京都府/岡本 清嗣
京都府碇高原総合牧場では、「水田での繁殖和牛放牧」の現地実証試験に3カ 年計画で取り組んでいる。 5筆の水田70アールに2〜3頭放牧を行い、転作田の有効利用と繁殖経営の省 力・低コスト化を目指している。 現地は牛舎から500メートルほど下がった谷間の最上流部で、周辺に民家はな く、また、道路から見下ろせる放牧に適した場所にある。 当初、2集落の農地利用状況を調査したところ、平均農地面積は57アールで不 耕作地が12%であったが、放牧に貸してもよいという農家は1戸のみであり、放 牧に対する不安があることを示している。そこで、農家説明会を開催し、転作水 田等の放牧利用により、農地の荒廃防止に役立つことや放牧の具体的方法の説明 を行った。 農家の心配や不安は、牛ふんやその成分の流出による水稲の生育異常、牛によ る畦畔の崩壊や脱柵による食害などであった。放牧地でのふん尿排せつ量は2ト ン/10アール程度であり、畦畔の崩壊のおそれがある時は牧柵で囲うなどの対策 を行うことで理解を得た。 1年目の昨年は6月下旬から草の無くなった9月下旬まで放牧し、8月下旬か らは1日1回補足飼料を給与した。転牧が遅れ草量が少なくなったり、人に驚き 脱柵したこともあったが、周辺への被害、畦畔の崩壊や水質の汚濁等も見られな かった。 今年は、水田に適する草種を選定するため、リードカナリーグラス、トールフ ェスク、ペレニアルライグラスを昨年4月に播種し、牧養力等を検討している。 来年は、一部を水田に戻し水稲を栽培し、放牧と水稲の輪換利用技術を実証す る予定である。
【水田での繁殖和牛放牧の様子】 |