◎今月の話題


肉骨粉とレンダリング産業の現状

日本大学生物資源科学部  助教授 早川 治




 




消費者の不安

 不幸にしてわが国でBSEが発見されてから早くも2カ月が過ぎた。この間、畜
産の発展に捧げられた多大な努力が大きく損失したことに改めて驚愕の思いを強
くした。政府による牛肉の安全宣言が出された以降も依然として消費者の牛肉離
れに歯止めがかからず、今なお消費の低迷が続いている。BSE発生からの政府の
取り組みは、一部批判もあろうが総じて素早い対応であったと思う。

 しかし、あえて指摘するならば、残念ながらそこには消費者の不安を解消させ
るには十分なものではなかったと言えよう。消費者が抱いている不安への本質を
見極めたものであったか疑念が残る。政府は、10月24日に「牛海綿脳症(BSE)
関連対策」の概要を発表し、総額1,554億円の対策費を公表した。

 その中で、消費者に対するBSEに関する知識の普及、安全性のPRとしては、11
億円が予算計上されたにすぎない。BSE発生に伴う損失は、広範にわたり甚大な
被害を受けている。こうした業界全般の経営回復はひとえに消費の回復にあるの
であって、そのためにも消費者に対する信頼回復の全般の対策が急務である。

 特に、BSEのメカニズム、食肉の安全性の科学的な説明、検査制度の効果、牛
肉流通段階での安全性保証、流通在庫食肉への対応、食肉加工品の安全性保証の
あり方、飼料の安全性開示の方法等々、食肉生産から流通・販売までの安全確保
の仕組みを体系的に、科学的に解説することが必要である。これまで、マスコミ
等の情報によって部分的な流通段階における問題点だけがクローズアップされた
ことによって、消費者の不安は際限なく広がってしまっているとも言える。


肉骨粉の製造

 BSE問題は、流通段階とりわけ牛由来の生産資材を製造する業界において事態
は深刻である。畜産業等から発生する骨、皮、内臓等の畜産副産物を原料とした
動物性油脂および動物性たんぱく質(肉骨粉を含む。)を製造している産業をレ
ンダリング産業と呼んでいる。BSE騒動で一躍話題になったのが「肉骨粉」であ
るが、そもそも肉骨粉は牛・豚・鶏などの家畜から食肉部分を取り除いて発生し
た残さ(骨、脂肪、内臓など)を加熱処理して油脂を除き、乾燥させて細かく砕
いたもので、飼・肥料用の原料とするものである。また、加熱処理後抽出した油
分は、精製したのち、食用牛脂・ラードとして食品メーカーへ、また一部は飼料
用油脂として飼料メーカーへ出荷される(図参照)。こうした畜産残さは有効資
源として多面的に活用され、産業リサイクルの模範ともいえるほど全量活用され
ていたが、今回の肉骨粉の利用禁止処置によってリサイクルされずに製造業者の
手元に大量な在庫が発生することになった。現在、わが国では、家畜のくず肉や
骨類などの副産物原料は年間160万トン(牛19%、豚37%、鶏44%)が排出され
ており、これを全国に95社、141工場あるとされる製造業者によって40万トンの
肉骨粉に製品化されている。このうち、30万トンが家畜飼料、10万トンが肥料用
に仕向けられていた。

◇図1:レンダリング製品の流通◇


畜産リサイクルのカギは肉骨粉対策

 政府は、11月1日からは豚および馬に由来する血粉、血しょうたんぱくならび
に家きんに由来するチキンミール等の供給を、豚・鶏・肥料・ペットフード向け
に限って解禁した。もちろん、牛由来によって製造された肉骨粉は焼却処分が義
務付けられている。政府は、一般事業所ごみとして各自治体の焼却場で処分する
方針を打ち出したものの、処理の引き受け手が不足したままの状態が今でも続い
ている。肉骨粉が粉状のために焼却場の施設構造に合致しない、作業中の粉じん
対策ができないなど、肉骨粉の焼却処分方法はいくつかの課題を残している。

 流通過程に滞留している肉骨粉や特定危険部位の処分については、今以上に責
任体制を明確にしなければならない。昨年、食品リサイクル法(食品循環資源の
再生利用等の促進に関する法律)が制定され、今後のわが国の食品資源のあり方
が注目されている。畜産残さのリサイクルが適切に循環することによって畜産業
が成り立つことを認識しなければならない。

 これまで家畜はすべての部分が有効に活用されおり、捨てるものがないといわ
れるほどである。しかし、「食物連鎖」に組み込まれる場合にはその安全性が確
実なものでなければならないことを今回のBSE発生では改めて証明した。

はやかわ おさむ

昭和49年日本大学大学院 修士課程修了。昭和50年日本大学農獣医学部助手、平
成4年から現職。

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