◎地域便り


河川敷草地の共同利用で酪農経営の安定を

三重県/伊藤 雄一


 三重県のほぼ中央に位置する久居市に流れる雲出川の河川敷を共同利用して酪
農経営の安定を目指している農家群を紹介する。

 昭和55年、粗飼料増産とその効率利用で酪農経営の安定を図ることを目的に、
雲出川河川敷を共同採草地(約18ha)として利用する草地利用組合、久居市酪農
組合を、市内10戸の酪農家で結成。翌56年、自給飼料生産総合振興対策事業を利
用して大型飼料作用機械を導入した。

 三重県下では、同年代に河川敷を共同利用する酪農組合は多く作られたが、現
在存続しているものはこの組合だけである。

 発足当時は、高水分サイレージ(FRP(強化プラスチック)サイロ)体系であっ
たが、平成3年、飼料利用高度化事業を利用して、ラッピングマシン等を導入し、
全てイタリアンライグラスのロールベールサイレージ体系に移行した。更に平成
8年、自給飼料生産事業を利用して、ディスクモア等を導入、現在に至っている。
参加農家は、当初10戸でスタートしたが、廃業する農家が相次ぎ平成3年には5
戸となり、現在4戸であるが、結束は極めて強く、将来も酪農経営を含めて、河
川敷草地の共同利用を続けて行くことを確認している。また、4戸になったこと
で生産粗飼料の各農家への配分が大幅に増加し、その分飼料自給率も、より向上
した。

 飼料生産の目標は、イタリアンライグラス2.5t/10a(TDN318kg)、作業方式は
全員出会い作業による共同飼料作物生産、共同草地の利用で飼料自給率10%向上、
労働時間1.96時間/10a、生産コスト42.3円/TDNとしている。

 平成 9 年の実績は播種面積16ha(18ha中の栽培可能面積)、刈り取り 1 回目
280梱包(平均475kg、水分50%ラップサイレージ)、同 2 回目80梱包、同 3 回
目128梱包の計488梱包の収穫で、 1 戸当たり122梱包の収穫となった。労働時間
は年間約 3 時間/10aとなり目標をオーバーしたものの、収穫量は生草換算で約
3.6t/10a(生産コスト32.8円/TDN)と目標数字を大きく上回り好成績となった。

 飼料自給率は 4 農家とも 9 年度は30〜35%(三重県平均10〜20%)で、県下
では極めて優秀な酪農家群である。

 共同草地の経費については、久居市酪農組合の会費として、1農家当たり50,0
00円/月×12カ月=600,000円を支払い、全てを賄っている。

ラップサイレージの分析結果(平成9年度1番刈り)

 (分析は三重県農業技術センター畜産部)

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