◎調査・報告


牛枝肉の格付状況について

社団法人 日本食肉格付協会  規格一課長 油上 晋




はじめに

 社団法人日本食肉格付協会は食肉の格付事業を実施している。この格付事業は、
当初、社団法人日本食肉協議会が昭和37年度に豚枝肉、38年度に牛枝肉の格付を
それぞれ始めたものを、52年2月に日本食肉格付協会が設立されると同時に、引
き継いで現在に至っている。

 格付頭数については、格付事業開始以来年々増加傾向にあったが、格付頭数は
全国のと畜頭数の影響を受けることから、と畜頭数が減少した場合は前年を下回
る年もある。12年度は全国のと畜頭数が前年より4.4%減少したこともあって、
牛枝肉格付頭数は前年度に比べ1.7%減の97万7,958.5頭であった。

 牛枝肉の格付場所数についても増加傾向にあったが、11年度はと畜場の閉鎖も
あって前年より3カ所減少したが、12年度は前年と同じ113カ所であった。

 なお、全国のと畜頭数に対する格付頭数の割合(格付率)については年々増加
しており、12年度における格付率は牛全体で76.8%となっている。さらに、これ
を品種別にみると、和牛去勢(94.8%)、乳用牛去勢(86.5%)、交雑種去勢
(85.5%)では高い割合となっている。


牛枝肉格付場所数および品種別格付頭数

 12年度における牛枝肉格付実施場所は113カ所であり、その内訳は中央市場10
カ所(格付頭数全体の34.1%)、指定市場19カ所(同16.4%)、食肉センター84
カ所(同49.5%)となっており、10カ所の中央市場で3分の1以上が格付されて
いることになり、これに指定市場を合わせた食肉市場全体で過半数が格付されて
いる。

 なお、これを品種別に見ると、和牛が牛全体の51.6%、乳用牛が27.6%、交雑
種が19.6%、外国種が1.2%となっている。また、中央市場では和牛が全体の3分
の2を占めており、食肉センターでは和牛は40%弱となっている。(表1)

表1 12年度市場、センター別・品種別格付頭数および割合



格付場所別牛枝肉格付頭数

 格付実施場所113カ所の牛枝肉格付頭数については、年間14万3,000頭以上の
場所から20頭に満たない場所まで大きな開きがあるが、頭数の多い事業所の上位
10カ所は次のとおりである。

@東京143,455頭(うち和牛108,670頭)A帯広47,852頭(5,025)B大阪46,75
1頭(22,443)C仙台32,106頭(23,571)D大宮29,429(17,243)E七城25,16
4頭(10,870)F群馬24,134頭(22,710)G横浜20,425頭(11,311)H岩手19,
795頭(9,046)I松原17,596頭(5,612)


牛枝肉格付結果

 最近4カ年の品種別の格付結果を表2に示した。

和牛めす

 格付頭数は増加傾向にあり、12年度は前年比100.8%(+1,851頭)、肉質等級
は減少傾向にあり、12年度の「4」以上の率は28.7%で前年より0.7ポイント減少

和牛去勢

 格付頭数は大きな変化はみられないが、12年度はやや減少し前年比99.1%
(▲2,641頭)、肉質等級は減少傾向にあり、12年度の「4」以上の率は41.6%
で前年より1.8ポイント減少

乳用牛めす

 格付頭数は減少傾向にあり、12年度は前年比91.7%(▲6,879頭)、肉質等級
は減少傾向にあり、12年度の「3」以上の率は2.2%で前年より1.2ポイント減少

乳用牛去勢

 格付頭数は減少傾向にあり、12年度は前年比86.3%(▲30,694.5頭)、肉質
等級は減少傾向にあり、12年度の「3」以上の率は15.6%で前年より2.5ポイン
ト減少

交雑種めす

 格付頭数は増加傾向にあり、12年度は前年比108.8%(+6,564頭)、肉質等
級は減少傾向にあったが、12年度の「3」以上の率は50.5%で前年より1.8ポイ
ント増加

交雑種去勢

 格付頭数は増加傾向にあり、12年度は前年比113.0%(+12,680.5頭)、肉質
等級は減少傾向にあったが、12年度の「3」以上の率は55.7%で前年より0.4ポイ
ント増加

外国種めす

 格付頭数は減少傾向にあり、12年度は前年比68.7%(▲486頭)、肉質等級は
増加傾向にあったが、12年度の「3」以上の率は9.8%で前年より2.4ポイント減
少

外国種去勢

 格付頭数は増減があるが、12年度は前年比133.3%(+2,752.5頭)、肉質等級
は増減があるが、12年度の「3」以上の率は28.3%で前年より11.7ポイント増加

表2 品種別格付結果
和牛めす


和牛去勢


乳用牛めす


乳用牛去勢


交雑種めす


交雑種去勢


外国種めす


外国種去勢



牛枝肉出荷県別調査結果

 (社)日本食肉格付協会では、8年度から黒毛和牛等肉質向上緊急対策事業を
実施している。

 本事業は、黒毛和牛等の肉質向上を図るため、牛枝肉情報と子牛情報を結び付
け、肥育、繁殖両サイドにそれぞれ必要な情報を提供することにより、経営改善、
肉用牛改良に資するための事業であり、農畜産業振興事業団の指定助成対象事業
として実施した。

