◎巻頭言


「酪肉基本方針」 の審議を終えて

(財)日本食肉流通センター理事長
畜産振興審議会企画部会長
関谷 俊作




 畜産振興審議会企画部会では、 平成7年12月20日、  「酪農及び肉用牛生産の近

代化を図るための基本方針」 についての審議を終え、 農林水産省案をおおむね適

当であるとする答申を決定した。 審議の経過を振り返り印象に残ったことについ

て述べてみたい。 



目標生産費

 平成7年度からガット・ウルグァイラウンド農業合意が実施され、 関税以外の 国境措置はすべて関税に置き換えられる (関税化) とともに、 関税相当量は6年 間に15パーセント削減される等のことから、 農産物のコストの引き下げが緊急の 課題となった。 10年程度後に実現すべき目標生産費を示し、 これを目標としてコ ストの引き下げを進めることが提案されたのはこのためである。  目標生産費については、 これのみを独立して何らかの方法により算定すること も検討された。 しかし、 本来、 目標生産費は生産性向上のための経営の近代化と 合理化が行われた結果実現するものとして示されるべきである、 という考え方か ら、 基本方針では、 酪農及び肉用牛経営の指標においてそれぞれの経営類型にお ける生産費を示し、 これを基礎として生産費引き下げの目標を示すという方針が とられた。 これが 「生産性向上の目標」 であって、 現状の生産コスト (平成5年 生産費調査の費用合計) に対する割合、 たとえば酪農経営では7〜8割程度の水 準として示された。  なお、 「乳業の合理化」 の項目では、 10年程度後の平均的な製造販売コストの 低減の目標及び乳製品工場の整理・統廃合等の目標を具体的な割合として示して いる。 このことも今回の基本方針における新機軸である。

経営指標

 今回の基本方針における 「近代的な酪農経営及び肉用牛経営の基本的指標」 の 特徴の1つは、 酪農経営について、 フリーストール、 ミルキングパーラーの導入 等による規模拡大経営と並んで、 現状の飼養管理方式と規模で技術の高度化を図 る経営、 都市近郊型経営及び他作目との複合経営の指標を掲げるという、 いわば 現実的な路線がとられていることである。 肉用牛経営についても、 肉専用種では 繁殖経営、 肥育経営の区分に加えて土地条件の制約の大小と、 他作目との複合か 単一経営かの区分を設けるとともに、 乳用種ではほ育育成経営と肥育経営の区分 を設けるというようにきめが細かい類型設定がなされている。  それぞれの経営類型には前記のように生産費用の合計が示されている。 経営類 型の多様性を反映して、 生乳では1キログラム当たり46円から70円まで、 肉専用 種の繁殖経営では子牛1頭当たり225千円以下から250千円以下までの開きがある。

粗飼料生産の推進

 今回の基本方針では、 酪農及び肉用牛生産を 「我が国の土地利用型農業の基軸 として位置付ける」 と述べており、 また、 今回決定された 「農産物の需要と生産 の長期見通し」 では、 平成17年における飼料作物付面積を120万ヘクタール (同 5年102万ヘクタール) としている。  上記の経営指標では都市近郊型を除く各経営類型について飼料自給率及び飼料 作物作付延面積を掲げるとともに、 新たに 「飼料作物の生産に係る指標」 を設け、 寒地、 寒冷地、 温暖地及び暖地の3区分について、 単独作業型、 共同作業型及び 作業受託型 (寒地に限る) の別に、 作付体系、 サイレージ等の調製・利用形態、 作付規模、 機械体系、 目標単収水準等のほか、 生産性指標としてTDN1キログラ ム当たり費用価 (最低34円以下、 最高51円以下) を掲げている。  飼料生産基盤の強化のため、 土地利用の集積の促進、 耕種経営との連携の強化、 公共牧場や飼料生産受託組織の活用等の格段の政策努力が必要とされる。


元のページに戻る