★ 事業団から


ITと畜産情報ネットワーク

情報システム推進室長 高橋 洋




はじめに

 IT(情報技術)革命の話題がホットになっています。米国では5年以内に過半
数の家庭が常時インターネットにより買物をし、9割の企業がインターネットで
の取引を行うと言われてます。

 日本においても、現在8割近くの企業にインターネットが普及しており、5年
後の利用人口が5千万人を超えるという予想もあります。また、農産物について、
電子上での生産者と卸・小売業者間の取引(BtoB)や生産者と消費者間の産地
直売の取引(BtoC)が具体的に実施されつつあり、その対象も広がりつつあり
ます。先のサミットでも「IT革命」が議題に取り上げられ、平成13年度の政府予
算の基本方針としてIT予算を盛り込むこととされています。ITは、今後の産業構
造を大きく変える要因の1つと言われています。

 畜産分野においても、生産から消費までの情報の収集・提供や電子商取引、家
畜のトレーサビリテイ(追跡可能性)等へのIT技術の具体的利用が緊急の課題の
1つとされています。

 当事業団は、国や関係畜産団体とともに結集し、ITの1つであるインターネット
を利用した畜産情報ネットワーク(Livestock-industry Information Network
:LIN)によって、畜産に関するさまざまな情報を提供しています。

 また、指定助成対象事業において各種情報提供関係の助成を行っているところ
です。

 以下、LINの現在の状況についてご紹介いたします。


LINの目的および経緯

 畜産を取り巻く情勢の変化に生産者や業界関係者が的確に対応していくために
は、迅速かつ的確な情報の入手が必須となっており、総合的な情報提供のための
体制を整備していくことが不可欠となってきています。このため、「畜産」をキ
ーワードとして窓口を一元化することにより総合的な情報を提供することとし、
平成8年4月から農林水産省畜産局、家畜改良センターおよび4団体(当事業団、
中央畜産会、家畜改良事業団、中央酪農会議)並びに県畜産会が参加し、窓口を
一元化した畜産情報ネットワーク(LIN)のホームページを開設しました。

 その後、多数の畜産中央団体が加わり、現在では、2行政機関、37団体、47都
道府県、総計86団体で構成する一大情報ネットワークを形成するに至りました。

 LINは、このように多数の畜産関係団体の参加を得たことにより、まだまだ不
十分な点が多々ありますが、主な畜産に関する情報は、このホームページを開け
ばおおむね把握できるようになってきています。


LINの構成と内容

 LINのホームページは、今年度から全面的に改定しました。従前は、各団体の
ホームページを開き、その中から情報を探さなければならないことが多かったの
ですが、現在のホームページは、利用者の利便性を考えたものとしましたので、
一度アクセスいただければお分かりと思います。

 具体的には、LINのホームページ(http://www.lin.gr.jp)を開いていただきます
と、図のとおり、トップページの「トピックス」で最近のトピックス、最新情報、
緊急情報を提供し、全体情報を「畜産関係者向け」「消費者向け」「都道府県情
報」「団体情報」「リンク集」の項目別に整理しています。

◇図1 畜産情報ネットワーク構成◇
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 まず、「畜産関係者向け」は、LIN参加の各団体が提供する情報のうち、畜産
関係者にとって特に有用な情報を項目別に整理し、閲覧できるようにしています。
例えば、「行政」の項では、畜産局の各課が提供する情報が閲覧できます。また
「市況・統計」の項では、当事業団や中央畜産会、家畜改良事業団等が提供する
畜産物需給統計、貿易統計、牛群検定成績の統計等が閲覧できます。

 次に、「消費者向け」は、消費者が畜産・畜産物について理解を得ていただけ
るような分かりやすい項目が選んであります。例えば、全国牛乳普及協会、中央
酪農会議や日本食肉消費総合センター等が提供する牛乳・乳製品、食肉について
の知識や料理の情報が得られます。

 また、「都道府県情報」は、各都道府県畜産会の協力により作成されている地
域ごとの畜産情報です。

 さらに、「団体情報」では、LIN参加の各団体が作成した情報をそのまま団体
別に閲覧できるようになっています。例えば、当事業団のホームページで「畜産
部門」をアクセスすると95年から直近までの「畜産の情報」、「海外駐在員情報」
等に掲載された記事や統計のほとんどが閲覧できるようになっています。

