◎地域便り


企業的畜産経営の確立のために
―栃木県酪農肉用牛生産近代化計画―  

栃木県/矢野 雅之


 栃木県では、酪農および肉用牛の計画的かつ総合的な振興を図るため、その基
本指針となる「酪農肉用牛生産近代化計画」を平成12年度に策定した。この計画
は、国の「基本方針」(酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針)を
踏まえ、本県の畜産の健全な発展のために策定し、今回(13年3月)が4回目と
なる。 

 今回の計画策定に当たっては、「食料・農業・農村基本法」(11年7月)や
「食料・農業・農村基本計画」(12年3月)の制定、また環境、輸入穀物飼料へ
の依存過多など畜産農家を取り巻く環境が大きく変化している情勢を踏まえ、ま
た本県の総合計画である「とちぎ21世紀プラン」(13年度〜17年度)やその農業
部門計画である「首都圏農業推進計画21」との整合を図り、基本コンセプトを
「土地基盤に立脚した酪農・肉用牛の経営安定と効率的な生産振興」とし、22年
度を目標年次とした具体的な振興目標を設定している。以下その内容をご紹介す
る。

T 酪農および肉用牛生産の近代化に関する方針

 本県の持つ恵まれた生産条件を最大限に生かし、環境との調和を図りながら、
国際化にも対応できる生産性の高い、さらに消費者ニーズにも対応した安全で高
品質な畜産物を効率的かつ安定的に生産するための大家畜畜産経営を目指すこと
とし、次の事項を基本として振興を図ることとした。

1 ゆとりある生産性の高い経営体の育成・確保

 ゆとりある生産性の高い経営の実現を目指して、酪農は、生産・経営管理技術
の改善・高度化、高能力牛の整備による牛群の改良、効率的な生産、乳量・乳質
の向上等を、肉用牛は、計画的かつ安定的な規模拡大、粗飼料生産・利用の向上、
生産・経営管理技術の改善等を図る。また、家畜排せつ物の適切な処理・利用と
併せ、飼料自給率の向上等による土地基盤に立脚した経営体の育成を図ることと
した。

2 環境問題への適切な対応

 環境保全に配慮した畜産経営の確立を図るため、家畜排せつ物の適切な管理、
たい肥化などによる農地・草地等への還元を基本とした有効利用を図ることとし
た。


U 生乳の生産数量の目標並びに乳牛および肉用牛の飼養頭数の目標

 乳牛については、現在とほぼ同じ頭数とするものの個体能力の向上により、生
乳生産量は約15%の増加を目指すこととした。肉用牛については、輸入牛肉に対
抗し得る肉専用種を中心とした肥育生産へ移行を図り、約7%の頭数増を図るこ
ととした。詳細は表1・2のとおりである。


V 近代的な酪農経営方式および肉用牛経営方式の指標

 今回の計画でも、個々の畜産農家が地域の実情やそれぞれの経営類型・飼養規
模、技術水準に応じて将来の計画が立てられるよう、表3に示したような複数の
経営展開を想定した経営方式の指標を作成した。


W 飼料の自給率向上に関する事項

 飼料作付面積を13,503ヘクタールから16,000ヘクタール(18.7%増)、飼料
作物生産量を654,838トンから880,000トン(34.4%増)に増加し、飼料の自給
率の向上を目指すこととした。

 今後とも、家畜改良の推進や、新技術等の開発・普及、経営・技術指導の向上、
畜産経営支援組織の育成、家畜衛生対策の推進等のため、必要な支援策を講じ効
率的で安定的な酪農・肉用牛の生産振興を推進することとしているので、関係者
のご理解とご協力をお願いする。

表1 生乳の生産数量および乳牛の飼養頭数の目標


表2 肉用牛飼養頭数の目標


表3 近代的な酪農経営方式および肉用牛経営方式の指標
【前提条件】年間農業所得:1,000万円以上
      年間労働時間(主たる従事者):2,000時間以内

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