◎地域便り


ゼロからスタート 乳肉複合で法人化

鳥取県/山崎 和夫


  「とにかく動物が大好きで……」 と語る (有) 菊丸ファームの社長上島孝博さ
ん (41) 。 現在肥育牛120頭 (ほとんどF1) 、乳牛15頭、 繁殖和牛10頭
を飼っている。 他に水稲80アールを栽培している。 

 この経営は全くのゼロからの出発だった。 上島さんは北海道にある酪農学園大
学を卒業後、 帰郷して県畜産農協に勤めた。 11年間農家に牛の管理を指導する
中で牛飼いのノウハウを学んだ後、 平成2年に農協を退職、 独立した。 

 それ以前の昭和61年、 農協に勤務の傍ら、 鳥取市から12kmほど離れた中山
間地の離農者の牛舎を取得、 2頭の乳子牛を育て始めた。 父、 孝太郎さん (73
才) の援助を得て退職するまでの4年間、 給料やボーナスでぬれ子を買い半年後
に市場で売り、 その収入でぬれ子を買うという繰り返しで増頭を図ってきた。 肥
育を始めてから3年後、 運転資金を確保するために酪農を、 そのさらに3年後に
は、 和牛繁殖経営も始めた。 

 肥育には豆腐粕 (おから) を主体とした自家配合飼料を使っているが、 肉質に
配慮しながらも、 できるだけ低い飼料コストとなるようぎりぎりの配合割合を模
索している。 

 牛舎のうち乳牛舎1棟は離農した農家から取得したもの。 肥育牛舎3棟は材木
商をしていた父孝太郎さんの手作りで、 古い電柱を柱にするなど徹底して低コス
ト化を図っている。 

 平成7年8月、 優秀な人材を雇用するため、  (有) 菊丸ファームを設立。 経営
規模拡大を狙って昨年から高校と大学卒の女性2名をスタッフとして迎えた。 そ
れまでは父と二人だけの経営 (奥さんは会社員) だったが、 牛の世話が好きとい
う若い戦力が加わり、 仕事がはかどるだけでなく 「牧場がパッと明るくなった」 
と喜んでいる。 女性の手で畜舎内外に花一杯の美化が進められている。 

 上島さんは 「将来は、 牛肉の生産から販売まで手がけたい。 また畜産にこだわ
らず、 有機農法による米や野菜の生産と消費者への直売も考えている」 と語る。 
元気のある法人として今後の事業展開が注目されている。 

【低コスト化を図り、牛舎も手作り】


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