鹿児島県/本山 夕起子
鹿児島県では、低コストで効率的な生産方式のモデル牛舎で肉用牛の増頭を図 ろうと、平成9年度から「効率的肉用牛繁殖経営肥育成対策事業」(県単独事業) を展開している。 平成9年度は県内に15カ所設置し、うち薩摩郡内に30頭規模の繁殖牛舎を2カ 所設置した。 鹿児島県川内市及び薩摩郡は県の西部に位置する水田地帯である。畜産部門は、 黒毛和種の繁殖経営が主であり、管内2,232戸の農家のほとんどが、子取りめす牛 1 〜 2 頭の零細農家である。管内の和子牛が出荷される薩摩中央家畜市場は、 先の全国和牛共進会でも好成績を上げた種雄牛「平茂勝」のおかげもあり、全国 的にも有名な市場の一つとなっている。しかしながら、高齢化等で肉用牛農家は 年々減少しており、飼養頭数も前年度をやや下回って推移している。 同郡内宮之城町の繁殖・肥育一貫経営農家(子取りめす牛30頭、肥育牛50頭) に設置された繁殖牛舎は、378m2で、間伐材が利用され、通路を飼槽と兼用する など、コスト低減と省力化の工夫が図られている。事業費は4,935千円、13万円/m2 と通常の建築費の半分以下で、事業費の約 4 割を県、町で補助している。 牛房は連動スタンチョンを利用したパドック方式で、個体管理がしやすく、人 工受精及び観察が容易であることから生産性の向上につながり、また開き戸を設 置していることからふん尿処理がしやすい。飼槽内にふん尿が入らないよう、牛 房内側にステップを設け、また、採光、換気等、低コストでありながら様々な工 夫を施し、管理のしやすい造りになっている。今年度も、郡内で3カ所のモデル 牛舎の設置が計画されている。 今後とも、後継者や規模拡大志向農家を対象に低コスト牛舎の普及と飼養頭数 の拡大を推めていきたい。
【彩光、換気ともに良好な越屋根とした】 |
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【個体管理やふん尿処理のしやすい牛舎内部】 |