鳥取県/山崎 和夫
鳥取県大栄町西高尾は、「大栄すいか」で有名な県下でも有数の農業地域であ る。西高尾畜産団地の周囲には黒ボク土壌(火山灰土)が広がり、日本海の眺望 が良く、非常に美しい。 この西高尾団地(4戸)のひとり長谷川俊一さん(54)は昭和38年に高校卒業 と同時に就農。米・すいか等も作る複合酪農経営を行っていたが、昭和47年、第 2次農業構造改善事業によって造成された西高尾酪農団地へ入居するのを機に、 乳牛30頭、肥育牛80頭の乳肉複合経営に踏み切った。 同団地は西高尾酪農組合が管理主体となっているが、飼料作物(1戸7ha)の 栽培を除くとほとんどの作業は、個別に行っている。 長谷川さんは、昭和63年に水田肉用牛等生産整備事業によって50頭牛舎を建築 し、乳牛の経産牛50頭、育成牛23頭、肥育牛(F1)35頭、和牛13頭の経営を実現 した。しかし 2 〜 3 年前から和牛子牛価格低迷から和牛部門をとりやめ、酪農 と乳雄や、経産牛の肥育に移行した。長谷川さんは、地域のリーダー的存在とし て、積極的に新しい技術や経営に取り組んでいる。 1 先頭に立って受精卵移植(ET)に取り組む 県畜産試験場がETについて昭和59年から研究を重ね実績をあげていることに刺 激され、61年から組合を組織し、組合長となって61年から取り組んだ。 長谷川さんは、肉用牛の低コスト、安定生産を狙って自家飼育の和牛はすべて 供卵牛として利用、年間50〜60頭の子牛を生産していた。しかし、和子牛生産の 収益性が低下したことから、これを止め、現在では北海道から導入した2万キロ 級の高泌乳牛「フローレット」系を供卵牛として受精卵を採取、高能力牛の増殖 に努めている。 2 県下でもっとも早い粕利用 経営コストの多くを占める飼料費低減のため県下では最も早く、組織的に粕利 用を図っている。 愛知県などの先進視察でビール粕、豆腐粕等の利用に着手、乳牛、肥育牛とも に粕サイレージとして給与している。その基本となる配合例を揚げると、おから 16トン、ピートパルプ1.5トン、コーン 12 トン、ふすま0.5トン、アルファルフ ァーペレット 1 トン、大豆粕0.3トンで、牛の種類、状態より配合飼料で調整を 図っている。 3 ロールベール体系でエサづくり 団地では各戸が 7 haの飼料畑を持っているが、長谷川さんは 2 年前からイタ リアンの周年栽培に切り替え、ロールベール作業体系でラップサイレージを作り、 省力化を図っている。 また、国道9号線及びJR山陰本線沿いの水田裏作や転換畑約40haを町酪農組合 (19戸)で借地、イタリアンなど共同で播種から刈り取りまで行っている。この 飼料作物の集団栽培は30年以上の歴史をもち、県下でも有名で高く評価されてい る。 4 ゆとりをもって生活を楽しむ 長谷川さんは、「人にも牛にも無理をさせない経営」を目標とし、普通の日の 作業時間は平均5時間くらいとしている。「後継者が残るような条件整備のため にも、働きづめの生活は解消したい。それには作業を効率的にこなし、自分の時 間を少しでも作る努力が必要です。ヘルパー制度を活用して家族旅行をしたり、 牛舎の周辺を花壇で飾るような心のゆとりを持ちたい」と語っていた。 今では奥さんとテニスやゴルフを楽しんだり、マラソン大会に参加したりして いる。奥さんは簿記記帳のベテランであり、青色申告はもちろんのこと、経営分 析、経営改善計画にも役立てている。奥さんは男女夫同参画活動の実践者として も高く評価されている。元のページに戻る