◎地域便り


肉牛セミナー開催、 腹づくりのできた子牛が重要

栃木県/杉井 挙
 今年8月、 栃木県宇都宮市郊外の農林公園 「ろまんちっく村」 で肉牛セミナー
が開催され、 肉用牛生産農家を中心に農協、 県等関係機関の担当者約130名が
集まった。 本セミナーは系統の生産者が組織する県系統畜産経営者協議会と農協
担当者が組織する県農協畜産技術者連絡協議会の共同で開催された。 

 当日は、 講演会、 優良事例発表等があり、 講演会では、 全農研究所の澤明先生
が 「新しい肉牛肥育技術について」 と題し、 肥育のポイントは体型の揃った牛群
を早くから肥育することと説明した。 最近の素牛は、 資質系の脂肪の入りやすい
牛から、 増体系といわれる脂肪細胞の少ない牛に変わり、 サシが入りにくくなっ
ている。 そのため、 脂肪細胞は生後12〜15カ月に増加するという牛の生理を
十分理解し、 できるだけ早期に肥育を開始する必要があると説いた。 

 優良事例発表は、 乳雄肥育、 交雑種肥育、 和牛肥育の3部門からそれぞれ特徴
ある発表があった。 特に黒毛和種肥育牛30頭を飼養する栃木県湯津上村 (ゆず
むらかみ) のA. Hさん (35才) は、 平成7年度から今までに41頭を販売し、 
平均枝肉重量477kg、 1頭当たり平均販売額約108万円と抜群の成績。  「ポ
イントは素牛選び」 というAさん。 以前は県外導入を行っていたが、地元から導入
すれば子牛の育成段階 (腹づくり) からチェックできるため、 今ではもっぱら矢
板市場から子牛を導入している。 また、 飼養管理面ではエサを十分食い込ませる
ため、 牛床、 水、 換気には細心の注意を払い、 15カ月令から出荷までは1日当
たり配合飼料10kgを食い込ませる。 本人も勉強熱心で出荷にはできる限り食肉
市場まで足を運び、 自分の作った牛の結果や購買者の意見を聞き、 反省材料にし
ているという。 しかし、 会場を一番うならせたのは、Aさんの 「最近、 子牛市場で
は既に肥育されている牛が多い。 肥育農家が期待しているのは体重ではなく、 腹
がいかにできているかということ。 繁殖農家は子牛を高く売ることばかりでなく、 
そのことを十分考えて欲しい」 という一言。 繁殖農家だけでなく、 会場に集まっ
た多くの人達が真剣に耳を傾けていた。 


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