◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

有機物分解菌による早期たい肥消臭・熟成

(鹿児島県 柳田 宏一)

  畜産経営の規模拡大に伴い、 全ての畜種においてふん尿処理が重要な課題
となっている。 
 
  鹿児島大学農学部入来牧場では、 35haの採草地での飼料栽培に鶏ふんを大
量に用いており、 年2回の作付け時期にはたい肥の臭いが拡散し、 その消臭
が緊急の課題となっている。 また、 200頭の子牛の肥育試験を行っており、 
敷料の節約法の開発も同時に課題となっている。 
 
  そこで、 入来牧場では、 鹿児島大学農学部附属牧場と民間企業が開発した
有機物分解菌を用いて、 菌の有効性と熟成たい肥の利用法に関する実証試験
を実施した。
 

1 実証試験の方法

 (1) きゅう肥の消臭、 分解及び熟成化の促進に関する試験
 
    肥育牛のきゅう肥8トン、 生鶏ふん2トン、 バークチップ (樹皮) 2ト
     ンに有機物分解菌20kgを加えショベルローダーで混合し、 直径45mmの多
     穴パイプ1本の上に混合物をたい積したのち、 送風。 たい肥の切り返し
     は、 試験開始後4日目、 8日目、 12日目の3回実施した。
 
 (2) 熟成たい肥の敷料としての再利用に関する試験
 
   1パドック8頭づつの2区を用い、 熟成たい肥を敷料とした区と、 従来
    のおがくずを敷料とした区を設定し、 肥育牛の採食量や行動などを観察
    した。 
  
2 得られた結果

 (1) 発酵試験開始後4日目で鶏ふん独特の臭いは消え、 発酵時のきゅう肥内
   の温度は最高80℃となった。 14日目に熟成はほぼ完了し、 熟成たい肥の臭
   いはなくさらさらとなった。 
   
 (2) 熟成たい肥の敷料としての再利用は、 両区で採食量や休息行動に差は認
   められなかった。
    
  有機物分解菌を量産するためには大量の焼酎かすが必要であり、 処理に困
 っている焼酎かすを資源として活用する面からも、 農業及び関連産業にとっ
 て非常に有望な菌であると考えられる。 さらに種々のきゅう肥を用い、 有機
 分解菌の活用法を試験する計画である。  

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