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畜産経営指導の現状と今後の方向について 
― 畜産コンサルタントと畜産経営簡易診断指導事業から ―

(社団法人 中央畜産会 指導部長 内 藤 廣 信)


  
は じ め に

 ウルグァイ・ラウンド後の云々ということがよく議論されたが、 その中心課題
は 「生産者はどう対応すべきか」であったような気がする。 生産者を「指導する」
組織として、 国際化等の経営環境の変化にどう対応すべきか、 また、 どう改善し
ていくべきかという点についての議論が十分ではなかったのではないだろうか。 
 
  農政の対応や生産者としての対応の必要性は声高に論じられたが、 「経営環境
の変化に応じた」指導組織としてのあり方については前者と同じような水準で論
じられたか、 また、 真に変化に対応できる 「改善」がなされたか、 なされようと
しているのか、 改めて整理する必要はないだろうか。 
 
 ところで、 「指導」という言葉が安易に使われるが、 文字どおり解すれば「指し
導く」 ということになり、 どちらかといえば上から下を教え込むというニュアン
スを含んだ言葉である。 まかり間違えば、 「死導」 になることすら考えられる。 

 英語でも経営技術にかかわる 「指導」 については 「lead」 「guide」 をはじめ、 
「consultation」 「advice」 「extention service」 などいろいろな用語が使わ
れている。 「指導」 に対する概念の違いが感じられる。 歴史の差異、 内容を含め
た「指導」 の実態の差異等からきているのであろう。 我が国でも、 最近の傾向と
して「指導」 から 「指導、 支援」 あるいは 「支援」 に変わりつつある。 生産者の
変化に対応したものであろう。 生産者のニーズあるいはウオンツの主流が上から
下を教え込む 「指導」 でなく、 一緒に相談しながら物事をすすめる 「支援」に変
わりつつあることを反映したものであろう。 食糧政策も 「増産から計画生産」へ
と変わって久しい。 「増産」 に向けて全ての農家を対象に指し導く 「指導」 は必
要なくなり、 また、 生産に携わる農家の経営・生産技術の水準も急速な向上が見
られ、 少なくとも 「今までのスタイルの指導」 が必要であった時代は終わったと
言えよう。 逆に言えば、 いままで通りのスタイルの 「指導」、 あるいはいままで
の延長線上の 「支援」 では、 少なくともこれから生産の中核を担っていく生産者
の方々からは、 相手にされない 「指導組織 (者)」 として淘汰されていくであろ
う。 生産者のみならず、 変化に対応した 「改善」 ができない 「組織 (者)」は「淘
汰される」 と言わざるをえないであろう。 残念なことではあるが 「市場経済」下
での当然の帰着である。 
 
 以上の基本的な考え方に立って、 現状と今後の方向について考えてみたい。 


 
指 導 の 現 状

 現在、 畜産農家に対する 「指導」 は畜産会をはじめ普及組織、 農協などが実施
しているが、 畜産を専門に実施しているのは畜産会だけである。 なぜ、 畜産に専
門の指導組織があるのか。 畜産農家は、 一般的に他の作物を生産している農家に
比べ、 一戸当たりの投資額が大きく、 しかも経営規模が拡大しており、 生産から
販売に至るまでの幅広い知識とセンスが要求され、 経営内容がどちらかと言えば
企業的要素も含む複雑な側面を持っている。 基本的には、 その耕種農家と異なる
経営的性格により、 技術指導だけでは効果が薄く、 経営的な観点からの指導が必
要とされたからといえる。 そのために早くから、 畜産を専門とする指導組織が必
要とされたのであり、 畜産会は設立以来、 40年の歴史をもつ。 現在、 畜産会は国
、 県、 畜産振興事業団等の支援協力を受け、 経営診断指導 (いわゆるコンサル事
業) を中心に色々な指導・支援事業を実施している。 いままでコンサル事業の対
象となった畜産農家数は延べ14万5千件にのぼる。 当然その時代のニーズを反映
し、 指導事業の内容も変化してきている。 また、 診断依頼事例を畜種別にみても
、 時代のニーズを反映していることがよく判る(図1)。 全診断事例に占める比率
は、 養鶏、 養豚経営にあっては早くから減少傾向を見せ、 肉用牛経営は一貫して
増加している。 また、 対象となっている経営者の年齢別構成をみると、 傾向とし
ては、 経営者の絶対数が少い若い層に対するコンサルの割合が多いことが伺われ
る (表)。 
表 主な従事者の年齢別経営割合と経営指導の比較(単位:%)
  39歳以下 40〜49歳 50〜59歳 60歳以上
酪農 経営割合 19 28 29 24
コンサル 33 41 20 5
肉用牛繁殖 経営割合 6 14 34 45
コンサル 22 26 24 26
肉用牛肥育 経営割合 15 21 30 34
コンサル 14 33 32 20
肉用牛合計 経営割合 8 16 33 43
コンサル 18 29 28 23
養豚 経営割合 13 29 29 28
コンサル 19 44 22 11
資料:農林水産省統計情報部
「平成5年農業構造動態調査報告書-酪農部門構造-」
「平成3年肉用牛生産構造調査報告書」
「平成4年豚生産構造調査報告書」
コンサルは平成5年の先進的畜産経営指導の対象経営