 本事業に係る情報のうち個別情報については、当該関係者のみに提供すること
となるが、これを出荷県別に分析・加工した枝肉格付情報については、一般情報
として公表しているところである。

 以下、黒毛和種、乳用牛、交雑種それぞれの去勢について、12年度の概要を説
明する。

 なお、以下の数値は、本事業に係るパソコン等の機器が設置されている場所で
入力されたものであり、格付総頭数とは一致していない。

黒毛和種(表3)

1 格付頭数

 出荷県別の格付頭数について、最も多い県は鹿児島県で32,636頭(全体の13.3
%)であり、以下、宮崎20,097頭(8.2%)、栃木15,617頭(6.3%)、群馬15,
186頭(6.2%)、宮城14,759頭(6.0%)、佐賀12,715頭(5.2%)、茨城10,63
8頭(4.3%)の順で、この7県が1万頭以上となっている。
 なお、出荷県の区分は、肉牛の出荷者が所在する県として整理した。(以下同
じ)

2 肉質等級

 2,500頭以上の県について、「4」等級以上の率の最も高い県は佐賀県で65.1
%であり、以下、岐阜59.3%、宮城、鹿児島57.2%、山形56.9%、岩手51.6%、
宮崎51.3%の順で、この7県が50%以上となっている。

3 胸最長筋面積

 2,500頭以上の県について、胸最長筋面積の最も大きい県は宮崎県で54.4゙で
あり、以下、山形53.3゙、秋田53.1゙、宮城、岐阜52.6゙、佐賀52.4゙、長野52
.3゙、島根、長崎52.2゙の順で、この9県が52゙以上となっている。

4 BMS

 2,500頭以上の県について、BMSbフ最も高い県は宮城、山形の両県で6.0であ
り、以下、佐賀5.9、岐阜5.7、岩手5.6、鹿児島5.3、青森、秋田、福島、長野、
島根5.2の順で、この11県が5.2以上となっている。

表3 黒毛和種去勢の出荷県別調査結果(平成12年4月〜平成13年3月)

調査頭数2,500頭以上の項目ごとの上位10県



乳用牛(表4)

1 格付頭数

 出荷県別の格付頭数について、最も多い道県は北海道で27,235.5頭(全体の1
9.6%)であり、以下、栃木11,098頭(8.0%)、熊本9,401頭(6.8%)、青森8,
170頭(5.9%)、岩手7,573頭(5.5%)、鹿児島7,052頭(5.1%)、群馬6,67
1頭(4.8%)の順で、この7県が6,000頭以上となっている。

2 肉質等級

 2,500頭以上の県について、「3」等級以上の率の最も高い県は鳥取県で40.0
%であり、以下、長崎33.0%、宮崎30.2%、青森26.0%、鹿児島25.4%、千葉
25.1%の順で、この6県が25%以上となっている。

3 胸最長筋面積

 2,500頭以上の県について、胸最長筋面積の最も大きい県は愛知県で44.2゙で
あり、以下、青森43.2゙、北海道42.0゙、岩手41.6゙、徳島41.2゙、千葉41.0
゙の順で、この6県が41゙以上となっている。

4 BMS

 2,500頭以上の県について、BMSbフ最も高い県は千葉、鳥取の両県で2.6で
あり、以下、愛知、宮崎2.5、青森、徳島、福岡、長崎、鹿児島2.4の順で、この
9県が2.4以上となっている。

表4 乳用牛去勢の出荷県別調査結果(平成12年4月〜平成13年3月)

調査頭数2,500頭以上の項目ごとの上位10県


交雑種(表5)

1 格付頭数

 出荷県別の格付頭数について、最も多い道県は熊本で12,582頭(全体の12.7%)
であり、以下、愛知6,758頭(6.8%)、鹿児島6,180頭(6.2%)、岩手6,130頭
(6.2%)、北海道5,922頭(6.0%)、宮崎5,022頭(5.1%)、福岡4,999頭(5.
0%)、大阪4,788頭(4.8%)の順で、この8県が4,000頭以上となっている。

2 肉質等級

 1,500頭以上の県について、「3」等級以上の率の最も高い県は佐賀県で69.1
%であり、以下、徳島67.0%、熊本60.9%、鹿児島、長崎59.6%、宮城59.5%、
福岡、長野59.2%の順で、この8県が59%以上となっている。

3 胸最長筋面積

 1,500頭以上の県について、胸最長筋面積の最も大きい道県は徳島県で49.4゙
であり、以下、大阪49.3゙、岩手49.1゙、愛知、香川48.6゙、北海道、栃木、
静岡48.5゙の順で、この8県が48.5゙以上となっている。

