トピックス

牛肉卸売価格の推移

 BSEの発生後の動向について、牛枝肉の卸売価格を見ると、省令価格(東京・大
阪、去勢牛B-2・B-3、平均)は一時安定基準価格の780円を下回り、東京市場では
10月11日に544円/kg、大阪市場では12日に506円/kgと底を打った。10月12日に
は、東京市場のBSE検査研修用サンプルから疑陽性が示されたため、一時と畜が
中止された。その後10月18日からはBSEの全頭検査が開始され、11月中旬までに
は、全国の1日当たりと畜頭数も前年の6〜7割までに回復してきている。このよ
うな状況の中で、東京市場では11月8日以降、搬入ものの取引が増え、それに伴
って省令規格の取引頭数も増加し、価格の低下により一時的に大阪市場とのかい
離が大きくなりつつある(図1、2、3)。

 品種・規格別卸売価格では、全種類で価格を下げ、特に乳牛の低位等級に最も
大きな影響がでている(図4)。

 昭和50年度に牛肉が指定食肉となって以来、初の指定助成対象事業による調整
保管事業を実施し、卸売価格の回復に努めているとともに、10月17日以前にと畜
解体された牛肉を市場から隔離することにより、国民の不安を念には念を入れて
払拭し、市場における牛肉の滞留を解消するため、牛肉在庫緊急保管対策事業を
実施している。

◇図1:牛肉の卸売価格(東京、大阪、省令)◇

◇図2:牛のと畜頭数(全国成牛、乳牛、和牛と畜頭数)◇

◇図3:せり上場頭数(生体・搬入頭数、東京市場)◇

◇図4:牛肉の卸売価格(東京、和牛去勢、乳牛去勢、前年比)◇

豚肉卸売価格、BSEの影響で高値相場続く

 例年ならば豚肉の卸売価格は、10月から12月にかけてと畜頭数の増加から低下
する傾向がある。しかし、最近の卸売価格は例年に見ない動きを示している。

 東京食肉市場の省令価格を見ると、10月上旬に急騰した後、いったんそれ以前
の価格水準までもどったものの、BSE発生による牛肉の消費不振からの代替需要
により10月18日の396円/kgを底に再び値を上げ始めた。前年の10月平均は384
円/kgであったのに対し、今年の10月平均は469円/kg(前年同月22.1%)と大
幅な高値相場となった。この相場が生産者の出荷意欲をかき立て、10月の全国と
畜頭数は、1,599,800頭(前年同月9.0%、速報値)とかなり増加している。

 10月24日から月末にかけては、前年同時期に比べ3割程度高い相場で推移して
おり、11月に入ってもその勢いは衰えていない。

◇図5:豚肉の卸売価格(東京、省令)◇

国産鶏肉相場が急騰

 BSEによる牛肉からの代替需要の高まりから国産もも肉に不足感が強まってい
る。10月平均のもも肉(東京)の卸売価格は1キログラム当たり666円と前年同
月比で3.1%の上昇となった。過去10年間の10月の相場としては最も高かった平
成10年の相場(東京、1キログラム当たり670円)に近づいたこととなる。11月
に入っても上昇傾向は続いており、11月12日は728円となっている。

 一方、むね肉についても中国からの冷凍品輸入が回復していないこともあり、
10月平均1キログラム当たり287円(東京)と前年同月を39.3%と大幅に上回っ
た。在庫量も大幅に減少し、需給は締まっている。過去10年間の10月の価格で見
ると、むね肉は一貫して低下してきたが、一転して上昇した。年末にかけての出
荷羽数はほぼ前年並みか若干の上向きとされている(農林水産省ひな出荷見通し)
が、牛肉からの代替需要の高まりと輸入量の減少から当分の間、国産鶏肉のひっ
迫感は続くと予想されている(図6、7)。

◇図6:国産鶏肉卸売価格(東京、中値)◇

◇図7:10月の国産鶏肉卸売価格(東京)(10年間)◇

飲用牛乳等向け処理量が減少に転ずる

 牛乳乳製品統計(農林水産省)によると、生乳生産量は13年度累計(4〜9月)
で前年同期を2.2%下回る中、「飲用牛乳等向け処理量」については12年6月末
に発生した加工乳等による食中毒事故以降、生乳のみを使用した牛乳に需要がシ
フトしたこと等から、7月以降13年7月まで、12カ月連続で前年同月を上回り、
13年度累計(4〜9月)では0.4%上回った。しかしながら、13年8月3.8%減、
9月6.3%減と減少に転じ、「乳製品向け処理量」が13年8月4.0%増、9月12.1%
増と増加に転じた(図8)。

 同様に「飲用牛乳等生産量」のうち、生乳100%を原料とする「牛乳」の生産
量は、12年7月以降12カ月連続で前年同月を上回って推移したが、13年8月に
14カ月ぶりに下回った。

 「乳飲料」については前年同月を上回り、13年8〜9月には2ケタ台の伸びと
なり、また「加工乳」についても13年8〜9月には前年同月を下回ったものの減
少幅が小さくなっている(図9)。

 POSデータで消費動向を見ると、調査対象が723店舗(13年9月現在)で販売さ
れる1リットル紙容器入りに限定されるが、対前年同月比は、「牛乳」、「部分
脱脂乳」等でプラスからマイナスに転じ、「低脂肪加工乳」で減少幅が小さくな
っている。

 総じて、食中毒事故の影響から脱する過程にあるといえよう。

◇図8:生乳生産量と用途別処理量(対前年同月増減率、%)◇

◇図9:飲用牛乳等生産量(対前年同月増減率、%)◇

◇図10:牛乳等の消費動向(POS)(対前年同月増減率、%)◇

牛肉の家計消費量は減少

 総務省統計局が公表した家計調査報告(全国1人当たりの購入数量)を見ると、
9月はBSEの影響による牛肉消費の落ち込みが顕著に現れている。前月と比べて
24.4%減少し195g(前年同月▲21.0%)となった。これに対し牛肉の代替需要
等から、豚肉が前月に比べ7.1%増加し423g(前年同月5.1%)、鶏肉は20.7%
増加し303g(前年同月1.5%)と牛肉の減少分を補い、牛肉・豚肉・鶏肉を合わ
せた数量では前月に比べ1.9%増加し921g/人(前年同月▲2.8%)となった。

 また、生鮮魚介類は前月に比べ15.6%増加し1,185g(前年同月3.2%)と増加
している。

◇図11:全国1人当たりの家計消費量の推移◇


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