最近の畜産物の需給動向
国内の主要畜産物の短期需給動向を毎月トレースします。
・原データは、 巻末の参考資料を御参照願います。
・( ) 内数値は、 対前年増減率です。
・季節調整は、 米国商務省のセンサス局法 (X−11) によっています。
・牛肉及び豚肉の数量は、部分肉ベースです。
乳業部、食肉生産流通部、企画情報部
〔 牛 肉 〕
3月の生産量 前年よりやや増加
3月の牛肉生産量は、 3万5千132トンと前年同月よりやや増加した (3.2%、
図1)。 内訳をみると、 去勢和牛は7千305トン (2.6%) とわずかに増加、 めす
和牛は6千466トン (9.8%) とかなり増加、 乳用肥育おす牛は1万1千125トン
(5.3%) とやや増加したが、 乳用めす牛が9千442トン (▲1.6%) と減少し、全
体では3.2%の増加となった。
3月の輸入量 3月は前年を大幅に下回る
3月の輸入量は、 4万943トンと前年をかなり下回った (▲27.9%、 図2、3)。
内訳をみると、 チルドは2万9千196トン (▲6.9%) 、 フローズンは1万1千
650トン (▲53.9%) となった。 この輸入量の大幅な減少は、 3月以降の急激な
円高や4月からの関税引下を前にした通関手控えが主な要因と思われる。
品目別輸入動向調査によると、 4月の輸入数量は約6万3千トン(チルド約3
万1千トン、 フローズン約3万2千トン)、 5月は約5万3千トン (チルド約2
万8千トン、 フローズン約2万5千トン)、 また、 6月は、 冷蔵品についてはほ
ぼ5月並み、 冷凍品については5月よりかなり減少するものと見込まれる。
3月の推定出回り量 34ヵ月ぶりに前年を下回る
3月の推定出回り量は、 8万48トン (▲2.6%、 図4) と4年5月以来34ヵ月
ぶりに前年を下回った。 内訳をみると、 国産品は3万6千323トン (5.2%)、 輸
入品は4万3千725トン (▲8.2%) であった。
3月の推定期末在庫量は7万6千414トン (▲12.4%、 図5) となり、 特に、
輸入品の減少 (6万5千834トン、 ▲14.2%) が目立っている。
3月の省令価格
前年をやや下回る
3月の省令価格 (東京市場) は、 990円/kgと前年をやや下回った (▲3.9%、
図6)。 去勢和牛の枝肉価格 (東京市場) についてみると、 A5、 A4は供給が
減少しているものの、 景気の低迷等により価格は前年を下回り、 A3、A2は供
給が増えているものの、 一部量販店等の輸入牛肉から国産牛肉への積極的な販売
展開による需要もありほぼ前年並みとなった。
4月の省令価格(東京市場速報値、瑕疵のある枝肉を除く。)は、1,007円/kg
となり前年をわずかに上回った。去勢和牛の枝肉価格(東京市場、速報値)は、
A5が2,494円/kg、A4が1,818円/kg、A3が1,422円/kg、 A2が1,059円/kg
となった。
輸入牛肉仲間相場
焼き肉需要等により好調な米国産「ばら系(チャックリブ)」
米国輸入牛肉の仲間相場については、チルドの「ロイン系」は輸入数量が前年
比30%〜50%増で推移していたが、2月〜3月にはほぼ前年並みとなったため品
薄感が強く3月下記には値を上げた。また、4月上期については、焼き肉需要等
により相場が引き続き好調な「ばら系(チャックリブ)」が値を上げ、他は「ロ
イン系」も含め3月下期並みか値を下げた。豪州産については「ロイン系」を除
き全体的に値を下げた。
〔 肉 用 子 牛 〕
3月の黒毛和種の取引価格 前年をかなり上回る
3月の黒毛和種の子牛取引頭数は4万5千597頭 (3.1%) となった。 取引価格
(雌雄平均) は、 肥育経営の収益性が改善されつつあることから35万円/頭 (8.0
%、 図7) と前年よりかなり値を戻している。
4月の取引価格 (速報値、 5月10日現在) は、 34万1千円/頭となった。
また、 平成6年度第4四半期の黒毛和種の平均売買価格は、 35万7千100円と
第3四半期に引き続き保証基準価格 (30万4千円) を上回ったため、 補給金の交
付には至らなかった。 さらに、 子牛生産拡大奨励事業については、 第3四半期に
は奨励金が交付されたが、 今回は発動基準の35万円を上回ったため奨励金の交付
もなかった。
3月の乳用種の取引価格 ヌレ子価格は6万円台
3月の乳用種の子牛取引価格 (雌雄平均) は、 5万7千円/頭 (▲25.0%)と