 畜産会の行うコンサルは、 基本的には財務諸表等に基づく収益性、 生産性、 安
全性等の分析であり、 これに基づく診断・助言である。 ちなみに、 平成6年度に
実施した指導・支援事業を紹介すると、 @経営診断に基づく改善指導 (2,020戸
)、  A経営管理技術指導 (770戸)、 B生産技術指導 (1,900戸)、 Cフォローア
ップ指導 (2,300戸) 等となっている。 @の経営診断に基づく改善指導がいわゆ
る戸別農家を対象としたコンサルである。 一般に診断依頼に基づき、 「調査→ 分
析→ (補完調査) → 診断→ 助言→ 事後指導」 の流れで実施されている。 これ
らは、 全国で254人の常勤のコンサルタントと2,089人の非常勤のコンサルタント
によって、 診断依頼毎に対応できる指導班 (常勤コンサルタント+非常勤コンサ
ルタント) がその都度組まれ実施されている。 畜産分野においては少なくとも 
「コンサルは畜産会」 「畜産会のコンサル」 として評価を受けてきたし、 筆者は現
在も受けていると自負している。 しかし、 決して問題がないわけではない。 第一
に、 診断に係る仕事量 (日数) が大きいということである。 診断依頼の内容によ
り、 多少の差異はあるが調査から助言まで、 平均して1事例を完了するのに要す
る日数は10〜15人・日である。 このため、 実施件数が限られ、 診断依頼の需要を
満たせないという問題がある。 第二に、 仕事量の大きな要因にもなっている 「調
査=データ収集」 である。 調査すべきデータは、 診断依頼の内容により異なるこ
とは当然であるが、 一般には調査対象期間中の経営成果を表している数値データ
と、 その数値データを排出した背景となる非数値データになる。 後者の非数値デ
ータは、 いかなる場合も調査員が経営者から聞き取りにより収集すべきものであ
るが、 前者の数値データは、 本来は経営者等によって 「記録・記帳」 されていて
、 調査員に提供されるものである。 しかし、 現状は厳しい。 よって、 これに掛か
る 「時間」 がネックとなっいてるのが現状である。 第三に、 非常勤コンサルタン
トの協力度合いの低下である。 それぞれ本務を持つなかでの非常勤としての協力
であるのでやむを得ない面はあるが、 最近この悩みは特に多い。 これから考えて
いかなければならない 「地域支援・指導体制の再構築」 と関連して、 関係者全体
の検討の中で解決していくべき事柄であろう。 第四に、 事後指導の問題である。 
事後指導は、 依頼者の属する地域指導機関等が中心になって行うことが基本であ
るが、 諸機関・組織の統廃合、 指導者の減少など問題は多く、 不十分なところも
みられる。 「地域の支援・指導はどうあるべきか」 を検討することは、 新政策で
もうたわれているが焦眉の課題であると考える。
 
