◎地域便り


水分予備調整で、良質たい肥生産

宮城県/菊田 正信


 飼養する家畜から出るふん尿をいかに適切に処理するかが、畜産農家にとって
最も重要な課題となっている。

 宮城県北上町は、古くから酪農の盛んな町だが、地理的条件からどの酪農家も
土壌還元できる耕地が少ない。そこで、昭和59年度に家畜ふん尿処理センターを
設置し、地域の畜産公害防止と、周辺耕種農家への良質な有機質資源の供給源と
して、町全体で積極的にこの問題に取り組んできた。

 ところが、酪農家が持ち込むふんの水分含量が、当初予定していた以上に高く、
強制発酵施設の稼働率を低下させる原因となり、センターとしては一部受け入れ
を制限しなければならない状況になっていた。

 そのような中、北上町で経産牛30〜50頭規模の酪農家と耕種農家から成る3つ
の家畜ふん尿処理組合は、県の単独補助事業である家畜ふん尿発酵促進対策事業
を活用して、平成 9 年初めに、総事業費約1,800万円でパイプハウス式発酵乾燥
施設をそれぞれ設置し、問題解決に取り組んだ。

 施設は、 1 m2当たり 1 万 3 千円〜 1 万9 千円と建設コストも低く、毎日の
作業管理が簡単で運転経費も安いなど、経営環境が厳しい中でも十分対応できる
内容となっている。

 3組合の酪農家は、これまで高水分のため、ふん尿のセンターへの常時搬入が
できなかった。しかし、ふん尿を夏10日間、冬14日間程度かけて、かくはん、乾
燥させ、水分を70%程度以下とするこの施設の設置後、センター搬入が可能とな
り、敷地内にふん尿が長期間放置されることはなくなった。

 それでも、敷地の関係から十分な施設面積を確保できなかった施設があったり、
冬場の低温時期の稼働方法に工夫を要するなど、今後も管理上の課題は抱えてい
る。

 しかし、このような試みは、農家自身の積極的な取り組みとして、他の利用酪
農家や関係者に大きな刺激を与え、地域のふん尿処理問題の解決策の一つとして
大きな期待が寄せられている。
【良質たい肥づくりに取り組む大内健一さん(38)】

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