引き続き前年を大幅に下回ったが、 肥育経営の収益性は悪化していないことから
前月並みの水準となった(図8)。 また、 第4四半期は保証基準価格を下回ったこ
とから補給金が交付されている。 4月の同価格 (速報値、 5月10日現在) は、
5万5千円/頭となった。
3月の乳用種のヌレ子の価格は6万2千円/頭 (13.4%) となり5年7月以来
の6万円台となった。 4月の同価格 (速報値、 5月10日現在) は、 5万9千円/
頭となった。
― 肉用牛の飼養戸数はかなりの減少 (家畜の飼養動向より) ―
農林水産省統計情報部が4月28日に公表した 「家畜の飼養動向」 によると、平
成7年2月1日現在の肉用牛の飼養戸数は、 16万9千700戸で前年に比べ8%の
減少となった。 これは、 飼養者の高齢化、 後継者不足に加え、 輸入牛肉の増加
に伴う枝肉卸売価格の低迷等から、 小規模経営を中心に飼養中止があったこと
によるとしている。
一方、 飼養頭数については、 296万5千頭 (▲0.2%) とほとんど減少してい
ないため、 一戸当たりの飼養頭数は、 前年の16.1頭から17.5頭と増加している。
また、 全国飼養頭数の内訳をみると、 肉用種は187万2千頭 (▲0.4%)、 乳用
種は109万3千頭 (0%) といずれも前年並みとなった。
〔 豚 肉 〕
3月の生産量 引き続き前年同月をやや下回る
3月の国内生産は、 母豚の飼養頭数の減少などから、 と畜頭数が157万7千566
頭 (▲4.8%)、 生産量が8万3千19トン (▲4.1%) と前年同月をやや下回った
(図1)。
4月のと畜頭数 (速報値) は、 148万1千頭と前年同月をかなり下回っている
(▲6.0%)。 農林水産省畜産局では、 5月は145万頭と前年同月をやや下回るもの
と見込んでいる (▲3.0%)。
3月の輸入量 チルドの伸び止まらず
3月の輸入量は、 4万1千18トンと前年同月をかなり上回った (9.3%、 図
2)。
特にチルドは国内生産量の減少等を背景に昨年8月以降8カ月連続の2桁の
伸びで (26.2%)、 中でもアメリカからの輸入の伸びが顕著 (39.7%) である。
3月の推定出回り量 前年同月をわずかに上回る
3月の推定出回り量は、 国産品が前年同月をやや下回ったものの、 逆に輸入
品がかなり上回ったため、 合計では12万6千344トンと前年同月をわずかに上回
った (2.2%、 図3)。
3月の推定期末在庫は、 輸入品が前年同月をわずかに上回ったものの (2.5%
)、 国産品が大幅に減少したため (▲16.1%)、 合計では8万5千853トンと前年
同月をわずかに下回っている (▲1.9%)。
3月の卸売価格 前年同月をわずかに下回る
3月の卸売価格 (東京市場・省令) は、 チルド輸入量が大きく増えたものの
国内生産量が減少したことなどから、 443円と前年同月をわずかに下回る水準ま
で回復した (▲1.3%、 図4)。
4月の卸売価格は、 と畜頭数が前年同月をかなり下回ったことなどから、475
円 (速報値) と前年同月をかなり上回った (8.4%)。
5月の卸売価格 (東京・大阪市場) について畜産局では、 肉豚出荷頭数が4
月を下回ると見込まれるものの、 近年の季節的な需要動向等から、 ほぼ4月並
みの水準で推移するものと見込んでいる (4月28日公表)。
規模拡大が続く養豚経営
農林水産省の 「家畜の飼養動向」 (7年2月1日現在) によると、 豚の飼養
戸数は飼養者の高齢化、 後継者不足などから中小経営の廃業が進み1万8千800
戸と2万戸を割った。 一方、 1戸当たりの飼養頭数は545頭 (13.4%)と増加し
ており、 ここ数年、 規模拡大のテンポは衰えていない。
ただ、 全国の飼養頭数は、 1千25万頭 (▲3.5%) とやや減少しており、 規
模拡大は進んでいるものの、 廃業した経営の頭数分をカバーしていないことが
分かる。
〔 鶏 肉 〕
3月の生産量 前年同月並みとなる
3月の生産量は、 10万8千167トンと、 前年同月並みとなった (0.6%、図1
)。 最近の生産量の動向をみると、 卸売り価格の低迷等による、 ひなの導入控
え等から、 概ね前年を下回って推移しており、 平成6年度は130万4千259ト
ンとなった (対前年度比▲1.6%)。
また、 今後の生産指標となる3月のブロイラー用ひな出荷羽数は、 5千615