 以上の悩み (問題) を少しでも乗り越えて、 より幅広い生産者の方々を支援し
ていく方法として、 平成元年から記録・記帳の程度に応じ分析できる電算システ
ム 「簡易診断指導事業」 を実施している。 この事業の特徴は、 経営実績の内容の
把握能力に合わせ3段階の分析システムが仕組まれていることである。 例えば、 
経営実績の内容の把握程度が小さい経営を対象としたシステム (Tステップ) で
は @ 現金収支をベースとした収支決算と収益性分析と A 出荷成績をベース
とした生産性技術分析ができるようになっている。 Uステップ、 Vステップは収
益性分析においても生産性分析においても順次高度化されている。 同時にめまぐ
るしく変化する経営環境にも対応できるシステムとして 「進行管理」 ができる方
法をとりいれている。 すなわち、 「 plan →do →see 」 の経営管理ができるシ
ステムを採用している。 年間おおよそ3,000戸の生産者の方々がこの事業に参加
して成果をあげつつある。 この事業は、 前述の 「経営診断に基づく改善」 指導が
どちらかといえば各分野の専門家集団による 「家庭教師」 的指導であるのに対し
て、 「簡易診断指導事業」 はまさに生産者を主体とした 「支援指導」 の事業とし
て仕組まれ、 その特徴からみて、 「通信添削指導」といえる。
 
 しかし、 これでも最近の畜産情勢の変化に対応して、 的確に畜産経営の改善を
手助けしていくためには不十分であると考えている。 なぜならば、 畜産会の実施
してきたコンサルは主に、 過去分析あるいは現在分析から得られたデータに基づ
いて診断・助言をする手法をとってきたが、 助言内容を 「plan (計画)」 に採用
し、 「do (実践)」 した場合、 「経営成果」 としてどの程度の 「改善」 が見込める
のかを示しきれない弱点を持っていた。 すなわち、 「助言・効果」 を数値として
提案できない 「助言」 であり、 受診者として助言を採用した場合の効果を数値と
して把握できない 「助言」 であったといわざるをえない。 経営者の意志決定の材
料として不十分なものであった。 以上のことから、 将来分析を可能とする手法を
取り入れた 「経営計画支援システム」 の開発が急務であった。 そこで、 畜産会は、 
畜産振興事業団の指定助成事業により、 平成3年度から新しい経営指導手法を開
発しつつある (図2)。 具体的には、 経営方針検討システム (いくつかの改善計
画案に対して、 改善課題ごとの優先度、 改善効果等を総合的に判断し、 最適な経
営改善計画について検討するシステム)、 畜種別システム (規模、 技術水準、 費
用等の改善目標数値と飼養計画、 現行の技術の内容・水準、 施設、 投資等の相互
関連の中で整合性を判断しながら、 経営成果、 収益性、 経営の安定性等を15年先
まで検討するシステム)、 専門別システム (飼養改善エキスパートシステムとも
いえるが、 畜舎の環境や技術成績等該当経営の状況を入力することにより経営内
の問題点を把握し、 そこから飼養改善を図らなければならない点を判断し、 部門
ごとの改善方策の提示ができるシステム、 畜舎施設設計支援システムなど8シス
テム)、 そしてこれらのシステムを運用するに当たって必要な情報を提供するデ
ータベースである。 これらは、 既存の 「簡易診断指導事業」 のシステム3ステッ
プと連携して活用できるように仕組まれている。 これにより、 求められている支
援・指導に必要な道具立ては8割方できあがったと考える。 あと残る部分は、 経
営者が日常、 蓄積しているデータをいかに手間をかけずに 「経営計画支援システ
ム」 につなげていくか、 また経営者の意志決定に必要な豊富な情報を蓄積し提供
する体制を作り上げていくかであろう。 幸い情報の提供については、 畜産振興事
業団を核とした関係団体が情報提供体制づくりに着手している。 これらを考える
にあたって、 なんといっても「地域における実効ある支援・指導体制」 づくりを
急ぐ必要があろう。 これも今までの枠に止まらず、 関係する民間企業をも取り込
んだ支援・指導体制の確立が望まれていると考える。 畜産会は今までも、 関係機
関・団体と連絡協調をとりながら、 協力・支援のもと指導業務を実施してきたが、 
これからもより一層努力していく必要がある。 幸いに、 山際栄司氏 (日本農業普
及学会会長) が雑誌のインタビューのなかで、 「ハイレベルの畜産農家の要望を
くみ取って、 対応できるものはその場で対応する、 そうでないものについては、 
試験場や農政全体につなげていく姿勢が求められるだろう。 幸いに畜産には中央
畜産会など農政との媒体機能を備えた組織が存在し、 コンサルタント業務を行っ
ている。 それらに対しても普及活動で補強していくことが大切」 であると発言さ
れている。 


