★ 農林水産省から


黒豚表示のあり方の検討について

畜産局食肉鶏卵課 係長 藤倉 裕


 近年、黒豚と表示される豚肉の販売が増加する中で、消費者や生産者等からそ
の表示について疑問を呈する声が寄せられるようになった。

 このため、平成9年度に販売店及び消費者に対してアンケート調査を行ったと
ころ、

(1)「黒豚の定義付けが必要である」又は「既に定義があると思っていた」と
   する者の割合が多いこと
(2)わが国における豚の生産状況等が良く知られていないこと
(3)黒豚であるとの証明が必ずしも十分ではない例が見受けられること

が明らかとなった。

 農林水産省としては、このような状況を踏まえると、消費者の適切な商品選択
や適正な食肉流通を推進する上で、現在の黒豚表示については問題があり、何ら
かの定義が必要であると考え、10年度に、財団法人日本食肉消費総合センターを
事務局として、消費者、流通業者、生産者で構成する専門委員会及び中央委員会
において、黒豚の定義付けに関する議論を行った。本稿では、その検討内容を報
告する。


専門委員会及び中央委員会での検討内容

第 1 回専門委員会(平成10年 7 月24日)

(1)議題

 我が国での豚の主要品種の生産状況及びその特徴等について

(2)主な内容

 ア 昭和40年代初期までは、豚肉の生産は中ヨークシャー種(白色)及びバー
  クシャー種(黒色)の純粋種によるものがほとんどであり、バークシャー種
  が黒豚と称されていた。
 
 イ しかしながら、現行の肉豚の生産は、デュロック種を父親として使用した
  3元交雑種が多い。

 ウ 米国では、主としてわが国への輸出向けに、米国系バークシャー種及びそ
  の交雑種の生産が増加している。

 エ 毛が白色であるランドレース種等とバークシャー種との交雑種の毛色は、
  白くなる。

第 2 回専門委員会(平成10年 9 月24日)

(1)議題

 食肉に関する表示制度の概要について

 @食肉の表示に関する公正競争規約
 A食肉小売品質基準
 B商標登録制度
 C特定JAS規格

(2)主な内容

 (1)の食肉関係の 4 つの表示制度についてその概要の説明を行い、各制度に
ついて質疑応答を行った。

 ア 食肉の表示に関する公正競争規約(全国食肉公正取引協議会が運用)にお
  いては、不当景品類及び不当表示防止法の趣旨を踏まえて一般消費者の適切
  な商品選択を保護する観点から、食品衛生法、計量法等の告示等に基づく事
  項が規約の基本となっており、会員は当該規約を遵守する義務を負う。

 イ 食肉小売品質基準(畜産局長通達)については、食肉の部位別表示や輸入
  肉のその旨の表示等が内容であるが、最近では、狂牛病問題の際に輸入食肉
  の表示に代えて輸入品の原産国(地)表示にするよう規定を改正した。

 ウ 商標登録制度は、自己の提供する商品と他者の商品との識別を通じ、自己
  の商品の差別性を確保しながら、当該商品の販売者等の権利を保護する制度
  である。単なる「黒豚」という表示は、@慣用されている商標、又は、A需
  要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標と
  判断される可能性が高いため、商標登録は認められないであろう。ただし、
  ○○黒豚○○のように、前後に何らかの名詞等を付して、他者の提供する商
  品との識別力を有する場合は登録の可能性がある。

 エ 特定JAS制度については、@特定の品種の豚を生産する全国団体が存在しな
  いこと、A中立的な第三者機関として製品の格付業務ができる全国的な団体
  が存在しないことから、単なる「黒豚」という表示は、現時点では特定JAS規
  格として運用できる状況ではないと考えられる。

 オ その他

   牛肉の和牛表示については、既に食肉の表示に関する公正競争規約におい
  て、「黒毛和種」、「褐毛和種」、「日本短角種」、「無角和種」の4品種
  に限っている。豚の品種に関する規定はない。

第 3 回専門委員会(平成10年11月27日)

(1)議題

 黒豚の定義付けの方向性と具体的表示販売方法について

(2)主な内容

 ア 黒豚の定義については、9年度に行ったアンケート調査の結果、@販売者
  において明確な定義の必要性を感じている者が多数を占めていること、A黒
  豚は特定の品種(主にバークシャー種)と考えている販売店及び消費者が多
  いことから基本的には豚のバークシャー種を黒豚として定義することを想定
  した議論を進めたい。

 イ 体の 3 分の 2 程度が黒色であるハンプシャー種は黒豚に含めない。

 ウ 米国系バークシャー種については、

  @ 米国系は元々英国のバークシャー種を19世紀に米国に導入し改良したも
   のであり、遺伝子の配列については、英国系とかなりの割合で重複してい
   ると考えられ、遺伝子レベルで英国系と米国系の判別はできないであろう
   こと。

  A (社)日本種豚登録協会のバークシャー種の登録審査基準において英国
   系バークシャー種と米国系バークシャー種は区別していない。

  B 米国系と英国系を生体又は豚肉段階で、高い確率でもって区別しうる科
   学的知見が現時点では考えられない。

 以上のことから、米国系バークシャー種を含めた形で、バークシャー種を特定
品種として黒豚の定義の検討を行う方が望ましいと考えられる。

 エ バークシャー種との交雑種について

  @ マスコミで、バークシャー種の血統(血筋)を受け継いでいる(バーク
   シャー交配されたことのある交雑種)であっても毛が白いものについて黒
   豚と表示・販売するのは不適切ではないかとの消費者の意見が報道された
   ことがあった。

  A 現在の流通実態において、交雑種由来の黒豚表示で販売される豚肉の量
   の方が多いと推測される中で、これを含めないこととした場合、流通・販
   売サイドにおいて混乱を生じると考えられる。

