長崎県/岩永 安史
「放牧を始めてから牛飼いが楽になった」というのは富江町の女性繁殖農家E・I さん。昨年9月、長崎県畜産会の呼びかけで行われた肉用牛放牧研究会現地検討 会での一コマだ。 平成8年度に国の補助事業(産地畜産確立促進事業)で放牧地の整備を行って いたが、その矢先ご主人の突然の逝去。事業を止めようかとも思ったが、周囲の 協力とご主人の遺志を継ごうとの思いで実施に踏み切った。草地が定着した今は、 もう少し頭数を増やそうかとも考えている。 長崎県の西に浮かぶ五島では、近年遊休地を利用した放牧への取り組みが増え ている。 高齢化や多頭化など理由は様々だが、労力とコストの軽減の面で評価され、毎 年草地が増えている。 県畜産会では子牛の生産コストの低減に有効な技術として放牧を位置づけてお り、平成9年から放牧研究会を開催し、県下の畜産農家・技術者に啓蒙してきた。 県畜産試験場での試験圃、研究結果を中心とした過去2回の研究会の中で、現地 での取り組みを見聞したいという要望が多かったため、県下で先行して放牧技術 が普及しつつある五島地区での現地検討会の開催となった。冒頭のE・Iさんをは じめ、富江町、三井楽町の4人の放牧実施農家の圃場を訪ね、直接、話が聞けた ため、具体的なイメージがわいた、と参加者には好評であった。 その後、研究会に参加した他地区の農業者からも事業化も含め放牧への取り組 み要望が上がってきており、シバの根のように、静かに着実に放牧の輪は拡がっ てきている。
【牧草のすっかり定着した草地】 |
【放牧地を見学する研究会のメンバー】 |