◎地域便り


良質乳の加工販売でフランチャイズ始動

企画情報部


 JR長崎線が佐世保線と分岐する肥前山口駅のホームから、屋上に地球儀のオブ
ジェを頂くブックストアが見える。その前庭にあるとんがり屋根の売店「COW 
BELL」にはいつも人だかりが絶えない。

 鹿島市に本拠を置く(有)和光牧場(代表取締役樋口和光氏(53))の直営販
売施設第1号店で、駅から近いこと、そして国道34号線沿いにあることから、ちょ
っとおやつをと立ち寄るには格好の場となっている。主力商品はソフトクリーム
とクレープ。特にクレープは「東京の名店にも負けない」と樋口さんが胸を張る
逸品で、その原料となるミルクは健康な乳牛から搾ったものだ。

 和光牧場は乳牛30頭、育成牛8頭、F1
40頭を飼養する乳肉複合経営で、牧場運営に当たるのは樋口さん夫妻のみである。
長女ちひろさん、次女歩さんを含む従業員、パート等6人が乳製品の加工、販売、
そして完熟たい肥「ドラゴン」の供給を担っている。

 黒毛和牛の繁殖経営から樋口さんが酪農への転換を思い立ったのは30歳の誕生
日であった。日本経済がオイルショックにほんろうされる中で子牛価格も暴落し
た。「エサ代にもならない1頭10万円」という価格水準に不安を感じたのが大き
な要因だった。その点、乳価は安定していたが、それもやがて生産過剰と価格低
落に陥る。そこで進出したのがアイスクリームで、当初こそ外部に製造委託をし
たが、現在は自前の工場「ミルク工房」での完全な社内生産を実現している。

 さて話は「COW BELL」に戻る。その製品の良さにファンは急増していったのだ
が、なかには「自分でも売ってみたい」と言い出す顧客も現れた。そうした要望
に応えた結果、店舗数は12にまで拡大した。

 今年7月からは新たにフランチャイズ制の「グラッシェ・ド・モー」を展開す
ることとなり、第1号は佐世保市内にオープンした。本部の和光牧場は原料を供
給するほか、経営に係る一切のノウハウを提供する。こうしたグループ店舗の経
営者の中には和光牧場出身者もいる。樋口さんに企業人として鍛えられた人材が
独立し、従業員から経営者を目指して巣立っていくのである。人材育成という面
から最も大きな期待を寄せられているのが長男靖晃さん。現在、北海道の酪農学
園大獣医学部で学んでおり、「予防医学的見地からの牛の健康管理体制を確立し
てもらいたい」と樋口さんは目を細める。
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【とんがり屋根の売店で
ソフトクリームをどうぞ。】

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