    B 現在の知見では、バークシャー種の純粋種とその他の豚の純粋種の区別
   は生体では可能なものの、交雑種は生体ではその品種の由来を明確に断定
   することができない。豚肉の段階では、将来的には、遺伝子解析技術を使
   用して純粋種の品種を分析できる可能性があるものの、交雑種の品種構成
   を正確に分析できる可能性は少ないであろう。
 
  以上のことから、交雑種の扱いについては関係者の意見を広く聴取する方が
 望ましいと考えられる。                       

 以上のことを確認し、具体的な表示販売方法(案)についての検討を行った。


今後の黒豚表示のあり方について

 第3回専門委員会及び中央委員会で提示・検討された具体的表示販売方法(案)
は、以下のとおりである。

 なお、平成11年1月28日には、中央委員会が開催され、これまでの専門委員会
での検討内容等が報告されるとともに、黒豚の表示販売方法(案)についても了
承された。
 案の 1

 「黒豚」とは、純粋バークシャー種同士の交配から生産された豚をいい、この
豚肉のみについて「黒豚(肉)」と表示できるとする方法。

 案の 2 

 「黒豚」とは、純粋バークシャー種同士の交配から生産された豚をいい、この
豚肉について「黒豚(肉)」と表示できることととする。ただし、純粋バークシ
ャー種と他品種との交配から生産されたもの(血統割合100%未満〜50%以上に限
る。)について、交雑種であることが消費者に対し分かるような表現として○○
黒豚又は黒豚○○という限定したものに限り、例えば「交雑黒豚」等の表記を認
める方法。

 例:「ハーフ黒豚」、「混血黒豚」、「雑種黒豚」、「三元黒豚」、「クロス
   黒豚」、「エフワン(F 1 )黒豚」等

 案の 3 

 「黒豚」とは、純粋バークシャー種同士の交配から生産された豚をいい、この
豚肉のみについて「黒豚(肉)」と表示できるとする方法。ただし、純粋バーク
シャー種と他品種との交配から生産されたもの(血統割合100%未満〜50%以上に
限る。)について、黒豚が交配されていることが消費者に対し分かるような表現
として、銘柄名の参考になる( )内に限り、バークシャー種の血統割合を表示
するために黒豚の表記を認める方法。銘柄名には黒豚という表記は認めないもの
とする。

 例:「田中豚(黒豚50%)」、「田中豚(黒豚血統割合50%)」、ただし、「田
   中黒豚(黒豚血統割合50%)」というような表記は認めないものとする。
 今後は、この3案について、国民の皆様からの意見を聴取し、その聴取結果を
参考とし黒豚表示のあり方について検討を行い、平成11年4月中にその内容につ
いて決定する予定です。

 農林水産省では、「黒豚表示のあり方について」やそれ以外の食肉の表示に対
する幅広いご意見をいただきたいと考えています。つきましては、本稿をお読み
の皆様からも、下記宛先まで、返答の様式例に沿った形でご意見をいただきたい
と考えております。是非ご意見をお送り下さい。

 郵送の場合

 〒100−8950
  東京都千代田区霞ヶ関 1 − 2 − 1 農林水産省畜産局食肉鶏卵課 宛

 電子メールの場合

  kurobuta_hyouji@nm.maff.go.jp

「黒豚表示のあり方について(案)」に対する意見(返答の様式例)
区        分
記     入     欄
フ  リ  ガ  ナ
氏名(又は団体・企業名)

 

年        齢

 

職        業

 

住        所

 

 なお、「黒豚表示のあり方について(案)」の詳細は、農林水産省のホームペ
ージ(http://www.maff.go.jp)の中の「新着情報」又は「審議会等」の欄に掲載
しています。

◎以下の質問にお答えください。

問 1 .あなたは「黒豚の定義をつくるべきだ」と思いますか?
	該当するお答えを番号でご記入下さい。また、その理由をご記入下さい。

 1 はい(賛成)→問2へ  2 いいえ(反対)  3 その他 →問3へ

    回答:     理由:

問2.[問1で「 1  はい「賛成」と答えた方へ]それでは「黒豚はバークシ
  ャー種純粋とする」という案についてはいかがでしょうか?該当するお答え
  を番号でご記入下さい。また、その理由をご記入下さい(案の1〜3のいず
  れかに賛成の方は「 1  賛成」をお選び下さい)。

 1 賛成→問2−1へ    2 反対       3 その他 →問3へ

    回答:     理由:

問2−1.[問2で「1 賛成」と答えた方へ]上記の「案の1」についてはい
  かがでしょうか?該当するお答えを番号でご記入下さい。また、その理由を
  ご記入下さい。

  1 賛成→問3へ     2 反対→問2−2へ 3 その他 →問3へ

    回答:     理由:

問2−2.[問2−1で「2 反対」と答えた方へ]上記の「案の2」と「案の
  3」についてはどちらに賛成ですか?該当するお答えを番号でご記入下さい。
  また、その理由をご記入下さい。

  1 案の2に賛成→問2−3へ 2 案の3に賛成 3 その他 →問3へ

    回答:     理由:

問2−3.[問2−2で「1案の2に賛成」と答えた方へ]交雑種の豚であるこ
  とを消費者に伝えるにはどのような名称がよろしいでしょうか?消費者に分
  かりやすい名称の案がありましたら自由にいくつでもご記入下さい。


問 3 .食肉の表示についてのご意見・ご要望についてご記入下さい。

 貴重なご意見ありがとうございました。

 この調査は、調査分析以外の目的に使用されることはありません(年齢、職業、
住所(都市名まで)は公表されることがありますので御留意下さい。)。


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