指導対象を何処におくのか

 少なくとも、 畜産をやりたい、 好きだといって残っていく人達にこそ、 適切な
指導・支援の手が差しのべられるべきである。 失礼な言い方であるが、 一部に「水
を飲みたくない馬を無理やり川辺に連れていき水を飲まそうとする」ような「指導」
をし、 結局は、 成果が上がらず、 悩んでいる 「指導者」 に会うことがある。 なぜ
、 このようなことが起きるのか。 このような事例は固定化した高額な負債を抱え
る農家に対して、 農協等の融資機関の要請を受けた「更生・再建」 を目的にした指
導に多くみられる。 これは特例にしても、 一般にも指導対象を選定するときに、 
目的を持った意識的な選定がされずに 「平均的割当により選定 」された対象への
「指導」 がまま見られる。 このため、 なぜ指導・支援が必要なのか、 その効果とし
て何を求めているのかが不明確なものがみられる。 消費者にどのような畜産物を
供給するのか、 そのためにどのような生産農家を育成する必要があるのか、 その
ような生産農家をどの地域に育成していくのかなどの基本課題が明確になって、 
初めて、 「指導・支援対象の個別化」 が明確にでき、 対象農家が特定され、 指導・
支援の手法も自ずと決まっていくはずである。 しかし、 残念ながら、 これらの基
本的手続きが不十分なままに実施されることがあり、 その場合、 「指導・支援」を
受けた経営者にとって、 注文 (指導依頼) とは違った品物 (助言)が届けられるこ
とになる。 また、 迅速性に欠ける指導がなされるといった問題も生じている。 一
方、 「畜産をやりたい」 とする前向きな者への 「指導・支援」 は、 多くの事例に
見られるように成果をあげている。
 
 今後、 個別経営の指導にあっても、 地域農業との関係のなかで支援・指導する
ことが重要になろう。 例えば、 地域農業全体を一経営としてとらえ、 個々の経営
の位置づけ (生産部) や、 農協の位置づけ (経理部・資材調達部など)、 あるい
は地域指導組織の位置づけ (企画部) などを行い、 地域全体としてあたかも一経
営としての機能をもつような 「地域経営」 の確立が必要となろう。 
 
 指導組織も 「選択 (セレクトされる) の時代に入っている」 との認識のもとに、 
「畜産をやりたい、 好きだといって残っていく人達」 にこそ喜ばれ、 指導・支援
の手が差しのべられる体制作り、 人材作りを急がねばならないと考える。 


今 後 の 方 向

 我が国の畜産物の生産の方向は、 全体的にはウルグァイ・ラウンドの決着に伴
う関税化体制と、 これらを反映させた新農政の示す方向に否応なく影響されるで
あろう。 すなわち、 これらは畜産経営にとっても、 指導組織・機関にとっても新
しく追加された 「経営上、 指導上の与件」 と受け止めざるを得ない。 与えられた
外部与件を経営者自らがどのように吸収・変革していくか、 与えられた与件その
ものを物理的に変革するか、 あるいは環境変化に対応できずに (あるいは自主的
に判断して) 撤退するかの三つの道のうちの一つしかない。 しかし、 客観的に見
て 「与件そのものを物理的に変革する」 道は個々の経営にとっては非常に困難で
あると言わざるをえない。 人それぞれ考え方が異なり、 それゆえに対応策も異な
ろうが、 残る二つの道を模索しつつ、 「与件を吸収・変革して軟着陸」 を目指す
であろう。 その 「軟着陸」 への道を支援し、 その後を発展させることこそが、 行
政、 指導組織・機関の役割であろうと考える。 

