◎地域便り


「常陸牛」の確立をめざして

茨城県/福田 英仁


 茨城県では、県北の山間地域を中心に約6,000頭の繁殖牛が飼養されており、地
域の重要な産業として年間約 4,000頭の子牛を県内家畜市場に素牛として出荷し
ている。

 本県の銘柄牛肉「常陸牛」は、本県で生産される黒毛和種のうち枝肉格付けが
A又はBの 4以上の優れたもののみを指定している。その肉質は東京で行われる
各県の共励会の中でも常にトップクラスを誇るなど折り紙付きである。しかし、
それを支える種雄牛は、昭和59年に作出された「谷福 6号」以降、造成されてお
らず、現在「常陸牛」の素牛はその多くを県外に依存しており、和牛繁殖農家か
らは、肉質改良能力が優れた種雄牛の造成が熱望されていた。

 そうした中、茨城県が畜産試験場で実施している黒毛和種種雄牛の造成事業で、
期待の種雄牛「明光 4号」の間接検定が終了した。枝肉調査の結果、全国トップ
クラスの産肉改良能力を有していることが判明した。

 「明光 4号」の枝肉成績、脂肪交雑BMS3.1※1は本年度の全国間接検定成績中第
5位の成績であった。特に注目されるのはロース芯面積で、全国平均を10cm2も上
回る55cm2の成績を収めた。さらに皮下脂肪厚も1.7cmと薄く歩留基準値※2が74.
5%にも達しており、肉用牛として最も重要である産肉能力に優れた種雄牛である
と言える。

  「 明光 4 号 」の父牛は兵庫の茂金波を祖父にもつ「谷福 6 号」、また、母
牛の「よしひかり 5号」は高萩市の和牛繁殖農家鈴木肇氏が昭和63年に島根から
導入したもので、島根の第 7 系桜と兄弟の「糸光号」を父にもっている。

 生産者の鈴木氏は、今回の成績を我が子のことのように喜んでおり、常陸牛の
銘柄確立のために、「明光4号」に大きな期待がかかっている。これをきっかけと
して、他の銘柄牛肉の競争意欲も高まり本県和牛改良事業全体の取り組み活性化
の端緒となり、常陸牛の評価が確立され、さらなる改良が急速に進むのではない
かと生産者をはじめ和牛関係者の熱い期待が集まっている。
【検定供試牛枝肉断面】

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