★ 巻頭言


畜産振興審議会食肉部会を終えて

 財団法人 畜産環境整備リース協会  理事長 犬 伏 孝 治


あ ら ま し

 
  去る3月、 例年通り畜産振興審議会の総会と各部会が開かれた。 食肉部会は、 同
月28日に開かれ、 平成7年度の指定食肉の安定価格と肉用子牛の保証基準価格およ
び合理化目標価格について、 政府の諮問を受け審議が行われた。 

 食肉部会における審議は、 例年同様、 当局の方からまず食肉等をめぐる一般情勢
と需給および価格の動向についての説明があり、 ついで試算値とその算定内容の詳
細な説明がなされたのち、 委員からの質疑とこれに対する応答等を経て、 委員全員
から順次意見の開陳があり、 最後に答申案と建議案の起草に入り、 諮問に対する答
申と7項目にわたる建議が行われた。 

 以上の審議の流れは、 全く例年のとおりであったが、 今回は、 平成7年度がガッ
ト・ウルグァイ・ラウンド農業合意実施の初年度に当たることから、 わが国畜産の
今後の展望とくに農業合意の実施に伴って生ずるであろう諸問題と、 政府の当面の
対応および中長期的な政策の展開方向について、 多くの委員から強い関心が寄せら
れ、 関連する意見も述べられた。 またこのほか、 肉用牛生産における品質の向上と
安定、 養豚経営の体質強化、 畜産経営における生産コスト低減のための生産資材に
関する諸規制の緩和、 環境保全対策の推進、 食肉の流通合理化・高度化の一層の推
進、 消費拡大と表示の適正化、 安全性の確保等幅広い分野についての意見も開陳さ
れた。 

 以上の審議の経過を概括すると、 試算値で示された諮問価格については、 委員全
員が賛成ないしやむを得ないとする意見であり、 一部に若干の指摘もあったが総体
として順当に答申がまとめられたと思われる。 一方、 関連して述べられた意見は、 
おおむね建議の中に盛り込まれており、 その具体的施策のすみやかな実施が要請さ
れたところである。
 
牛肉の安定価格について
  平成7年度の牛肉の安定基準価格および安定上位価格は、 試算値のとおり決定さ
れたが、 平成2年度以降両価格とも毎年度引き下げられてきており、 本年度も前者
が4. 0%、 後者が3. 5%の引下げとなった。 これまでと比較すると引下げの幅はや
や大きなものとなっている。 
 
 いうまでもなく、 安定価格は、 生産条件および需給事情その他の経済事情を考慮
し再生産を確保することを旨として定めるものとされている。 具体的な算定は、 従
来から需給実勢方式により過去一定年間 (7年間) の肉牛の農家販売価格と生産費
の動向に基づいて算出されたものを枝肉価格に換算して算定されており、 本年度も
同様に行われている。 その算定結果が上述の引下げとなったのであるが、 牛肉につ
いての近年の国内価格の動向や肉牛生産の規模拡大による生産性の向上、 さらに素
畜費および飼料費の低下等を考慮すれば、 この程度の引下げはやむを得ないものと
考えられたといえよう。 

 
 
豚肉の安定価格について
  豚肉の安定基準価格および安定上位価格は、 平成元年度以降5年度までは据え置
かれてきたが、 6年度は前者が引き続き据置きとされたのに対し後者は4. 4%の引
下げとなっており、 その後をうけて、 本年度も前者が400円に据え置かれ後者は2.8
%の引下げとなった。 
 
 豚肉の安定価格も、 牛肉と同様、 生産条件および需給事情その他の経済事情を考
慮し再生産を確保することを旨として定めるものとされている。 その算定は、 牛肉
と同様本年度も需給実勢方式により過去一定年間 (5年間) の肉豚の農家販売価格
と生産費の動向に基づいて算出されたものを枝肉価格に換算して算定されており、 
その算定結果が上述の据置きおよび引下げとなった。 このような算定結果となった
のは、 飼料費の低下等の生産費の動向、 枝肉価格の変動幅の縮小等を勘案した結果
であり、 やむを得ないものと考えられたといえよう。 ただ、 昨年も同様であったが
、 安定基準価格の据置きについては、 積極消極両面の意見があり、 総体としての意
見のとりまとめの結果は上述のとおりであるものの、 今後に問題を残した感なしと
しない。 

 
肉用子牛の保証基準価格および 合理化目標価格について   
  黒毛和種および褐毛和種については、 両価格とも前年度と同額に据置かれたが、 
その他の肉専用種および乳用種については、 両価格とも前年度に引き続いて引下げ
となった。 
 
 保証基準価格の算定は、 これまで同様、 牛肉の輸入自由化の影響の出ていない過
去の一定年間 (昭和58年2月から平成2年1月までの7年間) における肉用子牛の
市場における実勢価格を基本として、 これに生産費の変化率を織り込んで算定する
いわゆる需給実勢方式に基づき行われている。 また、 合理化目標価格は、 肥育経営
において輸入牛肉と対抗しうる価格で国産牛肉を生産するのに必要とされる肉用子
牛価格として算定されている。 いずれも従前どおりの算定方式であるが、 保証基準
価格については、 黒毛和種および褐毛和種では生産コストがほぼ横ばいで推移して
いること、 その他の肉専用種および乳用種では繁殖めす牛および初生牛の価格が低
下していること、 合理化目標価格については、 円高、 関税率の低下 (下げ要素)、 
輸入牛肉との品質格差の拡大 (上げ要素) 等の変化があること等を勘案して、 上述
のような算定結果となった。 
 
 子牛の不足払と呼ばれる本制度については、 すでに生産者補給金の支給額は相当
多額 (平成6年度第3四半期までの交付額の合計1, 508億円) にのぼっており、 肉
用牛経営を支えるものとして大きな役割を果たしてきている。 このような観点から
本制度の安定的な運営で図られるよう、 支払財源の確保や都道府県基金協会の借入
金の償還円滑化のための措置が要請されており、 建議の中にこの趣旨が織り込まれ
ている。 

 
 

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