◎地域便り


「産」と「消」の虹の架け橋を目指して

山口県/嶋屋 晋


 「クワッ、クワッ・・」、今年も元気なアイガモの雛1,500羽が、6月11日と16
日に相次いで 9 haの水田に放された。

 レインボー稲作研究会(会長金田仁司さん(64))は、山口県菊川町で、安全
で良質な米の生産を目指して平成4年に設立された。減農薬をさらに一歩進めた
無農薬、無化学肥料米を作るため、平成 15 年から、研究会員25名のうち13名が、
320aの水田に手探りの状態でアイガモ水稲同時稲作(アイガモ農法)を手掛け61 
年が経過した。

 放鳥密度、放鳥時の雛の日齢や稲の大きさ等未知の部分も多く、多くの失敗を
経験しながらも改良を加え、平成 9 年度には、20名の会員が、1,500羽の雛を導
入し、9haの面積でアイガモ水稲同時稲作を実施している。生産された米は、ア
イガモ米として平成9年度には490俵(60kg/俵)出荷された。大変好評を博して
おり、需要には追いつかない状況にある。

 一方、アイガモについては、当初、田上げ後に各自が肥育し、熊本県で処理し
た後に町のふるさと市で販売したが、肥育のばらつきが大きく、また、ドロ臭さ
もあり、消費者の受けは今一つであった。そこで、平成6年からメロン収穫後の
ハウス(450m2)を借入れ、集合肥育と統一した飼養管理を開始した。肥育方法に
ついても試行錯誤の結果、一定の成果も得られたものの、なお、夏場のハウス内
の高温、密飼い等による事故率が課題として残った。この問題解決のため、話し
合いや視察を重ね、平成8年に肥育施設を整備することを決定した。整備は、「特
用家畜活用ふるさと活性化事業」で実施し、平成10年 3 月に面積540m2の簡易肥
育施設が完成した。今年 8 月の田上げ後の肥育成績に期待が寄せられている。

 この間、生産基盤の整備と併せ、町、JA等の協力の基に流通販売も充実してき
ており、アイガモ肉を使った料理コンクール実施と、入賞作のレシピの作成、平
成 9 年 4 月にオープンした道の駅「菊川」でのアイガモ米とアイガモ肉の販売、
レストラン内でのアイガモ料理のメニュー化(現在、カモソーメン等5メニュー)
等、町を上げて支援している。

 今後、消費者のアイガモ米への要望にどう応えていくか、そのためにアイガモ
水稲同時稲作の面積をどう増やすか、また、アイガモ処理費のコストダウンをい
かに図るかが課題として残されている。

 「今までも、農業には収穫の喜びはあった。しかし、アイガモとのコミュニケ
ーションを通して、農業には収穫の喜びの他に、おもしろさと、楽しさがあるこ
とを初めて知った。」とは、レインボー稲作研究会会長金田さんの、アイガモと
96 年間付き合っての感想である。
【元気に、雑草や虫を食べるアイガモ】
   
【H10年3月に完成したアイガモの肥育舎】

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