むね肉が308円
/kgとなった (農林水産省 「畜産物市況速報」 )。
ほぼ前年並みと見込まれた出荷羽数
畜産局食肉鶏卵課は3月10日、 全国ブロイラー需給調整協議会を開催し、
7年度のブロイラー出荷計画、 需給見通しを報告した。
これによると、 出荷羽数は上期 (4〜9月)が、 3億1千667万2千羽(
対前年同期比▲1. 0%)、 下期 (10〜3月) は、 3億2千23万4千羽 (同
▲0. 6%)、 年度合計で6億3千690万6千羽 (同▲0. 8%) の見込み。
また、 出荷計画に基づき、 7年度の需給を、 需要量は前年をわずかに上
回る179万4千トン (同1.0%)、 供給量は前年をわずかに下回る175万2千
トン (同▲1.2%)、 年度末在庫量を4万8千トン (同▲46.7%) と見通し
た。
平成7年度ブロイラー出荷計画 (単位:千羽、%)
区分 |
全国 |
主要3県 |
上期計 |
316,672 |
(99.0) |
153,789 |
(99.9) |
下期計 |
320,234 |
(99.4) |
153,557 |
(99.8) |
年度計 |
636,906 |
(99.2) |
307,346 |
(99.8) |
注1)( )は、対前年比。
2)主要3県は、岩手県、宮崎県、鹿児島県。
7年度出荷計画に基づく7年度需給見通し(試算)(単位:千トン)
区分 |
6年度実績(推定) |
7年度見通し(試算) |
需要量 |
家計消費量 |
569 |
|
569 |
(100.0) |
加工業務用 |
1,208 |
|
1,225 |
(101.4) |
計 |
1,777 |
(104) |
1,794 |
(101.0) |
供給量 |
国内生産量 |
1,304 |
|
1,272 |
(97.5) |
輸入量 |
468 |
|
480 |
(102.6) |
計 |
1,772 |
(103) |
1,752 |
(98.8) |
在庫 |
90 |
|
48 |
(53.3) |
注:( )は対前年比
〔 牛乳・乳製品〕
2月の生産量 引き続き前年同月を下回る
2月の生乳生産量は、 64万1千129トンと前年同月をわずかに下回った(
▲0.4%)。 北海道、 都府県別に見ると、 北海道は20カ月ぶりに前年同月を
上回ったが、 都府県は猛暑等の影響により引き続き前年を下回った(それぞ
れ1.0%、 ▲1.2%)。 また、 1日当たりの生乳生産量の推移を季節調整済
み値でみると、 5年春以降、 ゆるやかな減少傾向を示している (図1)。
2月の飲用牛乳等向け処理量 わずかに増加
2月の飲用牛乳等向け処理量は、 39万2千362トンと前年同月をわずか
に上回った (1.4%)。 また、 1日当たりの処理量の推移を季節調整済み値
でみると、 5年秋以降、 増加傾向であったが、 最近は伸びが小さくなって
いる (図2)。
2月の乳製品向け処理量は、 生乳生産量の回復とともに飲用牛乳等向け
処理量の伸びが小さくなっていることから、 23万8千894トンと前年同月
をやや下回った (▲1.8%)。
2月のバター価格 底保合続く
2月のバター及び脱脂粉乳の生産量は、 それぞれ6千481トン(▲16.3%
、 図3)、 1万4千660トン (▲7. 8%、 図4) と引き続き前年同月をか
なり下回った。 バターの2月の大口需要者価格は、 生産減から在庫が減
少傾向にあるものの、 阪神大震災の影響で催物等の需要が落ち込んだとい
われ、 4カ月連続で950円/kgと底保合が続いている (▲3.0%)。 また、
脱脂粉乳の2月の同価格は、 引き続き高値で、 1万3千524円/25kgと安
定指標価格を5.3%上回った。
猛暑は乳成分にも影響
(財)日本乳業技術協会は、 平成6年の全国集乳路線別生乳成分調査を
とりまとめた。 これをみると全国年平均は、 乳脂肪分では過去3年間は毎
年0.03ポイント弱ずつ増加していたが、 3.809% (0.004ポイント増) と
伸びが落ち込んだ。 無脂乳固形分は8.612% (0.001ポイント増) と前年
並み。 また、 月々の乳脂肪分をみると、 夏前まで前年を上回っていたが、
8月には3.662%と3年前の水準にまで落ち込んでいる。 無脂乳固形分も
8月に8. 499%と、 過去3年間の水準よりかなり下回った。 このように
