◎地域便り


豚の人工授精導入時のコストを下げるには

鳥取県 三浦泰忠

 豚の人工授精を導入するには、 新たに器具機材を購入する必要がある。 そこで、 

鳥取県中小家畜試験場では人工授精導入の経費を少なくし、 豚の人工授精の普及

定着化を図るため、 農家で利用できる安価な精液保存器を考案し、 さらに宅配便

を利用した精液輸送技術の検討を行った。 



 農家で精液を保存するための簡易精液保存器は、 観賞魚用の水槽とサーモスタ

ット付きヒーター (15℃に設定) を利用し、 これを家庭用冷蔵庫 (5℃) に入れ

る (図1)。 家庭用冷蔵庫があれば、 約6千円の費用で済み、 市販保存器とほぼ

同じ温度管理が可能となる。 



 【図1 簡易精液保存器の構造】



 また、 輸送容器は豚の人工授精の第一人者である桑原康氏 (富士農場サービス

代表) 考案の容器を改良した。 発泡スチロールの2重容器で、 内容器に15℃の保

温剤で覆った精液ボトルを納め、 内側の容器と外側の容器との間に温水ボトル又

は保冷剤が入れられるようにし、 夏は凍結保冷剤、 冬は20℃の温水を入れたボト

ル、 春と秋には15℃の保温剤を入れて外気温の影響を受けにくくした (図2)。 

この容器に精液ボトルを入れ、 宅配便を利用して試験場から県内の農家に輸送し

ている。 現在も到着時の温度調査を続けているが安定した温度になっている。 



 【図2 試作輸送容器の構造】



 輸送方法の確立により精液の入手が容易になり、 また簡易精液保存器の開発に

より届いた精液は経費をかけずに安定的に15℃保存することができるため、 今後、 

豚の人工授精の普及が期待されている。 




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