群馬県/勝山 均
黒保根村は群馬県の東端、名峰赤城山の東麓の山村である。村には「わたらせ 渓谷鉄道」が走り、新緑、紅葉の季節には観光客で賑わう。村の産業は観光の他 に農林業があるが、後継者不足等により低迷しているのが現状である。なかでも 養蚕業の後退は著しく、桑園の荒廃は大きな問題となっていた。 そうした中で桑園跡地を利用して鶏卵生産を行い、地域活性化を望む声が持ち 上がり、昭和58年から黒保根村放し飼い生産組合を組織し鶏卵生産をスタートし た。平成 8年には、県単事業の「元気たまごの里づくり事業」により巣箱・給餌 機・ひな等を導入し生産体制を整備強化した。 現在、この組合には、15戸の農家が加入しており、平飼いに適したコメット系 統を中心に飼育羽数約 6,000羽を飼養している。桑園は周囲を簡単な金網で囲み、 小屋・巣箱・給餌・給水施設を配置している。広いところでは 2haもの桑園を利 用している。昼間は鶏は自由に桑園内を歩き回り虫や草を食べ、夜間や産卵時は 小屋に入るように習慣づけられている。また、有精卵の生産が可能となるよう雌 20羽に対し雄 2 羽の割合で飼っている。農家は朝夕の 2 回小屋の開け閉めを行 い、給餌・集卵するだけなので、お年寄りやご婦人にも作業が容易であり、下草 や桑の下枝の葉を食べることから桑園跡地の保全にもなる。 販売は、JA黒保根村が担当し、農協、経済連を通じて県内の販売はもとより 首都圏に出荷し、「放し飼いたまご」として好評を得て、価格も有利に販売され ている。また農協の生産物直売所「やまびこ」で観光客に地域特産物として販売 し、目玉商品となっている。元気たまごの生産で山村は活気づき、「人も鶏も元 気」である。
【桑園跡地で、平飼いされている】 |