 「リンク集」は、主に海外の畜産関係機関、団体等へのリンク集であり、海外
が178カ所、国内47カ所とリンクしています。このリンク集からUSDA等海外の
政府機関やADC等の世界の主要な畜産関係機関に簡単にアクセスできます。

◇図2◇
LINのトップページ

畜産関係者向け
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消費者向け

都道府県情報
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団体情報

リンク集
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 また、「トピックス」コーナーでは、各団体が情報内容を更新したり新たに情
報を付加した場合、当該団体ホームページの「お知らせ」とリンクでき、このコ
ーナーから直ちに閲覧できるようになっています。

 例えば、最近では、このコーナーに口蹄疫情報が掲載されたことにより、毎日
ここに大量のアクセスがあったことは、記憶に新しいところです。

 このように、畜産に関することなら、LINにアクセスすることにより、たいて
いの情報が簡単に入手できるのではないでしょうか。これも畜産関係の団体が結
集しているからこそ可能なことと思います。

 

LINへのアクセス状況

 LINは、分散統合型の形態をとっているため、全体のアクセス数は、把握でき
ませんが、参加団体へのアクセス状況は、インターネットの普及に伴い、ますま
す増加しています。

 例えば、当事業団へのアクセス件数は、8年度が1日当たり平均100件程度であ
ったものが、11年度には900件程度と増加しています。印刷物での情報提供も、
それなりに価値のあるものですが、やはりインターネットの魅力は、情報量の多
さと物理的距離を超越した簡便さにあると思います。

 特に12年3月末に口蹄疫が宮崎で発生して以降、急激にアクセス数が増加しま
した。口蹄疫情報については、LINを通じて畜産局、中央畜産会、日本獣医師会、
全国家畜畜産物衛生指導協会等のホームページから毎日新しい情報が提供されま
した。

 この疾病の対応が一刻を争うものであることから、口蹄疫についての日々の情
報提供は、インターネットの特性を十二分に発揮されたものでなかったかと思い
ます。


LINの当面の課題

 LINについては、多数の畜産関係団体が結集したことにより、それぞれの畜産
関係団体が開設しているホームページヘのアクセスは、ほぼすべて可能となって
います。しかしながら、まだまだ不十分な点もあり、利用者の皆様のご意見を踏
まえながら、さらなる改善を図っていきたいと思っています。

 当面の改善すべき課題として、いくつか例示してみます。

 第1に、提供内容の充実です。

 LINの提供情報は、参加団体の提供情報の中から有用な情報を選択して提供し
ていますが、その基礎となる団体情報の充実度に差があり、団体個々の情報内容
を充実させていく必要があると思います。

 第2に、LINのトップページにおける検索機能の充実です。

 インターネットを使用する場合、まず検索専門のホームページであるYAHOO
やGOO等で調べたい項目を検索される方が多いと思いますが、これは非常に便
利です。

 LINについても、検索機能を一層充実させ、少なくともLIN全体の検索機能を持
つ必要があり、できるだけ早くその機能が効率的に可能となるよう検討している
ところです。

 第3は、利用者からの質問にいかに適切かつ迅速に対応するかというQ&Aの
体制整備です。

 Q&Aについては、LINのホームページを開設してから、さまざまな質問が畜
産関係者や畜産関係以外の消費者、学校関係者等多方面から寄せられています。
寄せられた質問に対してより適切に対応するには、単独の団体だけでは難しいこ
とも多々あります。利用者に対しては、たらい回しすることなく、関係団体が有
機的に連携し、窓口を一本化していく対応する体制を整備する必要があると思い
ます。

 第4に、電子図書館です。

 参加団体の刊行物や報告書等の紹介をすることが必要となっています。この場
合、その出版物名にとどまらず、その内容についても広く紹介することが求めら
れています。

 特に、印刷物での提供部数が不足しているものは、より必要性が高いと考えら
れます。


おわりに

 ITは日々進化し、その流れはドッグ・イヤーあるいはマウス・イヤーと言われ
るほど、著しいものがあります。ITの進展状況を常にフォローしつつ、LINがよ
り多くの利用者にとって役立つものとなるよう、これら新規開発された機能を
利用し、LINを充実させていく必要があります。

参考 LINに参加している中央団体(国を含む)
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