4 BMS

 1,500頭以上の県について、BMSbフ最も高い県は、宮城、佐賀の両県で3.8で
あり、以下、茨城、栃木3.7、岩手、静岡3.6、長野、愛知3.5の順で、この8県
が3.5以上となっている。

表5 交雑種去勢の出荷県別調査結果(平成12年4月〜平成13年3月)

調査頭数1,500頭以上の項目ごとの上位10県



おわりに

 日本食肉格付協会では、「牛枝肉格付情報」として、出荷県別の格付頭数およ
び平均価格、枝肉重量帯別頭数、脂肪交雑基準別頭数等をCDおよび冊子(冊子
は年次および年度のみ)により月別、四半期別、年別に公表を行っているが、こ
れには数に限りがあることから、黒毛和種、乳用牛、交雑種各去勢牛について、
主要な調査項目を取りまとめた「格付等級別・歩留肉質測定項目別集計表」を日
本食肉格付協会のホームページに掲載しているので参考にしていただきたい。

[http://group.lin.go.jp/kakuduke/]

用 語 解 説

○中央市場:卸売市場法の規定により開設されている仙台、大宮、東京、横浜、
      名古屋、京都、大阪、神戸、広島、及び福岡の10食肉中央卸売市場
      である。
○指定市場:卸売市場法の規定により開設されている地方卸売市場のうち「畜産
      物の価格安定等に関する法律」に基づき指定されている市場で、茨
      城、宇都宮、群馬、川口、山梨、浜松、岐阜、愛知、東三河、四日
      市、松原、羽曳野、姫路、加古川、西宮、岡山、坂出、愛媛、佐世
      保及び熊本の20市場である。
○食肉センター:産地における食肉処理の推進による食肉流通の合理化を図る目
      的で全国に設置された食肉処理施設
○和  牛:わが国在来の牛を基に、明治、大正、昭和初年にかけて外国の肉専
      用種を交配し、その後、閉鎖的な選抜と固定によって造成した牛で、
      黒毛和種、褐毛和種等をいう。
○乳用牛 :乳利用の目的で飼育されている牛であり、わが国ではホルスタイン
      種が主体であるが、これら乳用種についても肉資源利用のため肥育
      が行われている。
○交雑種 :乳用牛および肉専用種の資源の有効利用と増産のために、主として
      乳用雌牛に和牛雄を交配して生産された牛をいう。
○外国種 :和牛、乳用牛、交雑種以外の牛で、ヘレフォード、アンガス種等を
      いう。
○歩留等級:日本食肉格付協会の牛枝肉取引規格に定めているもので、牛枝肉の
      第6〜第7肋骨間の切開面における胸最長筋面積、ばらの厚さ、皮
      下脂肪の厚さ、枝肉半丸重量を測定し、歩留基準値の算式によって
      数値を求め、その数値によってA、B、Cの3等級に判定される。
○肉質等級:牛枝肉取引規格に定める肉質項目の脂肪交雑、肉の色沢、肉の締ま
      りおよびきめ、脂肪の色沢と質の4項目について、それぞれの等級
      要件によって判定され、4項目のうち最も低い等級をもって肉質等
      級を決定することとしており、「5」〜「1」の5等級に判定される。
○胸最長筋面積:第6〜第7肋骨間切開面における胸最長筋筋膜線上を周囲とす
      る面積で、ロース芯面積ともいう。
○ばら厚 :ばらの厚さのことで、第6〜第7肋骨間切開面における肋骨全長の
      ほぼ中央部において、胸腔の胸膜内面から広背筋外側までの長さ
○皮下厚 :皮下脂肪の厚さのことで、第6〜第7肋骨間切開面において、腸肋
      筋側端から枝肉表面に直角に上げた線上で、広背筋外側から枝肉表
      面までの長さ
○BMSa@:牛脂肪交雑基準のことで、1から12までの基準があり、8以上が
      脂肪交雑等級5となる。以下、bノよって等級区分が定められている。
○BCSa@:牛肉色基準のことで、1〜7までの基準があり、bノよって等級区
      分が定められている。
○締まりきめ:肉の締まりおよびきめのことで、それぞれ等級区分が定められて
      いる。
○BFSa@:牛脂肪色基準のことで、1〜7までの基準があり、bノよって等級
      区分が定められている。


お詫びと訂正


 本誌7月号掲載の調査・報告「畜産物消費の習慣形成と学校給食」の本文記事
・25頁に一部文章がつながらない部分がありましたことをお詫びして下記の通り
訂正いたします。

 学校給食事業の効果を検討する前に、畜産物消費の習慣形成がどのような状況
にあるのかを確認しておこう。

 表1は、1979-99年の総務庁「家計調査年報」を用いて世帯主年齢階層別に、
畜産物消費の習慣形成効果を整理したものである。理想的には世帯主の年齢階層
による区分ではなく世帯員個々の年齢階層別習慣形成効果を析出できればよいの
であるが、現在それに適合するデータは整備されていない。このため表1は、習
慣形成効果のラフなスケッチであることをあらかじめお断りしておきたい。

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