昨年の猛暑は、 乳量とともに乳成分にも影響を与えたようだ。
〔 鶏 卵 〕
2月の主要5都市の総入荷量
前年同月をわずかに上回る
主要5都市 (札幌、 東京、 名古屋、 大阪、 福岡) の総入荷量は、 3万
695トンと前年同月をわずかに上回った (2. 3%)。
また、 2月のひな出荷羽数は、 848万5千羽と前年同月をわずかに下回
った (▲1.4%、 図1)。 農林水産省統計情報部は、 3月、 4月、 5月の
ひな出荷羽数を前年の同月と比べて、 それぞれ94%、 88%、 96%と見込
んでいる。
2月の輸入量 前年同月を大幅に上回る
2月の輸入量 (殻付き換算)は、 4千518トンと前年同月を大幅に上回
った (55. 5%、 図2)。
輸入品目別にみると、 主に菓子・ケーキ類の原料に使用される卵黄粉
(102.7%)、 全卵粉 (99.8%)、 マヨネーズの原料等に使用される凍結
卵黄等 (66.9%) の輸入が増加した。
2月の卸売価格 下旬から一転して堅調に推移
2月の卸売り価格 (東京) は、 阪神・淡路大震災の影響等から、 催し
物や外食が自粛されたこと等により、 初旬から中旬にかけて弱含みで推
移したものの、 下旬から一転して堅調に推移し、 平均で195円/kg (3.2
%) となった (図3)。
3月の卸売り価格 (東京全農M規格・速報) は、 年末に実施した強制
換羽明けの採卵鶏が生産を開始していること等、 生産量が増加したこと
により軟調で推移し、 180円/kgとなった。
畜産局食肉鶏卵課は3月10日、 全国鶏卵需給調整協議会を開催し、7年
度鶏卵生産量の見通しを報告した。
これによると、 鶏卵生産量は、 252万722トンと前年をわずかに下回る
見込み (▲1.6%)。
一方、 成鶏雌羽数は、 1億4千224万7千羽 (▲1.9%)、 ひなの導入
羽数が、 1億477万1千羽 (▲1.4%) と、 いずれも前年を下回る見込み。
表 平成7年度鶏卵生産見直し(鶏卵需給調整協議会報告(平成6年11月調査結果))
(単位:トン、千羽、%)
期間 |
区分 |
鶏卵生産量と成鶏めす羽数 |
ひな導入 |
鶏卵生産量 |
成鶏雌羽数 |
動向見込み |
前年実績 |
前年比 |
動向見込み |
前年実績 |
前年比 |
動向見込み |
前年実績 |
前年比 |
合計 |
北海道 |
110,490 |
112,660 |
98.1 |
6,539 |
6,813 |
96.0 |
4,932 |
4,969 |
99.3 |
東北 |
346,050 |
344,200 |
100.5 |
19,231 |
19,171 |
100.3 |
13,924 |
14,106 |
98.7 |
関東 |
578,120 |
588,970 |
98.2 |
34,492 |
34,049 |
98.4 |
23,740 |
24,206 |
98.1 |
北陸 |
117,710 |
125,947 |
93.5 |
6,647 |
7,211 |
92.2 |
5,301 |
5,447 |
97.6 |
東海 |
300,120 |
296,070 |
101.4 |
16,918 |
17,314 |
97.7 |
12,937 |
13,378 |
96.7 |
近畿 |
185,940 |
187,790 |
99.0 |
10,735 |
10,819 |
99.2 |
7,648 |
8,134 |
94.0 |
中国
四国 |
408,190 |
410,060 |
99.5 |
22,531 |
22,662 |
99.4 |
17,270 |
17,014 |
101.5 |
九州 |
459,662 |
477,705 |
96.2 |
25,353 |
25,999 |
97.5 |
18,444 |
18,343 |
100.6 |
沖縄 |
14,440 |
17,950 |
80.4 |
802 |
982 |
81.6 |
575 |
654 |
87.9 |
全国計 |
2,520,722 |
2,561,352 |
98.4 |
142,247 |
145,020 |
98.1 |
104,771 |
106,251 |
98.6 |
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