◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

長期空胎牛の受胎促進施設オープン

(鹿児島県 宝 正己)

  鹿児島県大島郡瀬戸内町は、 鹿児島市の南方約400kmの海上に浮かぶ奄美大島
の南部に位置し、 さらに加計呂麻島、 請島、 与路島の離島を抱えている。 
 
  これらの離島を中心に黒毛和牛の繁殖経営が展開しており、 人工授精業務には
、 町職員が従事している。 ただし、 役場から遠距離にあり適期の受精が難しかっ
たり、 土木作業等との兼業農家が多いため発情の見逃しもあり、 また繁殖雌牛の
栄養水準の過多・過少などの理由から繁殖成績が低い状況にある。 

 そこで、 町では平成6年度の畜産活性化総合対策事業により、 使われなくなっ
た古い牛舎に連動スタンチョンとウォーターカップを取付け、 広いパドック付き
の牛舎に改修整備し、 長期不受胎牛の受胎促進のための取り組みを開始した。  
 
  この施設はいわば 「繁殖雌牛のリハビリセンター」であり、 農家から不受胎牛
を預かり、 まず1頭ごとの栄養改善を行う。 次に、 子牛の市場性を考慮し2回目
の発情までは人工授精を試み、 それでも受胎しない場合は自然交配により受精す
るシステムをとっている。 

 平成7年1月中旬から不受胎牛の受入れを開始し、 3月末までに20頭を受入れ
17頭に受精した。 利用料金については、 1日1頭当たり300円程度を予定してい
るが、 必要経費や利用状況等を踏まえながら決定することとしている。 

 繁殖雌牛を廃用のため売却する場合は、 離島のまた離島であることから価格は
非常に安く、 また引取り手がないケースもあるため、 繁殖用としてできるだけ長
く供用し、 1頭でも多くの子牛が生産できたらと関係者は受胎確認の日を楽しみ
にしている。 
  
  

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