 今、 一般に畜産農家の減少を説明するキーワードとして、 「3K」 のほかに 「労
働力の老齢化」、 「後継者難」、 「都市化・混住化による環境悪化」、 「収益性の低下
」、 「将来への不安」 などがあげられ、 北海道から沖縄までどこへいっても同じ言
葉がまことしやかに語られている。 これらの経営内・外の諸要因が複雑に絡み合
って、 畜産農家の減少の原因となっていることは確かであるが、 あえてオーバー
に言えば 「畜産関係者総被害妄想化」 の感すらある。 こう感じるのは筆者だけで
あろうか。 一部の大企業を除けば農業 (畜産) だけでなく、 工を生業としている
者においても、 同じような不安定な環境のもと、 同じ悩みを抱えつつ経営をして
いるのではないだろうか。 同じキーワードを口にするまえに、 畜産関係者はもう
一度 「風土」 に立脚した地域農業 (畜産) がどうあるべきかを消費者 (国民) に
示す必要がある。 既に、 生産者の中に 「風土」 に立脚した畜産の姿を見いだした
者もいる。 他の生産者に学び、  「風土」 に学ぶことこそ、 新しい力と新しい方向
性を見いだすヒントではないだろうか。 表面的な現象のみをキーワード化し、 平
均化して論じても一般的かつ平均的な答えしか得られない。 幸いにして我が国は
緯度の差があり、 高低の差があり、 食文化の差がある。 いろいろな地図が描ける
はずである。 新幹線、 高速道路ができ時間的距離は縮まり、 テレビ、 コンピュー
タができ、 文化・情報の均一化が進んでいることは否定できない事実であるが、 
それでもなおそれぞれの地域にそれぞれの 「風土」 があることは事実である。 平
均的な地図のみを描き、 平均的な問題意識をもち、 平均的な施策と平均的な指導
・支援では、 「魅力ある畜産」 は描けない。
 
 飼養規模の拡大、 法人経営の増加、 支援組織の萌芽、 消費者への産直等いろい
ろな試みがなされているが、 このままではある水準まで畜産経営の戸数が減少し
、 質・量の両面において二極分化していくであろう。 残念ながら筆者には 「ある
水準」 が具体的にどの程度の数字になるのか言い当てることはできない。 かつて
、 ある雑誌に 「ここ数年の減少等を見ると、 日本の畜産は10数年後には12〜13万
戸程度しか残らないほどの急激な減少が考えられる。 平成元年の46万3千戸近く
あった畜産農家が4分の1強まで落ち込んでしまう」 と言うことを乱暴に書いた
ことがあるが、 平成7年の数字を見ると、 24万4千戸に減少している。 予測が当
たってしまうような状況である。
 
 しかし、 これらの減少は規模階層すべてにわたった平均的な減少ではない。 例
えば、 酪農における減少は 「小規模階層を中心とした減少」 であり、 成畜30頭以
上層の戸数シェアは年々増加し、 現在では45%を超えている。 また、 その頭数シ
ェアは75%を超えるものになっている。 肉用牛経営においても基本的には同じで
ある。 一定規模以上の階層の経営が増加し、 その頭数シェアは繁殖、 肥育とも70
%を超えている。 すなわち、 これは単なる戸数の減少ではなく、 生産基盤の変革
を伴う急激な質的変化を示していると言えよう。 

 この質的変化は、 経営個々の変化や生産という側面だけの変化にとどまらず、 
これにかかわる加工・流通を含めた畜産界全体の変化も要求している。 また、 こ
の畜産関係全体の変化は、 逆に経営個々にも変化を求めることになろう。 いま求
められているのは、 このような複雑かつ急速な変化に対応した指導・支援体制を
いち早く構築することである。 


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