◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

飼料給与の基本で夏も乳質を確保

(宮崎県 成光 昭男)

  イタリアンライグラスの乾草取りの最中、  宮崎県小林市瀬田尾の温水健
一郎さん (45歳) 宅に暑熱対策の取材に伺った。 奥さんと息子さんの3人で、
イタリアンライグラスの乾草が次々と倉庫に積まれて行く。 この乾草が60頭
の乳牛の1年間の大事な飼料になる。 
 
  一般的に、 乳脂率や無脂固形分率は冬に高く、 夏には低くなる傾向がある。 
ところが、 温水さんの牧場は高地にあり、 平地に比べ気温が約2℃低いため、 
夏の暑熱の乳牛への影響が緩和されているとはいえ、 夏場の乳脂率と無脂固
形分率の低下がほとんど無く、 年間を通じて乳質が安定している。 
 
  暑熱対策としては、 風の通りがよい方向に、 また直射日光が牛に当たらな
いように牛舎を建築した点、 それにどこにでもある大型の扇風機が6台ある
だけで、 特別の施設はない。 では、 どうして温水さんの乳牛の乳質は安定し
ているのだろうか? どうやら、 牛飼いの基本の問題のようだ。 

 温水さんの乳牛1頭当たりの乾物摂取量は、 ラフな計算だが26kg以上とな
っている。 本当にこれだけ食べているのかと、 多少の疑問を持ちつつ、 牛舎
へ行ってみると残飼はほとんどなく、 なるほど牛のお腹が大きく膨れている。 
大体2時間くらいで食べきってしまうそうだ。 実に驚くべき食欲だ。 この食
欲は夏でも変わらないと言う。 

 これは何といっても乾物摂取量が十分であり、 ルーメン (第一胃) がしっ
かりできている証である。 特に、 育成期の飼い方が重要で、 温水さんは育成
牛には乾草、 ヘイキューブ、 ビートパルプ以外は一切与えない。 実際、 北海
道からの導入牛よりも自家育成牛の方が食い込みが良いとのことだ。 今年も
温水さんは夏を難なく乗り越えられることだろう。 

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