万羽と前年をやや下回った (▲4.1%)。 農林水産省統計情報部によると、 4
月、 5月、 6月のブロイラー用ひな出荷羽数を、 それぞれ前年の同月と比べて
98%、 100%、 100%と見込んでいる。
3月の輸入量 前年を大幅に上回る
3月の輸入量は、 国内生産量が前年を下回って推移していることや、 円高を
背景に、 特に中国の鶏肉輸出環境の改善による対日輸出量の急増等から、 引き
続き増加傾向にあり、 4万3千807トンと前年同月を大幅に上回った(42.0%、
図2)。
最近の輸入量の動向をみると、 6年4月からは、 前年度を大きく上回って推
移し、 6年度は48万8千611トンと前年度を大幅に上回る結果となった(25.3%
)。
3月の在庫量 前年同月をかなり上回る
3月の推定期末在庫量は、 9万2千875トン(12.3%) となった (図3)。 6
年3月から7年2月まで在庫水準の高かった前年を下回って推移してきたが、
最近の輸入量の急増により輸入品在庫が積み増しされた結果、 一転、 大幅に上
回る水準となった。
3月の卸売価格 強含みで推移
3月のもも肉、 むね肉の卸売り価格 (東京・平均) は、 春の行楽シーズンを
前にした需要増加の期待から、 卸売り価格は強含みで推移し、 それぞれ、 515
円/kg、 263円/kgとなったものの、 前年同月比ではかなり下回っている (▲
7.5%、 ▲10.5%、 図4)。
4月は、 3月に引き続き強含みで推移し、 特に月末は連休前の需要の増加か
ら値を上げ、 もも肉が576円/kg、 むね肉が330円/kgとなった (農林水産省
「畜産物市況速報」 )。
95年も輸入は増加傾向?
最近、 急増している鶏肉の輸入量であるが、 4月に発表されたUSDA「Livestock
and Poutly‥World Markets and Trade」 によると、 主要な輸入相手国の95
年のブロイラー生産量及び輸出量は94年の見込みを上回ると推測している。
一方、 我が国の輸入量は、 わずかに増加すると推測している (右表)。 最近
は、 輸入量の急増から、 輸入鶏肉の増加量も増加の傾向にあるが、 円高に加え
、 相手国の輸出余力の増加により、 これまでと同様、 輸入の増加傾向が続くこ
とも予想される。
95年ブロイラー需給の見通し (単位:千トン)
|
生産量 |
輸入量 |
輸出量 |
消費量 |
米国 |
11,435(6.5) |
- |
1,468(12.2) |
9,957(6.1) |
ブラジル |
3,800(11.8) |
- |
492(7.0) |
3,300(12.2) |
中国 |
3,800(11.8) |
160(39.1) |
205(13.9) |
2,930(15.6) |
タイ |
700(2.9) |
- |
160(0.0) |
570(5.5) |
日本 |
1,125(0.8) |
415(1.2) |
5(0.0) |
1,956(0.0) |
全世界 |
32,996(5.6) |
2,978(4.9) |
3,950(5.3) |
30,198(5.9) |
注:1)数値は骨付き肉ベース
2)( )内は、対前年増減率 %
〔 牛乳・乳製品〕
3月の生乳生産量 前年同月をわずかに上回る
3月の生乳生産量は、 72万7千228トンと前年同月をわずかに上回った (1.5
%)。 北海道、 都府県別に見ると、 北海道は前年同月をやや上回り、 都府県も
18カ月ぶりに前年同月を上回った (それぞれ3.2%、 0.4%)。 また、 6年度の
生乳生産量を見ると、 838万7千536トンと前年をわずかに下回った (▲1.9%)
。 1日当たりの生乳生産量の推移を季節調整済み値でみると、 5年春以降、 ゆ
るやかな減少傾向を示している (図1)。
3月の乳製品向け処理量 やや上回る
3月の飲用牛乳等向け処理量は、 41万5千855トンと前年同月をわずかに上
回った (1. 5%)。 また、 1日当たりの処理量の推移を季節調整済み値でみる
と、 5年秋以降、 増加傾向であったが、 6年秋以降は、 伸びが小さくなって
いる (図2)。
6年度における乳製品向け処理量は、 前年同月を下回って推移してきたが、
3月は生乳生産量が回復し、 飲用牛乳等向け処理量の伸びが小さくなったこ
とから30万695トンと前年同月をやや上回った (3.9%)。
3月の脱脂粉乳価格 引き続き高値
