◎地域便り


「福島県酪農・肉用牛生産近代化計画」について

福島県/農林水産部畜産課


● はじめに

 平成11年7月の「食料・農業・農村基本法」の成立に伴い、国においては、畜
産を含めた農政全般において、社会情勢の変化や国際化の進展に対応した改革が
進められることとなった。

 また、農林水産省では「食料・農業・農村基本法」に基づき「食料・農業・農
村基本計画」を策定し、21世紀に向けたわが国の農業・農村のあるべき姿、また
食料の自給率目標などを示すとともに、12年4月には、これからの酪農と肉用牛
生産の振興のマスタープランとして、新たな「酪農及び肉用牛生産の近代化を図
るための基本方針」を公表し、資源循環型の大家畜生産の実現に向け、酪農と肉
用牛生産の一層の振興を図るための指針が明らかにされた。

 これを受け、福島県では13年3月に「酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律
(昭和29年法律第128号)」に基づき、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るた
めの基本方針」に即して、地域の諸条件を考慮した「福島県酪農・肉用牛生産近
代化計画」を策定した。

 今回の計画では、大家畜経営において新たな生産・流通システムの構築が求め
られている中で、21世紀初頭における社会情勢の変化に対応した長期的・総合的
施策の展開を図るため、本県畜産の持てる力を最大限に発揮し、向かうべき方向
を意欲的に示す基本的方向を定めた。

 さらに、策定に当たっては、計画の一貫性および総合性を持たせるため、農林
水産省の飼料増産計画と連携した「福島県飼料増産推進計画」や21世紀初頭にお
ける県政運営の基本指針である「福島県長期総合計画うつくしま21」の農業・農
村分野の計画である福島県第4次農業基本計画「うつくしま農業・農村振興プラ
ン21」など、本県の他計画との整合性に十分配慮して策定した。

表1 「福島県酪農・肉用牛生産近代化計画」の位置付け


● 計画の基本方針

 基本方針として、「県民への安全で良質な動物性たんぱく質の安定的供給」を
目指すこととしており、消費者ニーズに即した高品質かつ安全な畜産物を適正な
価格で安定的に供給できるよう、生産から流通・販売に至る総合的な施策により、
流通コストを低減することとしている。

 さらに、「土地利用型農業の基軸として『土・草・牛』という資源循環型経営
の実現」を目指すこととし、今後とも福島県における豊かな緑資源および遊休農
地の有効利用や中山間地域等の条件不利地域を含めた農山村地域の活性化、耕地
へのたい肥等の供給による地力の維持・増進を図ることとしている。

 また、「経営感覚に優れたゆとりある生産性の高い経営体の育成」を目指し、
自給飼料の活用、家畜排せつ物の適切な処理と利用のために必要な飼料基盤の確
保等による低コスト生産を推進し、経営体質の強化を図ることとしている。

● 具体的な展開方向

1酪農

 飼養頭数の目標(22年度)は現状とほぼ同様の2万6,000頭に対して、生乳生
産量の目標は現状の約1.2倍の167万トンとしており、経産牛1頭当たり乳量の
飛躍的な向上を目指す計画となっている。

 福島県の酪農経営については、経営規模が都府県平均と比べ小さいことから、
地域の実情に即した経営規模の拡大を推進するため、経営における課題を明確に
し、地域条件や経営実態に応じた多様な経営の展開を推進していくことが重要で
ある。

 このため、自給飼料基盤の確保および家畜排せつ物の適切な管理と利用の促進
を図りつつ、計画生産等の需給計画に対応した生乳生産を基本に、牛群改良等に
より経産牛1頭当たりの泌乳能力を最大限に発揮させるとともに、生産規模の拡
大により意欲ある経営体の育成とその経営安定を目指すこととしている。

 また、各生産者団体が実施する技術指導、乳牛販売市場、生乳集送乳等の業務
の統合化により生産コストの低減を図ることとし、乳業工場においては、再編整
備等による処理・加工・流通部門の合理化を推進し、流通コストの低減を図ると
ともに、生産から流通段階まで一貫した衛生対策を推進し、牛乳・乳製品の安全
性確保を図ることとしている。

 さらに、消費者に対して畜産物に関する情報を提供しながら、県産の牛乳・乳
製品の消費拡大を図ることとしています。

2肉用牛

 総飼養頭数の目標は現状の約1.1倍の9万5,000頭としているが、中でも特に肥
育牛の飼養頭数の目標は現状の約1.7倍の3万4,000頭としており、規模拡大によ
る生産基盤の強化を目指す計画となっている。

 福島県の肉用牛生産については、消費者ニーズに即した高品質かつ安全な畜産
物を適正な価格で安定的に供給するとともに、生産・流通コストを低減させるこ
とが重要となっている。

 このため、自給飼料基盤の確保および家畜排せつ物の適切な管理と利用の促進
を図りつつ、肉質・肉量ともに優れた種雄牛の造成、特色ある肉用牛生産の推進
のため、生産技術の向上に伴う生産物の高品質化とコストの低減による生産性向
上、規模拡大による生産基盤の強化に努めるとともに、繁殖肥育一貫経営もしく
は地域内一貫生産体制の推進により「福島牛」を中心とした生産振興を図ること
としている。

 また、食肉処理加工施設においては、再編整備等による処理・加工・流通部門
の合理化を、家畜市場においては、再編整備と機能高度化等による肉用牛取引頭
数の拡大等をそれぞれ推進し、流通コストの低減を図るとともに、生産から流通
段階まで一貫した衛生対策を推進し、畜産物の安全性確保を図ることとしている。

 さらに、消費者に対して畜産物に関する情報を提供しながら、県産の牛肉
(「福島牛」)などの消費拡大を図ることとしている。

表2 生乳の生産数量及び乳牛の飼養頭数の目標


3飼料作物

 作付面積の目標は現状の約1.2倍の2万ヘクタールとし、自給飼料生産基盤の
確保および家畜排せつ物の適切な管理と利用の促進を図り、土地利用型農業の基
軸として、「土・草・牛」という資源循環型経営の実現を目指す計画となってい
る。

 飼料作物については、ゆとりある生産性の高い経営体を育成・確保するため、
自給飼料の活用、家畜排せつ物の適切な処理と利用のために必要な飼料基盤の確
保等による低コスト生産を推進し経営体質を強化していく上で、その役割は一層
重要となっている。

 このため、自給飼料生産のメリットを生かした低コスト、省力生産を実現する
ための自給飼料基盤の確保、自給飼料の生産性および品質の向上を図るとともに、
飼料生産受託組織(コントラクター)の育成などによる飼料生産の組織化・外部
化を推進することとしている。

 さらに、中山間地域における遊休農地を活用した省力的な日本型放牧の推進、
公共牧場の飼料基盤としての効率的活用を図ることとしている。

 また、家畜排せつ物はたい肥化等による耕地への適切な還元を基本として、有
機質資源としての活用を図るとともに、耕種農家との連携によるたい肥流通シス
テムの構築を推進することとしている。

表3 肉用牛の飼養頭数の目標


表4 飼料作物供給計画


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