◎地域便り


安全で自然なオリジナルブランド
「山地酪農牛乳」を提供して

岩手県/斎藤 清美


 平成13年10月25日に開催された、いわて農林水産業振興大会において、田野
畑村の山地酪農研究会が「いきいき中山間賞」を受賞した。この賞は、地域集団
やグループが主体的に実践しているいきいきとした活動を顕彰することにより、
さらなる発展を期待するとともに、他地域へこの成果の波及を図ろうとするもの
である。

 田野畑村にある山地酪農研究会は、昭和49年に、熊谷隆幸氏が村内6名の酪農
家と1名の非農家とともに立ち上げ、学習会、普及活動、村内外の酪農家との交
流活動、採草や除角等の共同作業、ほ場研さん会等を積極的に行ってきた。56年
には研究活動のための「山地酪農振興基金」を創設したが、高度経済成長期の効
率的酪農が推奨されたこの時期に、乳量、乳成分共に低いシバ草地放牧酪農経営
は極めて不利な条件下にあった。そのため活動も停滞気味であったが、研究会の
例会と共同作業は一貫して継続してきた。

 そうした中、平成8年に、安全で自然な牛乳を求める消費者との出会いをきっ
かけに、田野畑村産業開発公社の牛乳プラント委託製造による「山地酪農牛乳」
が誕生した。研究会では飼養条件に厳しい基準(搾乳時の補助飼料はふすま・ビ
ートパルプのみ使用。放牧地には農薬はもちろん化学肥料も使用せず。放牧頭数
は成牛換算で1ヘクタール当たり2頭以内。)を定め、品質管理を徹底するとと
もに、会員自ら消費者や商店に配達を始めた。また、月一回の情報誌「まき」の
発行や、生産地での交流会を開催するなど、情報発信を重視した展開を図り消費
者との信頼のきずなを深めて行った。

 10年には、盛岡市の消費者有志による「山地酪農友の会」が設立され、研究会
に対する支援、関心が高まるとともに販売網も広まり、11年度には牛乳販売事業
も黒字(単年度)に転じた。新規就農希望者や牧場体験希望学生などの受入数も
多くなり、11年10月には「地域づくり団体全国研修交流会」を当研究会が主宰す
るなど、中山間地域活性化の基幹となる集団として高い評価を得ている。

 乳牛の能力、自然の植生を最大限に活用し、地形、土壌、気象、社会経済条件
に必ずしも恵まれていない地域において、国土保全や環境保全型持続的生産シス
テムを確立し、今後とも消費者に「安全で自然な牛乳」を提供して行くことであ
ろう。また、消費者からの理解と信頼を得るために、現在も実施しているグリー
ン・ツーリズム的消費者交流会活動の一層の推進を図っていくこととしている。
【シバを主体とした
「くがねの牧」の放牧風景】

    
【本当の贅沢を澄み切った山の空気と
自然そのままの緑の大地から
いただきました。】

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