3月のバターの生産量は、 乳製品向け処理量が増加したものの、 クリームの
生産量が伸びていることもあり8千235トン (▲6. 4%、 図3) と前年同月を
かなりの程度下回った。 一方、 脱脂粉乳はこれまで前年を下回って推移してき
たが、 1万8千595トン (3. 2%、 図4) と前年同月をやや上回った。
3月のバターの大口需要者価格は、 5カ月連続で950円/kgと底保合が続い
ている (▲2. 4%)。 また、 脱脂粉乳の3月の同価格は、 引き続き高値で、 1
万3千534円/25kgと安定指標価格を5. 4%上回ったものの、 この数カ月間の
伸びは小さい。
−カルシウム不足は変わらず−
厚生省が公表した平成5年国民栄養調査結果をみると、 国民一人当たりのエ
ネルギーやたんぱく質等の摂取量は、 全て前年と比べてわずかながら減少して
いる。 所要量からみた摂取状況をみると、 エネルギーはほぼ適正となっており、
カルシウムを除く各栄養素は所要量を上回っているが、 カルシウムはここ20年
横ばいの状態で、 今回も所要量 (600mg/人・日)を下回っており、 充足率は89
%だった。 今後、 社会の高齢化等に伴い増加が予想される骨粗鬆症の問題もあ
り、 カルシウム摂取増に努める必要があるとしている。
このような状況のなかで、 国民の健康に対する関心は年々高まっており、 こ
の機会を逃さず、 牛乳・乳製品の消費拡大につなげたいものだ。
〔 鶏 卵 〕
3月の主要5都市の総入荷量
前年同月をわずかに下回る
主要5都市(札幌、 東京、 名古屋、 大阪、 福岡)の総入荷量は、 3万4千436
トンと前年同月並みとなった (0.3%、 図1)。
3月のひな出荷羽数は、 1千128万羽と前年同月をわずかに上回った(1.1%)。
農林水産省統計情報部は、 4月、 5月、 6月のひな出荷羽数を前年の同月と比
べて、 それぞれ92%、 100%、 81%と見込んでいる。
3月の輸入量 前年同月をかなり上回る
3月の輸入量 (殻付き換算) は、 4千143トンと前年同月をかなり上回った(
10.0%、 図2)。
輸入品目別にみると、 主に菓子・ケーキ類の原料に使用される卵黄粉 (53.8
%)、 マヨネーズの原料等に使用される凍結卵黄等 (26. 4%) の輸入が依然堅
調となっている。
また、 輸入相手国別では、 全体の50%程度を占めるアメリカからの輸入が好
調で、 2千257トンと前年同月を大幅に上回った (18. 5%)。
3月の卸売価格 生産の増加から一転軟調に推移
3月の卸売り価格 (東京) は、 強制換羽明けの採卵鶏が生産を開始している
こと、 気温の上昇による生産性の向上等の要因により、 生産量が増加したこと
から、 軟調で推移し、 平均で187円/kg (▲6.5%) となった (図3)。
4月の卸売り価格 (東京全農M規格・速報) は、 連休需要の手当から下旬に
値を上げたが、 前半が軟調で推移したことから、 平均では先月より値を下げ170
円/kgとなった。
鶏肉補てん基準価格は据え置き
全国鶏卵価格安定基金及び全日本卵安定基金は、 平成7年度の鶏卵補てん基準価
格を163円/kgと据え置いた。 基準価格はこれまでの卵価低迷を受けて、 6年度まで
2年連続して引き下げられてきた (表)。
また、 高卵価月に、 加入生産量が負担する補てん積立金に、 さらに積み増しをす
るための基準価格も、 前年と同様の283円となった。
6年度の実施状況としては、 夏期に猛暑の影響を受けるまでの間、 生産量の増加
から卵価が低迷し、 4月から8月まで5カ月間連続して補てん金が交付されている。
最近の全農M規格の卸売り価格は、 連休中の滞貨が一気に入荷されたことから、
5月8日には15円値を下げ、 158円/kgと基準価格を下回っている。
補てん基準価格の推移 (単位:円/kg)
|
補てん基準価格 |
前年度との差 |
標準取引価格 |
高卵価価格 |
平成3年度 |
176 |
+16 |
209.01 |
296 |
4 |
182 |
+6 |
159.81 |
302 |
5 |
173 |
-9 |
156.04 |
293 |
6 |
163 |
-10 |
- |
283 |
7 |
163 |
±0 |
- |
283 |
資料:社団法人 全国鶏卵卵価格安定基金
注:標準取引価格は加重平均値
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